FOW閑話シリーズ
入院風景

作者 以津真天さん

嗚呼・・・・

キリキリキリ・・・・・!!

嗚呼・・・・
感謝感激。胃は痛いけれど感謝感激・・

キリキリキリキリ・・・・・!!!

公然と、合法的に休める最大の出来事は何か?
プロトはよおーっく知っていた。

「センクス、胃潰瘍。センクス、リヴィーナ嬢・・(怖かったけど)」

今、プロトはこのように堂々と入院している。
そして、堂々と――――

「ポン。」
「そう来たかァ・・」
「イカサマするなよォー!」
「あー胃が痛い、胃が痛い。」

白いベッドの上でヒマワリ人間たちと麻雀をしている。


「・・・ってか、ほんっとーに胃潰瘍なの?」
「胃潰瘍だ。とんでもなくじつは痛い。」

ひまわりの疑問は至極、最もだった。
体の半分以上が機械で、なおかつ病気の「び」の字も知らないほど丈夫なプロトにとって、
胃潰瘍というストレス性の病は天国の門のように遠いものだと思われていた。

「それで一日お世話していただけで胃が痛くなるって・・変なんじゃないの?」
「その原因は半分以上お前らにあるって知ってたか?」

あの、頭の上で咲いていたヤツを取る時どれだけ怖かったか・・・
思いだしただけでも身震いがした。

「それに、オレはよく体の部分部分を壊すからな、
 病院もじつは慣れっこだ。」

「そうだったねえ・・・・」
ひまわりの一人がしみじみとした目(どこにあるんだ)をした。
「この前は腕一個なくしたんだっけ?」

●一例
ゴミ処分中に、

左腕がいつの間にか焼却炉に落ちていた。


「・・・あれはびっくりした・・・漫画読もうと左手出したらなかったんだ・・」
「ってか、普通、気付くでしょう。」
「あとで見に行ったらでろでっろに溶けちゃってて・・・」

「一発ツモ。」
「あ―――!イカサマだ――!!」
「シャーラップ!!」


●二例目
偽造パスポートを造っていたら、

旧式のローラー印刷機に右腕が飲み込まれていた。


「あれも驚いたよなあ・・ぺっちゃんこで・・」
「ちょっと前に俳句好きなひまわりが潰されてたっけ・・」


●三例目
低空飛行しようとしたら背中ののスラスターが詰まっていて、
しかたなく勢いよく出したら、

スラスターパックだけ飛んでいった。(自分は落ちた。)


「すごく高くまで飛んで行っちゃたけど、結局あれはどこに行ったの?」
「海に落ちたらしい。」


「ドラドラ。」
「お前のほうこそぜったいイカサマだ――!!」
「そーだ、そーだ!」
「おれがゲームを面白くしてやったのにー!!!」
「きこえなーい♪」

と、まあ、わりかしプロトは自分の体を丁寧に扱っていない。
けど、いつもは極力注意しているつもりである。
つもり・・・だよ?つもり・・

プロトは、牌を一個持って、ぴしゃりと置いた。
それから、少しづつコーヒーを飲む。
「・・うまい・・」
ジョンブルの贅沢なんてこんなものだと言いながら、
あの親父が同じことをしていたと気付き、カップを置いた。

そろそろ9月嬢が来るパターンである。
さて、今日はどんな風に来るのかなどと考えつつ、牌をプロトは並び替え始めた。

ふと、窓を見ると、


何か金属質な角が見えた。
横でひまわりたちがプロトの牌を盗み見しようとしている。

ぐぐぐぐっと角が上に上がる。
そういえばここは五階である。

ごごごごごっと分かりやすく巨大ロボットの顔がせり上がってくる。
さすがにガラスと壁が震え始め、ひまわりたちも窓のほうを向いた。

ずずずずずずずずっとロボットの胸部と開かれたハッチが更にせりあがり、
そのコクピットには・・・・


「9月嬢・・・」
「お見舞いにきま
言い終わる前にガラスがバーニアで震えて全部割れた。


   終


 

図書館に戻る