〜幕間〜


 かつてこの世界には、大陸と生まれたばかりの人間と……神々がいた。
 神々は、若き生命種である人間に、さまざまなことを教えた。

 知識を教えるもの。
 魔術と呼ばれる、人間には使用可能理解不能の学問を教えるもの。
 欲を教えるもの。
 徳を教えるもの。

 さまざまに……。

 そんな中で、人間を糧にする神も現れる。

 名をディオバン。
 財宝の神にして、迷宮の化身。
 その身、その肉は迷宮でありながら、その血、その命は財宝となって零れ落ちる。

 挑むものには危険が与えられ、財を得るチャンスを授け、そして死を以って神の命を育む。
 だが、ここで一つの誤算が生まれる。
 幼き種である人間は、神から教えられた知識を持てあまし、魔術を持てあそび、徳を持てあぐみ、欲望を持てはやした。

 そして、現れたのである。
 名をハルシオン。
 迷宮である神を、攻略してしまった男が。

 ハルシオンは、命そのものである『ディオバンの心臓』へと辿り着いた。
 ディオバンの心臓は七色に輝き、しかし決して色褪せぬ宝石であったという。
 その大きさは、ゆうに人を超えていた。
 そして、巨大さゆえにハルシオンは、心臓を砕いてしまったのである。

 次の瞬間。

 体内にまだ潜伏していた人間もろとも、ディオバンの身体は四散した。
 天へと昇り、しかし体内に残った人間の重さに耐え切れず、流星となって大陸全土へ降り注いだのである。

 ディオバンの身体は、そのまま新たな迷宮を生み出す。
 洞窟に落ちれば洞窟が迷宮に、山に落ちれば山そのものが迷宮に、川に落ちれば水路の迷宮に、町に落ちれば迷宮の町となった。

 ディオバンの死に、神々は恐れおののき、或いは人間を見限り、または激怒し、大陸から次々と姿を消していった。
 唯一地上に残った神はディオバンの妹神であり、闇の神にして獣の化身スローフィー。
 スローフィーは人間に怒り狂い、迷宮に来る人間を駆逐するため四散したディオバンの体内に闇の獣を放ったという。

 こうして……この大陸には動植物と人と、神々が残した学問『魔術』、スローフィーの魔物。
 そして、神の具現にして、神そのものである『ディオバンの迷宮』が存在するのである。

 この大陸に住むものなら誰しも知っている神話……。


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