雨の日の出会い

〜第2話〜

 雨はふり続いている。このままでは、野宿だろう。気がつくと、二人とも口を閉ざしていた。
「あの……」
 ややあって、エリスが口を開いた。
「わたし、あなたを雨除けにしちゃってるけど……迷惑……かな」
『別に迷惑ではない。どちらにしろ動けない』
「動けない……?」
『深刻な意味はない』
 絶句するエリスに、『鎧』は返事を返し……そして食事の内容を尋ねるかのように、軽く付け加えた。
『単に燃料がなくなっただけだ。分かりやすくいうと、『腹が減って動けない』だ』
「とても深刻じゃないか!」
 おもわず怒鳴ると、エリスは自分の荷物の中にすぐさま手を入れた。
「ちょっと雨に濡れちゃったけど……パンとジャーキーがあるから、これで……」
『固形物は摂取できない。私は油で動いているが……』
「油? 油ならあるよ! 確か、保存食の動物油があったはず……!」
 一生懸命に油を探しているエリスを『鎧』は眺めた。
『なぜ君は、つい先程あったばかりの私に、そこまでの努力ができるのだ?』
 エリスは手を止め、『鎧』の方に振り向いた。
「目の前の人を助けたいと思う気持ちに、どうして理由がいるんだ? 助けたいからでは、いけないのか?」
 『鎧』は答えられなかった。エリスはまた油を探すてめ、袋の中をかき回しはじめた。
「あった! 動物油だから寒さで固まっちゃってるけど……」
『……ありがとう』
 てれた声が、『鎧』から届く。
「ところでどうやって油を食べる?」
『背骨と腰骨の間に、私の体にはキャップのようなものがある。キャップをはずすと穴があるから、そこへ入れてくれ』
「……? うん、よくわかんないけど、とにかくやってみるよ」
 といって、エリスは油袋とスプーンをもって『鎧』の後ろに回りはじめた。
 焚き火の明かりに慣れてしまい、『鎧』の真後ろは深い暗闇だった。ただ、エリスはさほど怖いとは思わなかった。すぐそばに、『鎧』がいるのだから。
「そういえば、まだお互い名前言ってなかったね。わたしはエリスっていうんだ」
『以前、私を大切にしてくれた人は、私のことをグァテマラと呼んでいた』
「ガ、テマラ?」
『その人が好きなコーヒーの名前らしい』
「そうなんだ」
 エリスは素直に納得した。
 視界の悪い『鎧』の……グァテマラの背中で、彼女は手探りで移動する。途中、木々や雨水が肌や下着を引っ掻いたが、ようやくそれらしきものに、たどり着いた。
「この変なでっぱりで、いいの?」
『ああ、それを時計回りにまわしてくれ』
「時計?」
『……右にまわしてほしい』
「うん、わかった」
 いわれた通りにまわすと、確かに小さく深い穴が姿ほみせた。そこにエリスはスプーンで、固まった動物油をいれはじめる。
「ところで、グァテマラはなんでここにいたの?」
『人を探している』
「人? もしかして、グァテマラを大切にしていたっていう人のこと?」
『そう。……私は、掘り出される前、単なる戦の道具として使われていた』


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