FOW閑話シリーズ
向日葵三景
作者 以津真天さん
| ひまわり人間。正式名称サン・ファーガ。 暦の九月謹製の彼らは、はたしてどのような日々を繰り広げているのであろうか。 三つの場所を見て、考えてみることにする。 (注意・これは冗談です。) 第一景 プロトが、いつものよーに仕事を終わらせてぬぼらーッとしていると、 向日葵人間が一人、見慣れぬものを抱えてふらふらとしていた。 「なに持ってるんだ?」 と、プロトはそれを覗いた。 「猫。」 と、簡潔に向日葵はこたえた。 やや太目の三毛猫だった。どこにいたんだろうか。 「かわいいっしょ。」 「ん。」 じつに嬉しそうに向日葵は猫を抱える。珍しい光景である。 「さっき拾ってさー、これから 「食うのか?」 「そう、頭からジャムを塗ってー・・」 「ちがーう。」 「冗談だ。」 なんと、この猫を飼おうと思っているらしいのだが、どうにも隠し場所が見つからないらしい。 「と、いうわけで仲間にもいろいろ聞いて見たんだけどさ・・・あまり言い答えがなくてさー・・」 「ほー。」 「さっきはなんかしらんけど『エースのジョー』って名前をつけられちゃってさー・・・」 「・・・・・・オレはジョーンだ。」 「ちがーう。」 「冗談だって。」 隠し場所をいろいろ思案してみることにした。 一月。議長と執行人に怒られるからパス。 二月。・・・・・・やめよう、食われそうだ。 三月。あそこには猫もいるし実験に使われそうで怖い。 四月。・・うーむ、動物とかいっぱいいるしいいかもしれない。けどばれる可能性が高い・・・ その他の月はほとんどいつもいないけど守りが堅い。 珍しく考え込むひまわり人間であった。 「・・・・どーするかなー・・」 「一つ、忘れてるぞ。一番の適所。」 「なに?」 飄々とプロトは言った。 「おまえんとこ。(九月)」 「・・・・いや、NGワード。」 「そうか?」 第二景 「しょくーん!きーてくれ、きーてくれ。」 「なんだなんだ?」 「どしたん?」 人通りの少ない廊下の隅っこに、一人(いや一体?)を中心にして複数の向日葵が集まっていた。 「われわれひまわり人間は、規格正しいし複製すぐ作れるし、頭もそこそこいいし、手先も器用だし、なにより対応年数も人間より長い!」 「ふむふむ。」 「いいいこというじゃん。よーし、今日からお前はエースの・・」 「聞けよッ!」 こほん、と咳払いをして、 「と、いうわけでいっちょなんかいろいろ起こして人間を我らひまわりの手で支配しようではないか! 革命だー!」 沈黙。 「・・・・・・あ・・・あのー?」 珍しく冷静なひまわり軍団。 「それで?」 「なんかメリットあんの?」 「う゛・・・・・」 確かに、メリットはこれといってないのだ。 今でも毎日肥料とかもらって養われているし、メンテだってしてもらっている。 ・・・たまに盾にされたりといろいろあるが、その分世話はしてもらっている。 よしんば支配したとしても人間全部をわずか数百のひまわり人間で養うのは無理。 というよりまず、支配する為にいろいろなんかやるというのがどだい無理。 「とくにいいことも無しだよ。」 「やっぱ『エースのジョー』は撤回なー。」 と、冷たい言葉を浴びる中心となったひまわり人間。 「じ・・自由な時間とか学習に時間を取れるじゃないかー! 自由!権利!これよっ!」 などと論議していると、プロトが大荷物をしょって現れた。 「お・・おお・・いたか。これはこぶの手伝ってくんないか?」 「あ、うん。」 と、先頭に立って荷物を持つひまわり全員。 「終わったら肥料少しやるからなー。」 「「「はーい。」」」 「んで、これが君の言う革命?」 「っく・・・・」 第三景 ここは、暦の最高幹部とも謳われる『白老のブランキ』こと、 一月議長の部屋である。 そこでは、今、まさに・・・・・ 「ガルベット。」 「はあ・・・・・・・・」 ひまわり軍団の大騒ぎが演じられていた。 「ワーワー」「キャーキャー」「ぎゅうどーん。」「エースのジョーと・・(略)」 「・・・・・・・・・はやくどうにかしてくれたまえ。」 「すいません、もうすぐ九月嬢が来るので今しばらく辛抱してください。」 ああ、休暇がまた遠のくと感じるプロトであった。 「リヴィーナ君が来る前にどうにかしたまえ・・」 「はいっ、命にかかわりますので・・・」 これが、その日常の記録の全てである。 これでいいのかどうかは、自分は知らない。 |