スーパーロボット大戦
スノーマウンテン

第3話


 連邦軍の宇宙用MA『ボール』に似ていた。
 人間がぎりぎり一人乗れる丸い胴体、目玉のような窓……それだけを汲み取れば、まさにボールだ。
 だが、鮮やかな青で彩られたボディは美しいまでの球状を保ちつつも、何故かロケットのような推進剤が背中についており、ひょっこりと付いているオマケような手足で歩いているさまは、ボールとは明らかに異質な存在であった。
 何より違うのは、口がついていて『喋る』のである。

「やあ、初めましてだビー。オイラはツインビーって言うビー。
 アンタたち、何やってんだビー?」

 にこやかに言う丸いロボット……ツインビーに対して、奇妙な沈黙が洞窟内部に流れた。
 光はどう反応して良いのか分からないといった様子であったし、フィオは何故か直ぐに警戒を解き、ノリスはまったく警戒を解いていない。
 ゲイナーはというと最初は腰を抜かしていたようだが、ツインビーの姿を見て脱力し、すぐさま立ち直り激しい言葉を投げかけた。

「って、あなたは一体、何なんですか!?」
「何って、オイラはツインビーだビー」
「いや、そうじゃなくて!」
「ツインビーって名前は聞いたことがありますぅ」

 フィオが口を挟んだ。
 ゲイナーとツインビーの視線がフィオに向けられる。

「確か……南国にある『どんぶり島』という島を守っているロボットが、ツインビーだと聞き及んでいますぅ。
 連邦軍にもジオン軍にも所属しない、独自の技術で作られているロボットだとか」

 フィオがそう説明すると、突然ツインビーの目玉のような窓がパカッと開いた。
 そして、ツインビーの中から一人の少年が飛び出してきた。
 青のTシャツに白のオーバーオールと手袋をし、鉢巻をした髪はボサボサ……というかツンツンと尖った感じだ。

「はっはっは。聞いたか、ツインビー。俺たちの名前って、こっちでも有名じゃないか!」

 少年が嬉しげに喋る。

「俺、ライト。どんぶり島を守る正義のヒーローさ!
 で、こいつがツインビー」
「よろしくだビー」
「なるほど……どんぶり島か」

 警戒を解いたのか、ノリスは銃をしまい、自然体に座っている。

「ジオン軍の戦略図から大きく外れるため、後回しにされている地域だったな」

 思わずずっこけるライト。

「そ、そりゃないよ、オッサン……」
「わ〜はははは、所詮、お前の知名度などその程度!」

 やり取りに乱入するかのごとく、老人がツインビーの中から現れた。
 片メガネに白いタキシードとマントを着こなし、背中をピシリと伸ばした姿は歳を感じさせないほど躍動感に溢れていた。

「ふーふふふ! 所詮、お前なんぞ、井戸の中の蛙! 恐るるに足りんわ!」
「その蛙に毎回負けているのは誰だビー?」
「ドッキ――ン。おのれ、気にしていることを!」
「あの……貴方は?」

 突然、奇妙に騒がしくなった現状の中で、光が声をかけた。
 老人はニヤリと笑うと、光の方に身体ごと向ける。

「我輩か? 我輩はなあ!」

 妙に格好つけてマントをひるがえす老人。

「我輩こそ! この地球を代表する! 世界一の天ッ才ッ科学者ァ!
 ワ〜ルモン博士であるぞ!!」
「知りません、そんな人」

 冷静に言い放ったのはゲイナー。
 思わずずっこける老人ことワルモン博士。

「小僧――――!! 世界一の科学者を前にして、知らぬとは何事だ――――!」
「知らないものは知らないんですから、しょうがないでしょう!
 大体あなた、そんないい歳して世界一とか言っていて、恥ずかしくいないんですか!?」
「うお、小僧ぁ! 言うにことかいて、そーゆーこと言うかー!」
「それで」

 決して大きくない、低くしかし冷徹な声が、口論を即座に萎縮させた。
 ノリスは呆れるのでなく状況を楽しむのでなく、ただ冷淡であった。
 その静かな迫力に、ゲイナーもワルモン博士もたじろいだ。

「そのどんぶり島のヒーローと、世界一の天才科学者とやらが、何ゆえこんなところにいる?」


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