FOW閑話シリーズ
九月が四月宅にやってきたら
作者 蓮華さん
| 【九月が四月宅にやってきたら】 「メ、メアリさん、大変です!!」 イギリス・ダッシュウッド家、この家の主、サー・ダッシュウッドの娘、リュレア・ダッシュウッドの側近である メアリ・サートナはメイドに呼ばれた。凛々しいメアリに対して、メイドは着ているメイド服を 少し着崩してメアリの方に走ってきた。よほどのことがあったのだろう。 「どうかしましたか?」 「それが、サー・ダッシュウッドにお客様で、すぐに逢わせろと」 「ダッシュウッド様に?どんな方々ですか?」 「……あの、銀髪の方と眼鏡の少女と……それと、ひまわりなんです」 メアリは虚を突かれたが、数秒してすぐに戻ると 「私が対応します。お茶を出しておいてください」 「解りました」 メイドが一礼する。 客に会う前に自分が使えている主、リュレアが居る部屋へと向かった。客に関しては朧気ながらに 見当が付いているのだが、リュレアに確かめた方が良いからだ。リュレアの部屋へと向かい、ドアをノックする。 「どうぞ」 「失礼します。リュレア様」 リュレアはと言うと猫数匹とそして愛犬である真っ白い犬、ティンダロスと一緒に遊んでいた。 三毛猫が一匹、ティンダロスの上に乗って昼寝をしている。その光景が微笑ましいと想ったがすぐに用件を伝えた。 「どうしたの?」 「……お客様です。ダッシュウッド様に」 「客……?」 「それが銀髪と眼鏡の少女とひまわりだそうで……」 メアリがメイドから言われたことを伝える。その時、猫と遊んでいたリュレアの表情が凍り付いた。 「すぐに行く……でも、何て?」 「……暦関係でしょうが……」 「うん……九月の長月さんとその秘書みたいな中尾さんとひまわり」 リュレアは立ち上がると、ティンダロスに猫の面倒を見るように言う。リュレアの命令に忠実なティンダロスは 了承した。すぐにクローゼットから洋服を取り出すと、猫の毛や犬の毛が着いた洋服から真新しい服に 着替え、待たせている応接間へと向かった。 「本当に……ひまわりが……」 応接間に入ったメアリが呟いたのは無理もない。テーブルの上ではひまわりがクッキーを食べていたりしたからだ。 「こんにちは。九月様、中尾さん」 「こうして話すのは始めてかもしれませんね。そちらは」 「メアリ・サートナ、リュレア様の側近をしています」 「そうですか。こちらは、中尾さんです」 九月、とリュレアは言った。このダッシュウッド家が密かに力を貸しているテロ組織、暦。この家の主である サー・ダッシュウッドは四月であり、リュレアは四月十九日だ。十二人委員会が月を名乗ることが出来る。 彼女が……と見るが、どうみてもリュレアと同じ年にしか見えない。異様に輝くルビーアイに 黒い髪を三つ編みにした少女、これが九月……と、リュレアの話を昔聞いたが、九月は兵器開発が得意らしい。 そして銀髪で色黒の青年。遊んでいるひまわりとメアリは少し眩暈がした。 「ところで、用件は何でしょうか……?あの人は居ませんが」 「引き取った孤児の皆様の所へ行っています」 長いテーブルの端と端にリュレアと真紀が座っている。中尾とメアリは側に立っていた。 ダッシュウッドは孤児を引き取っていて、今日はその人たちに会いに行っている。リュレアとしては別に興味もなかったが。 「そうですか。折り入って頼みがあったのですが」 「……頼み、とは?」 「予算を少し回して欲しくて、ちょうど、完成した遊園地の視察にきたついでに頼みに来たので」 真紀は九月としての顔の他に遊園地の社長としての顔も持っていた。サンフラワーランドだっただろうか。 テロで親を亡くした子供や孤児などは無料で入れる遊園地だった。 「どれぐらい?」 「これぐらい」 真紀が紙を出し、それをひまわりが運んでいった。ノリ的には茶運び人形だ。手紙運びひまわりと言うべきだろう。 リュレアはメモを見て、しばらく考えて聞く。 「何に使うの……?」 「ロマンです」 「じゃあ良いや」 「リュ、リュレア様!!」 側で紙を覗き込んだメアリがリュレアに訴える。紙に書かれていた予算は高いものだった。ユーロで書かれていたものの ドルや円に換算して一般人に見せたら驚くぐらいである。背中に太陽を背負っているようにはっきりと言った真紀だったが その解答ではメアリ的に納得は出来ない。しかしリュレアは納得した。 「別に、アイツの金だし」 流れる風のように言う。置いてある小切手帳に書いたりなどして小切手を使えるようにする。 こんなこともあろうかと父親の筆跡をリュレアはそっくりそのまま真似出来た。リュレアとしては最低限生活出来る お金があればいいのだろう。それを小切手運びひまわりに持たせる。 「ありがとうございます」 「ロマンのために頑張ってください」 「それとちょうど良い機会と言うことで屋敷内を見ても?」 