蒼き戦慄の炎

〜4〜

 「……何のようだ」
 玄関の扉を開けると、そこにいたのはセーラー服を着た女……確か『さくら』と名乗っていた……がいた。
 さくらはあたふたと困惑した様子を見せていた。
「さ、さっきのアレ? 何ですか?」
「貴様には関係ない」
「そ、そう?」
「……用件を言え」
「あ、えーと、実は格闘技の本を見たら、庵さんが載っていたです」
「……それで?」
「庵さんって有名人だったんだ! 私、全然知らなかった!」
「用件は終わりか? じゃあ、とっとと失せろ」
「うわー、まったまったぁ!」
 閉めはじめる扉に、さくらが身体全体で止めにかかった。
 扉を両手でしっかりとつかんでいる。
 庵は小さく舌打ちする。
 さくらは必死に声を張り上げた。
「それだけが用件だったら、わざわざアパートを調べてまで来ないよぉ!」
「……ならば、用件を言え」
 庵は閉める力を抜く。さくらはやや肩で息を吸っていたが、静かに整えた。
 さくらは庵を見上げた。純粋で真っ直ぐな瞳だ。
「私、ある人を探しているんです。あ、その人、私の心の師匠なんだ。
 それで今度、私、その人を探すために旅に出るんだ」
「……それがどうした」
「んで、その旅に出るときの同行の人を探していて……それで……」
 さくらは拳を握り締めた。眼に強い意思が宿る。
「私と一緒に旅に出て下さい!」
「下らん」
 庵は扉を再び閉めはじめる。
「まってまってまってぇぇぇ!!」
 さくらは必死の形相で扉の閉鎖を阻止する。ドアノブをしっかり掴み、壁に足をかけている。
 庵は舌打ちすると、力を緩める。さくらが息を整えるのを待ってから口を開いた。
「大体、何故、俺だ」
「なんていうか、勘?」
「……勘……だと?」
「あと、この前助けてくれたからかな?」
 さくらの目には迷いが無い。本気である。
 庵はその瞳に、分けもわからず焦燥を感じていた。
 下らない。まったくくだらないはずなのに、心をえぐられる感覚は何だ?
「……フン! いいだろう」
「え! 本当!?」
「ただし、条件がある」
「条件?」
 さくらがおうむ返しに利き返す。
「俺に勝てば、同行してやる。
 表に出ろ! ストリートファイトだ!」

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