KOFXX−EX2
2月13日話「明日という日のために」
作者 蓮華
| 【明日という日のために】 政府武力組織「ホーリーナイツ」本部、自動販売機で買ったココアを飲みながら、アイン・ファルトは情報の整頓をしていた。 先ほどまで会議だったので、そこで得た情報などを脳内で整頓しているのだ。今日は二月十三日、アインは その辺にあった雑誌を適当にめくっていた。明日はヴァレンタインだ。心なしか、「ホーリーナイツ」本部も 騒がしいような、浮き足立っているような気がする。 アインとしてはヴァレンタインは平日なのだが、日頃世話になっている隊長や『セブントリガー』のメンバーには 義理チョコをあげる予定だ。 「元々ヴァレンタインって、聖ヴァレンティノが拷問の末、撲殺されて死んだ日なのに……」 実際の所そうだ。本来の意味を知っている人が何人ぐらいいるのかアインが気になったが、それはおいて置いた。 読んでいる雑誌にも、ヴァレンタイン特集があった。とりあえず見ておいた。 ココアを全て飲みきったことに気がつくと、アインは口元をぬぐい、ココアの缶をゴミ箱に放り投げた。 ただし、見ない状態でだ。アインの計算式に寄ればこのまま放り込めば、ココアの缶はゴミ箱に入る予定だったのだ。 「痛っ」 「すみません」 ゴミ箱に近づいていた少女にココアの缶が当たってしまったらしい。アインはすまなさそうに少女に近づいた。 少女はペイルブルーの長い髪をしていた真っ白い肌をしていた。 「私の方こそ、ぼーっとしてたから」 「いえ、缶を投げたのは私の責任です」 アインはココアの缶をゴミ箱に入れると、少女の方を見た。 「……ねぇ、貴方、ヴァレンタインのチョコレートって手作りするの?」 少女はアインが持っている本を見た。アインが丁度指で挟んで栞代わりにしていたところがヴァレンタイン特集だったのだ。 「作っても良いですが……」 これから買う予定だったのだ。手作りにするのか、買うのかは決めていなかった。少女はアインの手を握った。 「それならさ、一緒に作らない?」 「……一緒に、ですか?」 アインは戸惑った。いきなりこういわれたのは初めてだったのだ。少女は無邪気に微笑んだ。 つられて、少しだけアインも微笑んだ。 「うん、一人で作るよりも二人で作る方が楽しいじゃない?」 「……そうですね。それは言えている気がします」 「なら一緒に作ろうよ」 「解りました」 会議も終わって暇になったことだし、とアインは了承した。情報整理も終わった。 「そっか、始めまして、だよね私はクーラ、クーラ・ダイアモンドって言うんだ」 「私はアイン、アイン・ファルトです」 クーラ、と聞いてアインは思考を巡らせる。アインのデーターの中にクーラのことはあった。 クーラ・ダイアモンド、NESTの生き残りであり、NESTを壊滅させた人間であり、そしてNESTを壊滅させたときに 力を使いすぎたせいでコールドスリープに入っていたことなどのデーターを脳内から引き出した。 確か、大気中の水分を自由に凍らせる力を持っていた気がする。 「よろしくね」 「こちらこそ」 こうしてアインとクーラは一緒にヴァレンタインのチョコレートを作ることとなった。 「ホーリーナイツ」本部内にある厨房を借りた。材料はそろえておいてもらった。広々とした厨房には アインとクーラと材料しかなかった。 「アイリスが居なかったんだ。一緒に作ろうと想っていたんだけれど」 「……確か、隊長達のみで訓練をしていたような……」 一応、アインが所属している漆番隊の隊長である土方洋介のスケジュールも頭の中に入っている。隊長たちだけで 訓練……とは名ばかりの対戦が行われているはずだ。アイリス・ストライフはクーラの現保護者であり二番隊隊長だ。 「ところでホーリーナイツって何番隊まで居るの?」 「さぁ、でも、零番隊から、二十一番隊まではいますよ」 クーラは疑問に想っていることを口にした。アインは少し首を傾げると、データーを出した。 実は所属しているアインであっても、何番隊があるのか解っていない「ホーリーナイツ」ただ、零番隊から 二十一番隊まではある。隊長会議、別名円卓会議、またはアルカナ会議に出されるのが、零から二十一番隊だ。 タロットカードのアルカナに引っかけて言っているのがアルカナ会議だが、実を言うと隊長が全員そろうのは 例えその会議でも滅多なことではない。どこかの部隊が副隊長などで代理を立てるからだ。 全員そろうのは一年に一度あればいいだろうか。 「アインは詳しいね」 「これでも、参謀役みたいなものですから」 「それと、隊長ってどうやって決めるの?」 「……副隊長から選ぶことと、後は隊長会議にかけたり……」 隊長係に不在になってしまった場合は副隊長から選ぶ、あるいは隊長会議にかけるかのどちらかになる。 