もう一つの未来〜もし、この星が…


FINAL

作者 クラッシュさん


「うっ……ん……?」

一人の長身で長髪の男が上半身裸の状態で起きあがった。

「ふあぁ〜…朝…か?」

男はそう言ってベットの横にある時計を眺める。時刻は8時半を差している。

「遅刻か……ん?今日は日曜日…って事は休みか…。もう一回、寝よ。」

しかし、ベットに潜り込んだ男は慌てて起き上がった。

「あああぁぁ!!!しまった、今日はみんなと遊ぶ約束があったんだった!!」

男は慌てて着替えて、洗面所で寝癖の立った髪を直している。が、本当に慌てているのか、彼は少しカールのかかってしまっていた髪の毛も気にせず、慌てて家を出た。

「母さん!!夕飯は入らないぜ!!って言うわけで…行ってきまーす!!」

しかし、表に出た彼は驚く事となった。

「遅いぞ!『室伏』!!」

小柄な青年が腕を組みながら、長身の男に言った。
青年の他にも、2人の男と1人の女が男の家の前に立っていた。

「…あれ?木原?って言うか…お前らも…なんでここに?」

「バーカ。お前が遅刻するのは目に見えてるんだよ。」
「室伏クン、寝癖立ってるよ?」
「よっぽど、慌ててたんだなぁ〜。」

室伏と呼ばれる青年はちょっとムッとしたが、怒ろうとはしなかった。いつもの事だったからだ。

「悪かったな…バカでさ。」
「どういたしまして、お前がバカなのはいつもの事だからさ。」
「さすがは市川財閥社長の息子の智也さん、俺をバカと言えるとは、考える事がまともじゃないな。」

室伏は冗談で言ってみた。

「お前は端から見れば絶対バカだよ。」

ちょっとキツイ言葉が直球で返ってきた。

「青島!お前、その髪の色どうにかしろよな!一緒に歩いてる方の身にもなれよ!」
「オラァ〜!!俺に八つ当たりするなぁ〜!!」

青島と呼ばれた男の髪はオレンジ色で朝見るととても輝かしい。だが、決して新鮮さはない。

「あははは…!まあまあ、それよりさぁ、早く行こうよ!」

一人の茶髪の女性が笑いながら、室伏に向かって言った。

「ああ、電車の時間に間に合わなくなるぞ。」

小柄な男、木原が時計を見ながら言う。だが、かっこいい男という印象は彼からは感じられない。むしろ、彼は俗に言う「かわいい系」なのかもしれない。

「じゃあ、さっさと行こうぜ!」

室伏がそう言って、先に歩いて行くとみんなもそれに続くように歩いていく。
室伏はしっかり前を向いて歩いていた。

「室伏クゥーン!!」
ガバッ!!

室伏は急に後ろから来た衝撃をなんとか抑えた。
そして、

「ホ、ホープ!何すんだよ!!」
「愛情表現!」
「堂々と断言すんな!!そして、急に後ろから抱きつくな、驚くだろうがっ!倒れそうになったぜ!?」
「大丈夫!室伏クンなら支えてくれるって信じてるからぁ〜!」
「離せっ!!重い!!重い!!マジ重い!!」
「もぉ〜、素直じゃないんだからぁ〜!」
「うっせぇ!!俺は理性の塊だっ!!智也!!助けてくれっ!」

室伏が市川達に向けてそう言うと、ホープという女性は3人を睨みつけた。

「な、なあ、お邪魔しちゃ悪いな!」
「あ〜、ああ、そうだな、市川!」
「お、おおお、俺らは、先に行くぜぇい!!」
「仲良くな!お二人さん!!また、あとでなぁ〜!!」

男3人は恐怖を覚えたのか、逃げるように走っていった。

「こらぁ!!テメェら、それでも、親友か!?」
「まあまあ、みんな気を使ってくれたんだからvv」
「こういうのは『見捨てた』っつーんだよ!いい加減離せ!みんなに追いつくぞ!」
「GO!!GO!!」
「何が『GO』だよっ!」


もう一つの彼らは、楽しく生きている……
もしかしたら、あのムロフシもこんな風に暮らしたかったのかもしれない…

もしかしたら…………




『もう一つの未来 〜もし、この星が…〜』

        完


 

NO.11に戻る
図書館に戻る