FOW閑話シリーズ
サイボーグ七転び

作者 以津真天さん

※これはとにかく冗談です。


●一転び目

早朝。ねむい。まぶたが一tぐらいにプロトは感じる。
だが、これから仕事だ。おまけに爆弾作りだ。
手先が狂ったりしたらマズイであろう。
とにかく至る所をうろつき眠気覚ましを探す。
「お、コーラ。」
三つ目に寝ぼけ眼で入った宿直室に、二リットルボトルのコーラがあった。
炭酸のすさまじいのど越しで少しは目も冴えるかもしれない。

元気に腰に手を当てて―・・・・グビ・・

「んがっ・・・!?・・・」


数時間後。ひまわりが二人部屋に入った。
「おーい、誰か醤油使ったか?半分ぐらい無いんだが。」
「いや、しらないけど。それよりはやくカップメン真紀様のところに持ってこ。」
「そだね。」


●ニ転び目

「ガルベット。」
「なんでしょお、5月殿。」
緊張感の『き』の字も無い態度に、『炎を運ぶ』レシェフ氏はすこし頭を痛める。
が、すぐさま気を取り直し、
「先日、議長から回された書類だが・・」
「ええ。」
「これの今年の数値に横に去年の物も付け加えておけ。」
「はい、了解。」
書類を受け取り、プロトはせっせかと筆記用具を取りに駆け出した。
だが、すぐに振り向いて言った。

「二週間待っていただきませんか?」
「何故だ。」
「いや・・そうすれば今年の数値が去年の数値になりー・・」

「ふざけるのは感心しないが。」
「いえ、マジメに。」
5月も呆れたが本当に、プロトの目はマジだった。
・・・・・まあ、その後たっぷりどやされたが。


十二月のある日のお話し。


●三転び目

『じゃあ、あれですかプロトさん。』
「・・・・・はい。」
9月嬢とプロトは、電話で遠距離通話をしていた。
現在、プロトのほうはどこかの大都会にいる。任務中、なのだが・・

『今日中に任務を終わらせないとマズイんですが・・・終わりそうに無いと。』
「ちょっと手間かかってまして・・・どーしましょお?」

『しばらく待ってください、ちょっと内線繋ぎます。』
「あい。」

プルルル・・・プルルル・・・

『私だ。』
「議長、こんばんわ。長月です。」
『おや、どうしたね。』
「いえ、じつはですねえ・・・・・・・」

「プロトさんが車にはねられまして。」
『な゛っ』

『十二時間できました。さあ、働いてください。』
「なにしたんですか?」


●四転び目

さて今日の任務は、
「これの試運転・・・かよ。」
「そーそー。」
プロトの目の前に、いかにもという雰囲気のレイよりは小さいロボットが立っていた。
人間チックな頭部。9のエンブレムと、随分趣味的なデザインである。
「9月嬢は?」
アシスタントに来てくれたひまわりに聞いた。
「真紀様は今日はお仕事。悔しがってたけど。」
「あーそー・・・」

とりあえず、おもむろに乗り込んで、
「よおし、走ってみるぞ。」
「ファイトー。」

数十分後。
今にも果てそうな操縦席のプロトに、ひまわりが口を開けた。
「・・・・・・・だいじょぶかー。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どしたー?」
「グブッ・・・・!」
「わ・わ・わーーー!!こ、ここでは吐くなよ!」


「いやあ・・・すばらしい・・乗り心地・・も、ほんとに天にも昇りそう・・・・ウップ・・・」
「うっひゃー・・・」
その後、居住性と乗り心地はちゃんと改善されたそうだ。

「ところでサイボーグって乗り物酔いするの?」
「ほっとけ。」


●五転び目

珍しく、あの、あのガルベットが熱心に仕事の資料漁りをしているのを見て、
リヴィーナ嬢は感嘆した。

嗚呼ようやくこの年がら年中無気力なこの男もようやく・・!
「暦の一員である自覚を持ってきた・・・」
勤務中にサボって麻雀してたり、漫画読んでいたりしていた男が・・!

感激ついでに、まともな仕事をしている人間には、
協力してやろうというのが人情である。
リヴィーナは、「なにをさがしているのですか?」
と、じつに丁寧に尋ねた。

「いやあ・・・・この前ここに置いといた漫画が見つからなくて・・」


・・・・その後、何がどうなったかは、ご想像にお任せしたい。うん。


●六転び目

「ぎちょー。午前のお茶です。」
「うむ、そこにおいておいてくれ。」
「あい。」
白老のブランキ氏の本職は大学講師である。
暇にかまけては論文を書いているが、そういうときはプロトがコーヒーかお茶を出す。
ちなみに、どちらが出てくるかはプロトの気まぐれで決まる。

「おや、茶柱が立っている。」
今日は緑茶だったらしい。
「なにか幸運な事でもあるのだろうか・・・・」
「ほおジャパナイズですなあ。」
議長は、しわに埋もれかけた目を細めた。
それから、また論文に取り掛かった。

午後。

「ぎちょー、お茶です。」
「うむ。」
今度も緑茶だった。
相当あまっているのであろうか。などと思いつつ、議長は湯飲みに眼を向けた。
「おや、また茶柱が立っている。」
それを聞いてプロトは、
「ほほお。午前の予感、あたりましたねえ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・こういうものなのか?」
「こういうものでしょう。」


多分違う。


●七転び目


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ。」

「どしたん。珍しく元気ないじゃないトルーパー。」

「・・・・・・・・・・・ちょっとなあ・・・」

「どしたんよ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・腹へってて。」

「お約束かよ。」



サイボーグ七転び END


 

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