「……良いですよ……広いですが」 イギリスでも、いや、世界でも指折りの大富豪であるダッシュウッド家、リュレアはとりあえず案内していた。 貴族の屋敷とはこれだと見本に出してもおかしくないこの屋敷は沢山の部屋数と整った庭などが特徴だ。 「お聞きしたいのですが、本当にダッシュウッド様と同等の立場なのですか?彼女は?」 後ろを歩きながらメアリが中尾に聞いてみる。 「そうだが」 「……色々ですね……貴方は何故彼女に仕えているのですか?」 「真紀様を護ることが私の指名だ」 「奇遇ですね。私もリュレア様を護ることが私の指名です」 後ろで会話をしている側近二人。肝心の真紀とリュレアはと言うと、薔薇園を見ていた。色々な種類の薔薇が 丁寧に手入れをされて咲いている。 「リュレア様、そちらの方は?」 「アイツの知り合い。こっちはエイフラム・リサティ、庭師」 「よろしく」 薔薇にシャワー付きのホースで水をあげていたのは薄い金髪の二十代前半の青年だ。エイフラム・リサティ、 リュレアの側近である。元々はリュレアが住んでいる離れの屋敷だけの植物を手入れしていたのだが その腕を見込まれて今はダッシュウッド家全体の庭の手入れをしている。 「この庭は貴方が手入れしているのですね」 「最近は人手が足りなくて、猫の手も借りたいけど」 「ふむ、では、これを貴方に差し上げましょう。植えれば人手ではありませんが、作業員が出てきます」 エイフラムに真紀が渡したのは小さな袋の包みだった。エイフラムはそれをエプロンのポケットにしまう。 「ありがとう」 「この庭は本当に丹誠と愛情が込められていますね。好きですよ。私は」 真紀が言った時、携帯電話が鳴った。中尾の携帯電話らしく、中尾が出てしばらく会話をしている。 「真紀様、速く帰ってこいと」 「はぁ……またヴァイスハウプトですか……解りました。すみませんが私たちはそろそろおいとまします」 「さようなら……九月様」 「今度来る時はもう少し庭を探索していますよ」 「そろそろ良い薔薇が咲くからね」 「お車を用意しましょうか?」 メアリが言うと真紀は首を横に振り 「それより、少々広い場所はありませんか?」 広い場所……と言われてメアリが選んだのは旧宅を壊して出来た芝生だった。ゴルフの一ホール並みの広さがある。 何か音がしてメアリとエイフラムとリュレアは音のする方向を見ると、メアリは本日二度目で凍り付き エイフラムはきょとんとして、リュレアは無言だった。 そこに飛んできたのは、巨大ロボットだった。定義的にはモビルスーツでも良いかも知れない。 そうとしか言えなかった。アニメなどで出てくる特撮物だと最後の方では巨大怪人と闘うアレだ。 赤い巨大ロボット、レイファーガ、真紀が作っているものだ。真紀と中尾が手に乗る。 「それでは、お父上にもよろしく言っておいてください」 「伝えておくよ」 「行きましょう。レイッッファーガッッッ!!」 真紀が叫ぶ。レイファーガは飛んでいった。それをリュレアとメアリとエイフラムは見送る。 「………あ、あれは……一体……」 レイファーガが来てから喋らなかったメアリがようやく口を開いた。レイファーガと呼ばれたものは 青空を飛んでいき、飛んでいき……回って……落ちた。 「……九月様が作ってるレイファーガ……」 「いえ。そう言う意味では……」 メアリは頭痛がしてきた。 後日、ダッシュウッドがもの凄い剣幕でリュレアの方に来たが、リュレアは無視してドアを閉めて応戦、 口喧嘩のようなものが始まった。久しぶりの口喧嘩だったのだが、メアリにはそれ以上に気がかりなことがあった。 「ばらー」 「薔薇がバラバラー」 「……これはどうにかなりませんか?」 足下のひまわりを見ながら、メアリが僅かな殺気のこもった声で言う。エイフラムも足下のひまわりに 視線を落とした。 「役に立つよ。これ」 真紀が渡したのはひまわりこと、サン・ファーガの種だった。エイフラムが植えてみたところサン・フラワーが 出てきて、今はこうしてエイフラムの手伝いをしてくれている。細々としたダッシュウッド家の用事も してくれるようになった。 「そう言う問題ではありません……」 メアリが言うと、庭に大声と物が投げられる音がした。 【Fin】 夢路を聞きながら書き サム零の中ボスの一人ではなく、COCCOのクムイウタという アルバムからですが……どうして、どうしてこんなのが出来ちゃったの? (バロックのアリス風、誰もわからんだろうが) COCCOと言えば暗めの歌が多いのに。ギャグっぽいですね。 エイフラムの名の由来は知ってる人は知っていると想います もしもこれで死んじゃったらごめんなさい。 今回の主役は実はメアリかもしれません。真紀と長尾さんブームだったので 宣伝ですが私が書く話は出来るだけ設定を知らなくても読めるように なってますので…知っていた方が面白いですが 小説の感想とか聞かせて貰うと嬉しいです それでは |