喧々囂々で話し合うが、実力があればそれはそれで良いなどと言う曖昧なところがあるのも事実だ。 現に隊長に収まってしまえば隊員などは隊長の独断で選ぶことが出来る。アインだってそうして選ばれたのだ。 「K’はそうやって選ばれたんだ……」 「……以外と、曖昧ですから」 K’のことを言ったのではなく、組織のことを言った。アインはK’のこともデーターとしては知っていた。 「凄いね、いっぱい知ってるなんて」 「……ありがとうございます……」 内心は複雑だ。アインとしては情報を相手から奪ったりしてそれを話しているだけに過ぎない。 両腕にはまっている金色の腕輪の中に入っているミクロン繊維『マリオネツテン・シュピラー』を相手の神経回路に 接続させたりして読みとっているのだ。自分で覚えたと言うことはそんなにない気がする。 「ところで、どんなチョコレートがいいと思う?」 「誰にチョコレートを?」 聞き返した。ヴァレンタインは日本では女性が男性にチョコレートをあげる日だが、諸外国では 男女関係なしに贈り物をあげたりする。 「お世話になっている人たち、それとK’」 「K’さんのチョコレートは別に?」 それと、と言っていたので別にあげるのかと思い、聞いてみるとその通りだった。 「うん、そうだ。K’はビーフジャーキーが好きなんだ。ビーフジャーキーにチョコレートをまぶすとか?」 「…………………………………………それは、止めておきべきです」 クーラのアイディアをアインは制した。想像してみると何だか不味そうだ。アインはクッキーでも作ろうとしていた。 別に何を作っても良いのだが、作りやすいものにしておこうとしていた。厨房には沢山の材料がそろっている。 アインはチョコレートを手に取った。アインが持ってきた本をクーラは見ている。ヴァレンタイン特集のお陰で 色々なチョコレート菓子の作り方が書かれていた。どれも美味しそうだ。 「決めた。チョコレートケーキとトリュフにする」 「では、私もそれで……」 作る物を決めれば、後はその通りに作ればいい。最初はトリュフを作ることにした。 手際よくクーラは包丁でチョコレートを刻んでいる。アインは生クリームを小鍋で暖めておいた。 二人があげる分をまとめて作るのだ。暖めた生クリームの中に刻んだチョコレートを入れる。それをアインが 木べらでかき混ぜていた。これをガナッシュという。 「アインは誰にあげるの?」 「……隊長と仲間に……」 僅かな沈黙の後でアインは回答した。 適度にかき混ぜた後で用意されたバットの中にガナッシュを入れた。クーラがそれをフォークでかき混ぜている。 アインは別のバットを用意すると、ラップを引いた。かき混ぜておくと作業が楽なのだ。かき混ぜたチョコレートを スプーンですくい、ラップを引いたバットの方に等間隔で置いていき、それを冷蔵庫の中に冷やした。 「三十分ぐらい冷やせば良いんだよね」 「はい。その間に回りをコーティングするチョコレートを……」 「トリュフは成功しそうだけれど、ケーキの方は大丈夫かな?」 「レシピ通りに作れば」 レシピ通りに実行すれば、とりあえずは出来る。それでも、クーラは不安だった。レシピ通りに作れば成功はするが その通りに行くかどうかも解らない。それより、別の不安があった。 「……K’、ちゃんと食べてくれるかな?」 作ってもK’が食べてくれるかでクーラは不安そうにしていた。アインは少し考えて、言った。 「……料理は愛情……」 「え?」 「そう聞きました。クーラが気持ちを込めて作ったものなら、食べてくれるでしょう」 「……うん、そうだよね」 静かだが、断言している声でアインは言った。安心させるように僅かに微笑んだ。クーラはそれに頷いた。 「さて、仕上げましょう。チョコレートケーキもありますから」 「頑張るね。ねぇ、アインって好きなアーティストとか居る?」 「私は……」 無表情と言われるアインだが楽しそうに話していた。クーラも楽しそうに作っている。 他愛もない話をしながら、二人はヴァレンタイン用のチョコレートを作っていた。 【続く】 後書き ツヴァイ:漆番隊副隊長のツヴァイ・セルトラックです 洋介:……俺らが何で後書きなんだ? ツヴァイ:代理だそうで、推薦入試で暇が出来たので書いた話だと 洋介:名前でしか出番がないんだが ツヴァイ:良いじゃないですが、隊長 洋介:……ちなみに続きあるぞ ツヴァイ:隊長はヴァレンタイン好きですか? 洋介:非常食が手にはいる日だから ツヴァイ:………では、次回お会いしましょう 洋介:適当に設定が付け足されているが気にしない程度に ツヴァイ:無理ですよ。それ…… |