KOFXX閑話
【珊瑚と花と】

作者 蓮華


【珊瑚と花と】

無機質な部屋で、いつもの検査が行われていた。そこに居たのは二十代前半の女性だった。
検査と言っても何処かが悪いのかとかそう言うのではない。

「まだ発動しないようだな」

「発動すれば確実に……」

白衣を着た研究者達が言う。主任は居ないようだ。速く終わって欲しいと想った時、
意識が予備動作無しで一気に途切れた。
それから数分して、悲鳴が、した。


薄暗い部屋で眼鏡をかけて、パソコンのキーボードを高速で叩いて、プログラムを制作していたのは日本人らしい
二十代前半の青年で、着ている白衣は真っ白で画面の明かりで光っている。
部屋に流れている曲はショパンのワルツ第三番だった。

「眼鏡はいらないんじゃないのかい」

「雰囲気だ」

声をかけられて返す。部屋にいるのは青年の他に一つだけ。身長は九十センチほどの……ウサギだった。
白いウサギで、モノクルをかけていて、上着を着ていて懐中時計を身につけている。ルイス・キャロルの
不思議の国のアリスに出てくる白兎と言うべきだろう。

「ところで、何を作っている?ウイルスか?」

「擬似人格プログラムだ。対人インターフェイスも」

言いながら高速でキーボードを操作している。彼が作っているのはプログラムのようだ。

「そんなものを作って何をするつもりだい」

「冷凍睡眠の連中が目覚めた時のためだと……」

人ごとのように言いながら、作っているが、熟練のプログラマー並みの速さでプログラムは出来ようとしていた。

「最近、多いようだね」

白兎は言う。
冷凍睡眠は人間の身体の新陳代謝を冷凍することで止めることにより、仮死状態に陥らせることが出来る。
これにより、歳を取らないまま人間を未来へと進めることが出来る。
ただ、冷凍睡眠は一時的に記憶がなくなったり、脳に障害が起きたりする。

「元々はR・A・ハインラインの夏への扉と言うSF小説からだが」

「フォーエバーヤングって映画じゃなかったのかい?」

「そっちが千九百九十二年で、夏への扉は千九百五十七年だ……良し。完成」

冷凍睡眠に関する短い会話を交わした後、青年はキーボードを叩いている手を止めた。眼鏡を外す。
レンズがなくなり、一層、青年の瞳がよく見えるようになった。
金色の瞳。
それも、異様に輝いている瞳だ。
不気味に見えるかも知れないが、青年の持っている雰囲気と逆にかみ合っていて存在感を出していた。

「完成したのか」

「プログラムは、だが……問題が一つ」

「問題?問題提起なんて珍しいじゃないか」

「擬似人格プログラムは出来たが、キャラクターをどうするべきか」

大したことのない問題のようで、彼にとっては重大な問題だ。案内役のキャラクターを決めていないのだ。
擬似人格プログラムが完成しないとか、バグがあったとかそんな問題ではなかった。

「ふーむ、君はどうしたい?」

「お前にするか、猫にするかそれとも人間型にするか……」

考えているとドアがノックされた。

「中断だね。お客だよ。―――――暁」


黒い髪に異様な光を放つ金色の瞳を持った首にコインのペンダントを提げている青年、暁は他の研究員に案内されて
ある場所へと向かっていた。真新しい白衣となっている。
研究者の中でも上位の方にいる、それ自慢と思うことはない男は、異常事態があれば止めるために
行くこととなった。

「こちらです。ゴールデン・アイズ」

ゴールデン・アイズとは暁の異名だ。その瞳から、いつの間にかこう呼ばれるようになっていた。
暁と呼ぶものはゴールデン・アイズと呼ぶ者よりも少ない。最も、暁というのも偽名のようなものであり、本名ではないが。

「何が起きた?」

「実験です。精神プログラムの」

精神プログラムと言えば自分が作っているアレが浮かんだ。分類によってはアレも精神プログラムに入る。
他にも精神プログラムが作られていたらしい。それはココでは別に珍しいことではない。
知らせに来た研究員に詳しいことを聞いてみたのだが、知らないようだ。
シャッターがあった。研究員がそのスイッチに触れる。

「特殊工作員は?」

「派遣したのですが、連絡がなく、中にいる研究員も」

「避難しているはずだが……開けろ」

研究員がシャッターを開ける。その向こうにはもう一枚シャッターがあった。研究員は離れたことを確認すると
暁はポケットに入れている手を淡く輝いているスペースに当てた。機械音声が暁を認識し、シャッターが開く。

「シャッターを開けたらそこは血の海だった。地面の上が赤くなった……」

靴に着くべっとりとした赤い物を見て、想わず文学作品をもじったものを口にする。
『そんなことを言ってる場合かい。君は』とでも、白兎がいればぼやかれる気がした。白衣が紅く染まっている研究者に
触れる。死んでいることは出血量からしても、明らかだったのだが、知りたいのは別のことだ。
死後、四十分程度……そう判断すると、廊下を進んでいく。ここの構造は頭に入っているので、難無く進んだ。
その途中で死体が転がっているが無視する。純粋な力で引きちぎられていたり、引き裂かれたりしていた。
少しして、実験室の前に立つ。核が来ても大丈夫と言った作りをしている。鍵を開けようとしたが、開けられていた。
扉を開ける。
そこに広がっていたのも、紅で、紅を流した人がいた。どれも研究者のようだ。
吐くこともしなければ、嫌悪することもなく、嬉しいと想うこともない。その中間にいる金色の眼を持った青年は
靴に紅が着くのを嫌がりながら、生存者を見つけた。
部屋の中を大ざっぱに判断して……生きているものは彼女だけだ。
外見年齢は二十才程度、髪の毛は金色で血に濡れて赤くなっている部分があった。
触れて、状態を確かめると瞬時に判断し、少し疲れたように金色の瞳を細めた。

