スーパーロボット大戦
スノーマウンテン

第4話


 戻ること数時間前。

 どんぶり島のシナモン研究所にある報告が届いた。
 ワルモン博士が極寒の山奥で姿を消し、その日を境に毎日雪が降り続けるのだという。
 単純に天候が悪くなっただけかもしれないが、もしワルモン博士の仕業ならば、止めなければならない。
 地域住民に迷惑だし。

 そこで、ツインビーの同型機であるウインビーとそのパイロット・パステルを島の守りに残しつつ、ツインビーとライトは遠い極寒の地に訪れた。
 来て見れば案の定、ワルモン博士が巨大ロボットと共にいた。

 そして、今。
 ライトとワルモン博士は、雪山で対峙していた。

「ふふふふふ、は〜っはっは!」

 ワルモン博士がロボットの肩の上で哄笑する。
 ロボットの体格はツインビーの10倍以上もあり、人型にしては珍しい4本腕であった。
 上方の腕は雪を撒き散らし、下方の腕は風を吹き荒らしている。

「どうだツインビーよ! 我輩が作った『スーパーカチコチ君』の威力は!」
「へっ。なるほどね。
 ここ最近、この山がずっと雪だったのは、ワルモン博士!
 あんたの仕業だったわけだな!!」
「そのと〜おり! 今日こそ貴様を倒し、我輩こそが世界の科学者であることを証明してみせるわ!
 いくぞ、ツインビー!」
「ライト、いくビー!」
「任せろ、ツインビー!」

 重い緊張が走りぬける。

 両者の視線が激突する。

 とたんに。

 4本腕が一斉にツインビーに向けられる。

 無数の雪だまを弾丸にし、撃ち放たれた。

 わずかの負荷も感じさせず、ツインビーが一気に上空へと回避する。

 そしてその場で急停止。

 通常の兵器ならばあり得ない動きを、だが、ツインビーはいとも容易くやってのけている。

 眼下にワルモン博士のロボットが映し出される。

「やっぱり、デカイ図体通りに動きは遅いようだな!」

 腕がツインビーを追う。

「ライト、来るビー!」
「おう、任せろ!」

 雪だま弾丸が放たれる瞬間。

 急降下でロボットの背後に回りこむ。

 隙だらけの背中へと。

 空中で直角に曲がり、背中に肉薄する。

「ピコハンマー!」

 ツインビーが叫ぶ。

 ツインビーの必殺武器『ピコハンマー』である。
 見た目こそピコピコハンマーそっくりだが……というか、そのものだが……威力は段違いである。

 ショートレンジで素早くピコハンマーを叩き込む!

 だが……。

「うわ〜、硬てぇ〜」

 装甲こそわずかにへこんだものの、然したるダメージを与えられなかったようである。

 瞬間。

「どわあ!?」

 ツインビーの頭部に雪だま弾丸が直撃する!

 そのまま雪山に深く墜落するツインビー。

「アイテテテ……」
「な、何が起こったんだビー!?」
「はーっはっはっは! 馬鹿め! 何のために、腕が4本あると思っている!」

 ロボットの肩に乗ったまま、ワルモン博士が哄笑する。

 ロボットの腕が上方に向いたまま、雪だま弾丸を放つ。

 そして、風を操る腕が強風を繰り出し……

「どの場所にいようとも、自由自在に狙えるのだ!」

 全ての雪だま弾丸が強風に操られ、ツインビーへと降り注がれる!

「回避だビー!!」

 辺りの雪を吹き飛ばしながら、ツインビーが緊急発進する。

 雪山スレスレの低空飛行を行いながら、雪だま弾丸を回避していく。

「まだまだまだ! やれ、『スーパーカチコチ君』!」

 再び雪だま弾丸が放たれ、強風によってそれらが全てツインビーに向かう。

 上空へと飛び立ち回避するツインビー。

「今日のワルモン博士、かなりやるビー!」
「ああ、思ったより骨が折れそうだ!」

 どうやら相手もそう思っていたようである。

「ぬう……おかしい。調子が良すぎる……。
 普段ならここで、パーッと逆転されたりするのだが……」

 アァ、哀シキ負ケ癖。

「調子が良すぎて不気味だ」

 その時だった。

 ジャーン、ジャーン

 周囲にドラの音が鳴り響く!

「な、なんだぁ!?」
「ふふふ……孔明殿の言うとおりじゃ。
 かような地で、このようなロボットがおるとはのう」

 いつからいたのか。

 いつの間にやってきたのか。

 それすらも分からせぬまま、何者かがワルモン博士の背後に立っていた。

「!?」

 全身に冷たい汗が吹き出るのを感じつつ、ワルモン博士は全力で振り返る。

 大男だ。

 厚い肉体にタキシードを着こなし、ヒゲを蓄えた中年の大男が立っていた。

「き、貴様! 何者だ!」
「ワシの名前は、孟獲! 貴様のロボットは貰い受ける!」

 言うや否。
 大男、孟獲はワルモン博士の襟首を掴みあげる。

「ビック・ファイアのためにッ!!」
「!! き、貴様! BF団の者か!」

 そして、ワルモン博士はそのまま投げ飛ばされ、ツインビーと激突する。

「どわー!? 何だビー!!」
「ワ、ワルモン博士がぶつかって来たぞ!?」

 瞬間、最大級の暴風がツインビー達を吹き飛ばした。



「と、ゆーわけなんだよな。これが」

 そうライトが明るい口調で答える。

 言われて、一堂は顔を見合わせた。

「ということは、つまり」
「この吹雪の原因は」
「貴方のせい……」
「ということですかぁ?」

 4人の視線が一斉にワルモン博士に注がれた。
 思わず、うろたえるワルモン博士。

「なんじゃい、ないじゃい、そろって一斉に!!
 ああ、そうだ! 我輩が全て原因だ! 文句あるか――――!」
「逆ギレしているし……」

 ゲイナーが呆れたように呟いた。


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