雨の日の出会い

〜第3話〜

 前の人類が彼らを使い、お互いに戦いあっていた。
 結果、その人類は滅んだらしい。
 そして残ったのは、単なる道具でしかなかった彼ら『鎧』だった。
 長い間地中に埋もれる間に、新たな人類が生まれる。そして彼……後にグァテマラと命名される『鎧』……を掘り出したのが、ある鍛冶屋の娘だった。
『彼女は、返り血で錆びついていた私を、可哀想といってくれた。
 私は、戸惑い、しかし嬉しかった。単なる道具でしか扱われなかった私に彼女は情をくれたのだ』
 それからは、彼は戦い以外のことを、彼が今まで体験したことのない、人々のためのことを行っていった。彼女のもと、あるときは町の壁を修理をし、あるときは幸福な新郎新婦のために花をふらせた。
『私は、彼女に掘り出されて、幸せだった』
 グァテマラの声には、喜びと優しさが入り混じっていた。
「……グァテマラは彼女のこと、好きだったんだね」
『だったではない。好きだ』
「でもどうして、彼女を探しているの」
 腑に落ちない、といったふうに、エリスは疑問を投げかけた。
『あるとき、大きな台風が町を襲ったのだ』
「もしかして洪水になって、グァテマラが流されちゃったとか?」
『そのとおりだ』
「……ヴゾ」
 台風の牙は、町を容易に荒らした。木々と建物は、食べ残しを洗いながすように、簡単にのまれた。
 鍛冶屋の娘は、グァテマラに乗り込んで町人の救助をおこなっていた。後は娘自身が一段高い岩に乗るだけで町人全員が避難完了するところまでとなった。
 ところが、次の瞬間、鉄砲水が二人に襲いかかった。
 もしも奇跡があるとすれば、それが奇跡であっただろう。
 グァテマラが自らの意思をもって、体内で操縦していた鍛冶屋の娘を取りだし、高岩に乗せたのだ。
 直後、グァテマラは鉄砲水に流された。
『それからは自らの意思で話し、動けるようになったものの、自分がいま、どこにいるか、さっぱり分からないのだ』
「そ……そうなんだ」
 エリスは返事をかえすと、やや嬉しそうに言葉を投げかけた。
「じゃあ、グァテマラ。その町まででいい、わたしと一緒に旅をしないか?」
『君と?』
「そう、わたしと! こんな、あなたとあえるような偶然、滅多にないことだもん。それに、あなた一人では、自分でご飯食べれないみたいだし」
『……確かに』
 油が固まっていたせいで、まだ完全に燃料になりえなかった。それでもグァテマラは、右腕をエリスの前へと動かした。そして。
『よろしく、エリス』
「こちらこそ、よろしく。グァテマラ!」
 二人は握手を交わした。
 激しさを増した夜の雨も不思議と、心地良かった


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