道化神チーム

『空間の神楽月』
『三月の黒猫』
STORY
前大会から1年…アレスは相変わらず家猫として適当な暮らしを続けていた。
人語を解する以外は、余りにもナチュラルな猫っぷりに、
ドクター・ブルも観察に飽きてきたような感がある。

かといって細胞サンプルを解析してみても、
ほぼ100%人間と同じ遺伝子形質をしているという事実以外は、
結局の所、これといった研究成果は上がらなかった。

そんなある日、ドクター・ブルのラボに珍しい訪問客があった。
アレスは訪問客になど興味は無い様子で、
いつも通り勝手に冷蔵庫からネコ缶を取り出し、手際よく皿にあけて、
今まさに食事の最中であった。

だが奥の方から声は聞こえてくる。
どうやら訪問客の名は組織の十一月「神楽月」のコードを持つ男らしい。
以前、アレスがブルに聞いた話では、
「衛星でも所在地を掴みきれない神出鬼没の異能者」ということだけである。

ブルが神楽月に質問をした。

「しかし一体全体、この地球上で、
 衛星の監視からも逃れられるというのはどういうトリックなんだ」

それに続いて実に穏やかな、
冗談とも本気とも判らない口調で「神楽月の男」が答えた。

「簡単な事ですよ…地球上に居ないものなら衛星も監視できないでしょう?
 いうなれば『僕は何処にでも居て…何処にも居ない』ってね」

ブルが怪訝そうにまた質問する…「それはどういう意味なのだ?」と。

そう問われると今度はまた、はぐらかすかのように、
同じような口調で神楽月の男が答える…「それは秘密ですよ」と。

そして「神楽月の男」はこうも続ける。

「だって僕の本職は大道芸人…そしてマジシャンです
 マジシャンはタネは明かさないのが基本でしょ」と。

アレスは暦の幹部連中には殆ど在った事がない。
興味も無いし、何よりブルが自分を飼っているのを秘密にしているという、
込み入った立場上のこともある。

だが、アレスはこの「神楽月の男」の会話を聞いている内に、
「昔の知り合い」の事を思い出していた。
そして興味に駆られ「猫の姿なら構うまい」と、
「その男」を見にいくことにした。

すると…

「ヘルメス…!」

アレスは思わず人間の言葉を喋りそうになって、すんでの所で堪えた。
「その男」はアレスの知る「ヘルメス」そのものだったからである。

そして何と「神楽月の男」も、
アレスを見ると少し驚いたような顔をして「アレス…?」と呟いたのだ。

ドクター・ブルは一瞬、冷や汗をかいて焦った様子を見せたが、
「どうして家の猫の名前を?」と平静を装って取り次いだ。

「神楽月の男」は数秒考えて、
結果、どうやらおおよその事態を飲み込んだらしく、
「ははあ…」と優しい微笑を浮かべながら納得した。

そして「神楽月の男」…「ヘルメス」は、
自分がアレスの「古い」知人であることを告げ、
委員会にはアレスの事は秘密にすると誓った。

その後、アレスとヘルメスは二人だけで町を散歩しながら、
他の者には、よく意味のわからない不思議な会話をしていた。

「オマエガ神楽月ダッタノカ…
 マサカ…オマエモ『コッチ』ニ来テイタトハナ…」
「君にもいつも言っていたでしょう?
 『僕は何処にでも居て…何処にも居ない』ってね…
 僕としては君が『こっち』に居る事の方が不自然だと思いますけど?」
「事故ダ…」

数日後、彼らはチームを組んで大会に出場する事に決めた。
勿論、理由は彼等らしい「とてもシンプルなもの」…

「面白ソウダカラ…」
「面白そうですからね…」




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