「欺く月」


番外編

トクトクトク・…ごきゅっ!

「ぷはぁーっ!いやぁ、絶景かな絶景かな。」
満開の桜、男は陽気に叫んだ。
大きな月を隠す大きな桜。敷物もひかずに腰掛け男は一層酒を煽った。

「こんばんわっ!」


!!まさかお前・・・ひび・・・

「あれぇ、どうしたんやぁ?おっちゃん、今日はねいちゃん達とこで遊
んでへんのんか?」

少女の声におもわず振り向いてしまった自分に少し笑ってしまった。
へへへ・・・柄じゃねぇよな。
「ん〜!?なに笑っとんのん?」
「いやいや・・・、どうだい?お前さんも一杯。」
そう、彼女はもう帰らない。解ってたはずなのに。
「え〜っ!ええのん!!」関西弁で捲くし立てるその少女は瞳を輝かせ
た。
「もちろんさ、こんな桜の綺麗な夜に呑まないなんて嘘だぜぇ?今夜は
無礼講だ!お嬢ちゃんも、今日は呑んでしまいなっ!!」
「やったぁ☆おっちゃん、話の解るええ人やなぁ!十三とはえらい違い
や。。。」
少女は男・・・いや、漂の横にちょこんと座った。
「・・・っぷっはぁっ☆」
顔を真っ赤にして一気に煽った。
「おぅ、見事だねぇ!」
その光景を目の当たりにして、漂は少し、笑った。





「欺く月・番外編」        
                    月見酒



「ひっく!おっちゃん、なんで、ひっ!・・っく、こんなとこに一人で
おるん?」
必死にしゃっくりを抑えようとしながら少女・・・「あかり」はそう訪
ねた。
「ん?・・・あぁ、別に、ね。たまにゃ情緒に浸ってみてぇ時くらいあ
るさ・・・。」
『おぇっ!な、なんでこんなの呑めるんですかっ!』
漂は酒をまた一杯、煽った。
「おっちゃん、なんかあったんか?」
「・・・。」
だったら、無理するなっていったろ?お前はまだ子供なんだから、酒の
味なんて覚えても損はしても得はしねぇぜ?へっへへ、
『!!・・・あ、あたし!子供じゃありません!』
「なんにも・・・ねぇよ。なぁあんにも、ね。」
「ほんま・・・ひっく! ほんまかぁ・・・?」
「あぁ・・・」

『その証拠にこんなもの!』

「おい、やめとけって!!」
途端にあかりはびっくりした顔を見せた。
「な、なんやぁ、おっちゃん。自分で呑めぇゆうたくせにぃ」
漂は思わずハッとしてしまった。
「ははは・・・、な?びっくりしたろ?」
「なんやねん・・・」
「ときに聞くが、、、お前さん、しゃっくりは?」
「あ・・・止まった・・・」
自分ながら、ごまかすのは上手いと思った。
どうやらまた、思い出してしまったようだ。
忘れようとすると、余計に思い出す。

・・・・・・・・・元気なんだろうな?・・・・・・


『パタッ』
「お?どしたぃ?」
あかりが漂の膝に頭を任せた。
「酔いが覚めるまで、貸してんか・・・?家出中やのに、帰ったら十三
にまた口うるそうゆわれる・・・」
「ははは・・・、お前さん、おかしなこと言ってるぞ?家出中なのに帰
るのかぃ?」
「zzz・・・」
「あら・・・、おやすみですか。」
こうしていると思い出す。



ばっかやろう!だから、無理するなっていったろう!
ったく!しょうもないとこばっかり親父と似やがって・・・
『ひっく!・・・ねぇ?漂さぁ・・ん、あらしぃ、ころも(子供)じゃ
ないれしょ?・・・ひっく』




そういや、どうやってあの時あいつのしゃっくり止めたっけな・・・?
へっへへ、・・・どうでもいいことはすぐに忘れるのによ。

だったら、もういいや。俺は決めた!

忘れらんねぇなら、死ぬまで覚えといてやるよ!

漂は最後の一杯を景気よく煽った。
「お月さんよぉっ!響を頼むぜぇ!!」
ひときわ大きい声が京の夜に響いていた。







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