FOW閑話シリーズ
「散らすには惜しき華々」

作者 エルさん

ボクは、ひまわり。
いつも太陽を見てる。
天高く昇る太陽を見てる。
暖かな光に恋い焦がれる。
だから、ボクはいつも彼女を見てる。

力強きコスモス。
大地の精霊。
根を張り嵐を克服し花を咲かせるコスモス。
厳しくもたくましき生き方。
豪腕の花。

薔薇は気高く美しい。
薔薇には棘がある。
だけど、棘の無い薔薇に何の魅力がある?
惹かれる想いを棘で突き刺す。
だから、薔薇は美しい。

神父さまは教会の庭に咲く白百合を見ながら言った。
神は万人を平等に愛してる。
だけど、神父さま。
それは誰も愛して無いってことじゃないんですか?
神の左に座しているのは慈愛の天使。
左手の白百合を右手の剣で血に染める死の天使。

暖かい桃の花。
元気の溢れる桃の花。
頬を染めて彼女は恋いしい人を抱き締めた。
彼は逃げ出そうとするが彼女はギュッと力を込めた。
ギュッと。
彼の頬も桃色に染まった。

霞草。
彼女想いは届かない。
彼の滾る炎に燃やされる。
燻る灰に焦がされる。
真心を託して贈る花。
男は決して答えはしない。
なぜなら、他を引き立たせるのが霞草。
二人の距離は縮まらない。

迷いに迷ってチューリップ。
誰に答えを送るべき?
それは自分が知っている。
私の進む道は何処?
ホントは、すでに決まってる。
純粋過ぎてチューリップ。
つぼみの自分を変えなきゃ始まらない。

あの極寒の夜。
彼女が手にしたのは夢見る魔法のマッチではなかった。
情熱のカーネーション。
清らか過ぎて危ない慕情。
この迸る情熱伝えたい。
他の花を枯らしてでも。
どんなことだってできる。
あの御方に私のカーネーションが届くまで。

彼女は紫陽花。
嫁入り時に天の涙。
決して留まらない色彩。
儚い移り気。
誰とも理解しあえない孤独な魔性。
どれが本物?
すべて偽者?

振るう刀は牡丹の心。
勝者は勝者しか相手にしねえ。
これじゃケンカにならねえよ。
あんたら、ちょいと弱過ぎだ。
あたしの牡丹を散らせるヤツはいないのかい!

彼女は泣いた。
そして笑った彼岸花。
どうしてあなたは逝ってしまったの?
涼やかな瞳の奥の悼みの心。
彼岸の花は哀しみ隠して颯爽と。
煙草吹かして酒を飲む。

目が冷めた。
頭痛がする。
窓を開けた。
風が吹き込む。
日が眩しい。
外を見た。
朝顔が咲いていた。
少し頭痛が和らいだ。

春が来た。
菜の花咲いて春が来た。
ほんわかあったか黄色の翼。
風になびいて、菜の花がざわめく。
彼女は想う、空高く。
何処までも、天高く。
きっと、はばたく。
絶対はばたく。
あの大空を。


 

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