スーパーロボット大戦
スノーマウンテン

第9話


「ふっふっふ……こいつら、やるではないか」

 スノーマンの肩に乗り、嬉しげな声を上げたのは、BF団の南蛮王孟獲である。
 孟獲は策士諸葛孔明の直属の配下で、南国の島の科学者が開発しせり巨大ロボット兵器を奪取、使用をの命を与えられた者である。

 諸葛孔明。

 それはBF団において十傑衆
『混世魔王樊瑞』
『激動たるカワラザキ』
『暮れなずむ幽鬼』
『マスク・ザ・レッド』
『素晴らしきヒッツカラルド』
『命の鐘の十常寺』
『白昼の残月』
『直系の怒鬼』
『眩惑のセルバンテス』
『衝撃のアルベルト』
 これら最高幹部と同以上……時としてそれ以上の権力を持っている人物である。

「……これは地球静止作戦、しいてはGR計画に関わる重要な作戦ゆえ心してほしいのですよ」

 BF団の本拠地にて。
 その諸葛孔明に呼び出された孟獲は、背筋を思わず正したという。
 地球静止作戦は現行で行なわれている重要作戦であり、GR計画に至ってはBF団の悲願とも言うべきものである。
 それに関わる作戦に単騎で言い渡されるとは、真に責任重大であった。

「いいですか。そなたはヒソヒソヒソ」
「ふむふむ」
「後は、そなたの好きなように行動してよろしい」
「はっ」

 作戦を言い渡され孟獲が部屋を出ると、諸葛孔明は扇で口元を隠しながら微笑んだという。

「これにてあとは……ふふふふ」


 行動を起してみれば、あっさりと目的を達成してしまったのである。
 巨大ロボット兵器を奪取し、BF団の科学者ブラック博士から頂いたコントロールチップで意のままに操り、吹雪を起す。

 以上。終わり。

 孟獲は諸葛孔明の直属ということで、特殊特権を得ている。
 だが本来、彼はBF団のB級エージェントクラスの存在でしかなく、取り得は戦闘力。
 そんな彼にしてみれば、あっけなさ過ぎて暇を持て余してしまったのである。

 これが重要な作戦であっても。

 そこで彼は遊ぶことにしたのだ。
 この吹雪を止めようとするロボット達を相手に。

「ふっふっふ……さて。誰から遊ぶとしよう」

 やはりここは……一番近くにいるジオン軍のグフだろう。



 極寒の大地を、ヒートソードが突き抜ける。

 赤い流線が走るたび、からくり木獣が切断されていく。
 歩みを止めることなく進むは、ノリスの駆るグフ・カスタムである。

「凄い……」

 ノリスと相席した光は、感嘆の声を上げられずにはいられなかった。
 モビルスーツに乗るのは初めての経験だが、それでも分かるほどノリスの操縦技術は巧みであった。

 光は知らなかったが、彼、ノリス・パッカートは『エースパイロット』であった。
 それはグフ・カスタムの頭部に装着された『角』が雄弁に語っていた。

 もし、これが通常戦闘であれば連合軍にとって畏怖の対象であったのだろうが……。

「でかいな」

 スノーマンまであとわずか、というところまで接近したノリスは思わず呟いた。

 ノリスはある計画のため、試作の空飛ぶMAを間近で見たことがある。
 そのときは、MSの1.5倍程度の大きさが、やけに大きく感じたものであった。

 だが、スノーマンの巨体はグフの軽く倍はあった。
 無意識だが、ノリスの手に汗が滲む。
 巨体差がこうも圧迫感を与えるとは……!

「危ない!」

 光が叫ぶ。

 スノーマンの腕が、こちらにゆっくりと向けられた。

 雪球弾が放たれる。

 同時。

「ヒート・ロッド!」

 グフ・カスタムの右手の隠し武装『ヒート・ロッド』が伸びていた。

 電流鞭ともいえるヒート・ロッドは、背後に蠢いていたからくり木獣を絡めとる。

 瞬間。

 からくり木獣は雪球弾に向かって放り投げられた。

 無数が雪球弾がからくり木獣を打ち貫き破壊する。

 だが、一瞬の隙間が出来る。

 その隙間にグフ・カスタムは素早く間合いを詰める。

 スノーマンは、雪球弾を放った姿勢のままだった。

「鈍いな!」

 グフ・カスタムがヒートソードを振り上げる。

 スノーマンは腕を戻そうとする。

 だが、遅い。

「その腕、頂く!」

 しかし、その瞬間。

 グフ・カスタムに激しい衝撃が伝わった。

「何だと!?」
「うああ!?」

 両膝間接に直撃を受けたことを示すエラーメッセージがモニターに流れる。

 突然のダメージに、瞬間的に脚部が支えられなかったグフ・カスタムは、前のめりに倒れた。

 グフ・カスタムのコンピューターでは捉えきれなかったのだ。

 プチモビルスーツよりも小さく、モビルスーツよりも早いスピードで動く存在。

 人間を。

「ふっふふふふ。どうした足元がお留守ではないか」

 名を南蛮王孟獲。

 グフ・カスタムが腕を切り落とそうとした時、孟獲はスノーマンを降りると、グフ・カスタムの背後から両膝に向かって跳び蹴りを同時に放ったのだ。
 いわゆる『膝カックン』状態になったのだが、勢いがつき過ぎたグフ・カスタムにとって、倒れるのは必然と言えた。

「さあ、スノーマン。踏み潰せ!」

 孟獲の命令により、スノーマンは重鈍な足を持ち上げる。

「く!」

 ノリスはグフ・カスタムの身体を咄嗟に寝返らせる。

 眼前に、スノーマンの足が迫っていた。

 グス・カスタムは、肩を持ち上げ、盾ごと凍りついた左腕を、突き出した。

 鈍く、重い一撃が突き抜ける。

「うあああああ!」
「くうぅ!」

 光とノリスが同時に呻き声をあげる。
 盾で抑え切れない振動によって腕はひしゃげ、ノリスと光が見ている前で装甲がコクピット内部まで大きくへこんだ。

 危険だと思われる状態はそれだけでは留まらなかった。

 グフ・カスタムのハッチが開いたのである。

「!?」

 コンピューターミス。
 いや、違う。
 外部から開けられたのだ。

 ハッチの向こうに男が一人、立っていた。

 手にしたのは中国風の剣を一本。

 名を南蛮王孟獲。

「ふっふふふふ。楽しもうじゃないか」


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