スーパーロボット大戦赤
スノーマウンテン
第5話
BF団……それは世界征服を策謀する秘密結社である。
「全ては、我らのビック・ファイアのために」
BF団は『ビックファイア』と呼ばれる存在を首領と崇めており、連邦軍ともジオン軍とも違う独自の技術によるロボ兵器を操り、テロや破壊行為に勤しむのである。
重要な作戦などは、策士諸葛孔明がビック・ファイアの意思を汲み取り、指示を出すと言われている。
下級構成員などは素顔を晒すことを禁じられているため、身体全体がすっぽり隠せるタイツで身を隠している。逆に言えば、顔が分かるのは幹部クラスであるということである。
「早くサイコガンダムMk=2を収容しろ。
ティターンズこそが、連邦軍を指導するに足りる存在であると無能な上層部に教えねばならん」
「ガディ艦長、緊急入電です!」
「何だ?」
「BF団が……BF団が現れたそうです!」
「貴様……テロリストごときで慌てるな。
我らの目的はサイコガンダムMk=2をグリーンノアまで運ぶことだ。
下らなぬ報告を入れる間があったら、収納を急がせろ」
「それが……相手は一人です! 十傑集が現れたんです!」
十傑集。
……BF団がただのテロリストなどであれば、重要視はされなかった。
実際、覆面をつけた下級構成員ごときならば、連邦軍でもジオン軍でも十分に対処可能であった。
だが……、恐ろしいのは幹部クラスの人間……特に『十傑集』と呼ばれる最高幹部である。
「だ、ダメです! 抑え切れません! MS隊が全滅です!」
「な、なんだと!
く……早くサイコガンダムMk=2を収容して、戦線を離脱するのだ!」
十傑集の実力は生身でモビルスーツを撃破してしまう戦闘力を秘めている。
ジオンと連邦の抗争の最中、十傑集が一人現れ、戦況が変わってしまったことさえあったという。
「手伝ってやろうか?」
「!?」
「ただし、真っ二つだぞ」
こんな噂がある。
連邦軍所属『ティターンズ』が、極秘に開発してた巨大MSがあったという。
それを、風のように現れたBF団十傑集の一人が『指パッチン』で真っ二つにしてしまったのだという。
「馬鹿な……ティターンズ最新技術を投入して完成させたサイコガンダムMk=2が……指先一つで……真っ二つだと……。
そんな……そんな馬鹿な!!」
勿論、ただの噂である。
だが、彼らならばそれをやれる実力を秘めている。
それが……BF団である。
「なるほど、BF団が絡んでいたか……厄介だ」
ノリスは深刻そうにうなづく。
「でも、原因が分かったんでしょう? なら、それを破壊すれば良いじゃないですか」
「どうやってですかぁ?」
「どうやってって……それは……」
ゲイナーの発言に、フィオがのほほんとした声で返す。
思わず口ごもってしまった。
フィオの発言には緊張感は無いが、苦い現実を詰め込んでいた。
破壊すればそれで終わりかもしれないが、目的の兵器の位置を知らない。
そもそも、嵐で足止めを喰らいここに滞在しているのだ。移動手段が無いに等しい。
何よりこの吹雪に、ワルモン博士がミノフスキー粒子と呼ばれる電磁無効化粒子を含ませていた。
レーダー等で発見するのは絶望的である。
ついでに言えば、吹き飛んできたツインビーも兵器の位置を見失っていた。
『どうやって、兵器を発見するのか』
『どうやって、兵器の場所まで移動するのか』
『どうやって、兵器を破壊するのか』
少なくとも、前者二つは非常に難しい。
前者二つが難しいならば、必然的に三つ目はさらに難しくなる。
「我輩、あの兵器の位置なら分かるぞ」
ポツリと呟くワルモン博士の言葉に、辺りが一瞬の沈黙に覆われた。
「本当ですかぁ?」
「分かるんですか!?」
「分かるのか! ワルモン博士!」
フィオ、ゲイナー、ライトが思わず詰め寄る。
あまりの勢いにワルモン博士は身を引いてしまったが、すぐさま体勢を整える。
何故か無意味にポージングをつけてマントをひるがえし、ニヤリを笑みを浮かべた。
「我輩を誰だと思っている! 世界一の天ッ才ッ科学者ぁ! ワ〜ルモン博士だぞ!
そのぐらい、知っておるわい!」
「じゃあ、ワルモン博士、教えて欲しいビー!」
「ことわ〜る!」
ツインビーの申し出を速攻で却下するワルモン博士。
腕組をすると、プイっと顔を背けてしまった。
「だーれが、貴様らなんぞに教えるか!」
「おいおいおいおいおい、そんなこと言わずに教えてくれよ、ワルモン博士!」
「断ると言ったら、断る! 我輩はお前らに教えることなんぞ何一つないわい!」
どこか駄々っ子の雰囲気を漂わせつつ、頑なに拒否するワルモン博士。
「あーあ、ワルモン博士、へそ曲げちゃったよ」
「手に負えんな……」
ライトは困ったといった風に頭を抱えた。
ノリスも呆れ果てたように溜息を吐いた。
と、それまで黙っていた光が、ワルモン博士に近づく。
表情は固い、しかし決意に満ちた瞳が真っ直ぐワルモン博士を見つめていた。
「あの……ワルモン博士」
「な、なんじゃい」
思わず身構えるワルモン博士。
「私は、どうしても助けたい人がいる……どうしても戻らないといけない場所があるんだ。
だから……どうしても……吹雪を止める必要があるんだ」
東京から突然この場所に飛ばされた光。
東京に戻るためにも、まずはこの吹雪を止めなければならないのである。
どうやって東京まで戻るのか?
それは分からない。
だが、何もしないままでは永遠に帰れない!
「だから、ワルモン博士、教えてくれ! この吹雪を発生させているロボットの場所を!
この通りだ!!」
光は深々と頭を下げた。勢いに三つ編みが空中で寸劇を踊る。
その場にいた誰もが息を潜め、ことの成り行きを見守っていた。
ワルモン博士は少しの間、顔をふせ思案していたようであった。
だが、すぐに光の方へと向く。
「おい、小娘。教えてやらんことも無い」
「本当か!」
勢い良く顔を上げる光の視界に、チッチッチ……と指を振るワルモン博士の姿が映った。
「ただーし、条件があるぞ!」
「条件?」
「そうだ!」
言うや否。ワルモン博士はずずぃと顔を光に近づけた。
何故かキラリと光る片眼鏡が不気味であった。
「お前の声は、あの憎き小娘にそっくりでな!
そこで!」
マントをバサリとひるがえすと、光の鼻先にピシリと指を止める。
「『ワルモン博士〜☆ 貴方を世界一の天才科学者と認めます〜☆』! と言えば教えてやろう!」
場を重い沈黙が支配した。
しかも。
どちらかというと『痛い』意味で。
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