FOW閑話シリーズ
警察24時すぺしゃる

作者 エルさん

 警察。
 市民の生活を危険から守る誇り高き職業。

「おら〜! 緋龍! もっと飲めやぁぁ!」
「うげえっ、もう勘弁してくださいッス!」
「そうはいかねえ。これは署の伝統だ! 通過儀礼だ! 新人は先輩に従え!」
「ううっ、わかったッスよ。んんぐっ…ぷはぁぁ!」
「いよぉ〜し! 良い飲みっぷりだ! それでこそ警察官の鏡だ!」
「ほんがらげ〜ッス!」

 警察。
 国民の血税を身に注ぎ、魂を正義に燃やす熱き職業。

「おっ、何してんだ、緋龍?」
「た、ただのメールッスよ」
「メールだぁ? 近頃の若いヤツは何かと言っちゃあ、メールメールってよぉ」
「うぐッス」
「飲み会の時までメールか呆れるぜ〜」
「ダメ出しされても、楽しいものは楽しいッスよ」
「ちょっと、見せてみろ」
「だ、ダメッス!?」
「先輩の命令が聞けないってのかぁ?」
「ううっ、わ、わかったッスよ」
「うお!? 何だ、画面のこの可愛い娘は? 緋龍の妹か?」
「妹はいないッスよ。いても、妹の写真なんか壁紙にしないッスよ」
「するってぇと、まさか…」
「彼女ッス」
「ぬわんだとおおおおおおおお!?」
「そんなに驚かれても困るッス」
「大学の後輩かぁ? 清純そうな顔してお主もやり手じゃの〜!」
「後輩じゃないッス。雪ぴょんは高校生ッス」
「何ぃ!? 高校生だとお!? 未成年じゃねえか!? 
 不純異性行為だ! 許さん! 逮捕だ、逮捕! 逮捕じゃぁぁぁぁ!」

 警察。
 眠ることなく街を見続ける守人。
 
「おい、緋龍」
「何ッスか?」
「せっかくの署の飲み会だ」
「すでに飲み会と言うより地獄絵図ッスけど」
「うるさい。これこそ署のあるべき姿なのだ!」
「す、すみませんッス」
「よし、緋龍」
「はいッス?」
「とりあえず、女装しろ」
「へっ?」
「女装しろ! おまえは可愛い! 絶対に似合う!」
「イヤッスよ!? お断りッス!!」
「ダメだ。もっと場を盛り上げろ」
「これ以上盛り上げてどうするッス!?」
「皆さ〜ん、これから緋龍が女装して『モーニング娘。』歌いますよ〜?」
「って、皆に大声で知らせてるッス!?」

「おお〜! 待ってました〜!」
「おおっ、新人恒例女装カラオケだな!」
「きゃ〜! 緋龍くんの女装みたいわ〜!」
「矢口やれ、矢口ー!」
「課長の趣味は矢口か。メモメモ…」
「うふっ、緋龍くん、がんばってね!」

「うぐっ、これじゃあ、逃げるに逃げられないッス…」
「はっはっはっ、観念するんだな、緋龍。高校生の彼女なんて作るのが悪い」
「それは関係ないじゃないッスか」
「そうだ、おまえの女装、携帯で写真撮って彼女に送ってやろう」
「うぐあああああああっ、それは勘弁してくださいッス!?」

 警察。
 彼らのおかげで今夜も街は平和を保っているのだ。


 

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