どうすれば良いのかと問いかける。あんなことになってしまった。
自分で自分に聞いた。
真っ暗な闇の中で、ずっと問いかけて、後悔した

見ていたのは、数年前、まだこんな状況になっていなかった頃に行った海の風景だった。
太陽は眩しくて、海は青くて、広くて、家族がいた。その日々はもう戻ることはないと知っている。

「お目覚めかい?」

「え?」

眼を開けて最初に見たのは白兎だった。おとぎ話にそのまま出てきそうで、もしかしたらおとぎ話の世界に
行ってしまったのかとか、考えてしまう。

「僕は白兎(ホワイトラビット)制作者はうさ夫なんて名前を付けたけどね」

「……一体、何が?」

混乱していた。あれから気絶してしまい、記憶が途切れ途切れになっている。記憶を取り戻そうとした時
別の重大なことに気付いた。自分の手を見る。白くて細い手と言われていたが、それが余計に細くなっていた。
それどころか小さくなっている。

「まずは君だけど、あれから一週間寝ていたんだ。一週間前のことは覚えてる?」

「実験……私、精神プログラムの実験台にされて……それから……」

記憶をたどる。
精神プログラムを移植されて、少しして、今日も調べる時だったのだが、突然目の前が暗くなった。
それから一時的に気がついた時には、白い手は赤くなり、辺りには死体だらけだった。

「プログラムは成功したみたいだけど、身体に負荷がかかりすぎてて、このままだと危なかったから
悪いけど、身体を退化させたんだ。安定するまでね。二十歳ぐらいだったみたいだけど、今は十四才だよ」

「訳が分からなくなって、それから、私は……」

「潜在能力を確実に開花させるプログラムらしいけど、実験データーを制作者が見たら、無茶だ、だってさ」

その制作者が言うには無理さえしなければあんな惨事にはなっていなかっただろうと言っていたらしい。

「そう……」

「プログラムの方は危険そうな所は全部改良したって言っていたよ。制作者は」

「制作者?」

先ほどから出ている制作者という言葉。恐らくは白兎を作ったものだろう。その時、ドアが開いた。

「起きたか。事後処理を任されたんだが……」

入った来たのは金色の瞳の青年で、年齢は二十代前半に見えた。異様に輝く金色の瞳をしている。
聞いたことがあった。この組織では知らないものは居ない。誰でも一度は名前を聞いたことがあった。
暁……あるいはその瞳からゴールデン・アイズと呼ばれている。

「……ゴールデン・アイズ……」

「おかえり」

「主任は不在だったから良かったが……俺の知らない間にあんな実験がか」

「このところクラシックのコンサートに行っていたりして不在にしていたのは誰さ?」

「俺だな。一部の人間しか知らなかったみたいだし、データーもついでに貰ってきたが」

紙の束を持っていた。白兎と言い合いをしている暁を見て、少女になってしまった彼女はきょとんとしている。

「事後処理……私はどうなるの?」

「押しつけられたね」

白兎の言葉から察するに少女の運命は暁に知らない間にゆだねられたらしい。

「そうだな。俺は別に何でも良いんだが、お前はどうする。お前が決めろ」

「私、が?」

普通は……大抵は科学者が決めるものだ。少なくとも、実験台や被験者に関してはだ。
それなのに彼は自分に決定判断を任せたのだ。少女はもう一度自分の身体を見る。縮んでしまった身体。
移植されたプログラム。昔のこと、今のこと、様々なことが頭をよぎった。

「どうする?」

「……死ぬのは嫌」

「なら、好きにしろ」

投げやりに言っている。白兎は、そう言う性格なんだよ。この人、と言っていた。

「ところで、君の名前は――――――――――――で良いんだよね?」

「うん……でも……」

白兎に名前を呼ばれた少女は戸惑う。白兎が言ったのは自分の名前だったのだが、違うような気がした。
力を移植されたので強くなったとか、そのせいで生まれ変わったんだとか、そう言うのではなく、何かこう別の……。

「変えたかったら変えろ」

暁がさらりと言った。白兎は暁の性格を知っているのか、何も言わない。少女ははっきりと言った。

「……私は……コーラル・アクアマリン……コーラル。だから」


【Fin】


後十九分で日記を書かなければいけないと想いつつ、お題を書かないと
いけないけどとかネタが思い付いてとかで関連づけると
こんなのになりました(まて)意味不明ですが次の予定の話で
分かるかと(多分)

しかしこれ、オリジナルだよな……ほぼ。
まあ、作ったキャラはちゃんと生かそうと言うことで


 

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