REPTILE2
(終)
| 【〈ヘブンズヒル(ガイア)15日〉 USAトゥディ】 ロイター通信によると、ガイア共和国ヘブンズヒル、ゴライアス・ガーデンを14日、不審な男が襲撃し、警備員数名に重軽傷を負わせた。死亡者はなし。ガイア共和国大統領補佐官キルマー・バレンタインの声明によると、男は白人で、正面玄関からライフルを持って侵入し、「大統領はどこだ」と叫びながらゴードン大統領のいる最上階を目指していたという。男は12階で警備員の銃撃を受けて負傷し、逃走。現在もまだ捕まっていない。警察では日本でハイジャック事件を起こしたテロ組織による犯行とみて捜査をすすめている。明日、ゴードン大統領は記者団の前で会見する。 【事件後、ゴードン大統領の記者会見より】 「たいへん愚かな行為だと思っている。私の政治に不満があるのならば、力で意見するというのではなく、平和的に言論を通して言ってもらいたい。必要とあらば、私は直接話し合える機会を用意するつもりだ」 【事件当時、都庁舎の警備にあたっていたコリー・エントラジアンの証言】 「真っ暗な影が廊下をスーッと通り過ぎたんです。武器を持っているかどうかまでは分かりませんでした。男か女さえ、あやふやなんです。それくらいはっきりしない、影のような奴でした」 【事件後回収された警備員の無線機の会話を収めたテープより】 『こちら1階玄関、侵入者を確認。繰り返す。侵入者を確認』 『影?黒い服を着た白人だ』 『黒いコートだ。黒いコート』 『通過した』 『動きが速い。何人かやられた』 『こちら二階。グラス兄弟が倒されました』 『逃げろ。危険だ』 『応答しろ。場所が分かるか?もういないぞ』 『緊急配備を!』 【事件当日、現場に居合わせた事務員(匿名希望)の証言】 「ライフルですって?そんなもの持ってなかったですよ。素手ですよ、素手。素手だけで警備員たち全部やっつけちゃったんですよ。誰も信じてくれないですけどね、神に誓って本当です」 【事件当日、付近を歩いていた市民の証言】 「もう深夜だったけどよ、空からガラスが降ってきたんだ。そりゃ驚いたよ。高さ?さあな、だいぶ高いところから降ってきたんじゃねえのか?すげえ勢いで地面にばらまかれてたぜ。ひょっとすると、その侵入者ってのは窓から飛び降りたんじゃねえのかな。ま、そうなると生きちゃいねえだろうけどな」 【ガイア政府バレンタイン大統領補佐官のコメント】 「大統領は事件当夜、最上階で新法に関する意見の交換を私としておりました。もしあの夜、何かの拍子で階下へ降りていたらと思うと、ぞっとしますね」 【ゴライアス・ガーデンの壁に描かれた落書き】 「愚かなやつはだいとうりょう。自分のためならくにでも奪う」 【事件に関するアメリカ大統領のコメント】 「たいへん痛ましい事件だ。我々合衆国国民は事件の早期解決と今後こういった事態が起こらないことを願っている。また、この件に関して我々はCIAやFBIの力を捜査力を提供するつもりだ」 【アメリカ下院議員ロバート・プライスの議会演説】 「そろそろ国民は気づくべきなのです。我々の脅威は中東のテログループやアジアの大企業などではなく、発展しつづける小さな先進国であることを」 【シカゴトリビューン紙】 イリノイ州警察は19日、酒の密輸などを行っていたマフィア組織の長テッド・ダバルコの身柄を拘束した。バダルコは現在部分的に記憶喪失の状況にあり、取調は困難を極めているという。関係者によると、バダルコは18日深夜、一人の黒人男性とともに、上の空の状態で自ら出頭してきたという。同伴していた男性も記憶がはっきり定まったおらず、警察では二人が何らかの事件に巻き込まれ、記憶障害を起こす薬を打たれた可能性があるとして捜査を進めている。 【ニューヨーク市警による情報提供の呼びかけ】 「我々、ニューヨーク市警では次の人々の行方を追っています。 彼らの情報をお持ちの方は、本署までご連絡下さい。 (中略) No.128:グレイヴィ・マリンヴィル CIAに勤務。先月、外国へ行くと夫人に告げたのを最後に消息を絶つ。 海外への渡航は個人的なものらしく、CIAは業務との関連性を否定。 家族は夫人のシエナ・マリンヴィル、放送局に勤める息子のチャールズ・マリンヴィル。 【ラバンダを訪れた観光旅行者の話】 「ラバンダって、昔来たときはまだ自然がたくさん残ってたんだけどなあ。今じゃ水を飲むことすら遠慮しちゃいましたよ。一体いつからこうなったんだろう。来年ですか?もちろん行きませんよ、ハワイにしときます」 【あるアメリカンジョーク】 政治家御一行のバスがとつぜん道からそれて、木に激突してしまった。これを目撃した農夫は、様子を調べにいった。そして、穴を掘り、政治家たちを埋葬した。数日後、保安官がやってきて、大破したバスを見てから農夫に質問をした。「彼らはひとり残らず皆死んでいたのですか?」農夫は答えた。「何人かはまだ生きとる言ってたけど、政治家の言うことは信用ならねえからね」 【ジェームズ・バートン著 『埋もれゆく歴史』(37ページ)】 「例えばケネディ暗殺などの例が示すように、巨大権力が関わった事件の真相は闇の中に葬られやすい性質を含んでいる。本書の著者の意見ではゴライアス・ガーデン襲撃事件に関しても同じことがいえるものと考えている」 【マーティン・ヴァーヴィンスキー著 『Why can GOrDon be GoD ? (なぜゴードンは神に成り得たか)』(178ページ)】 「それゆえに、ゴライアス・ゴードンの政治能力はこれまでの歴代アメリカ合衆国大統領を遙かに凌ぐものであると断言できる。彼の指導力がこの先に示すものは明白である。私が本書のはじめに述べたように、現在アメリカが座っている椅子にガイアが座ることになるのだ。私ははっきりと言っておきたい。アメリカ国民が恐れるべきは、今やロシアや日本ではない。ガイア共和国のゴライアス・ゴードン個人なのである。」 【事件後、自殺した警備員の遺書(CIAが保存。最重要機密に認定。2050年に一般公開を予定】 「私が見たのはライフルを持った男ではなく、一匹の、人間の姿をした爬虫類なのだ。家族に誓って告白する。私はたしかに見た。あの事件の真犯人はラバンダのテロ組織などではなく、一匹の爬虫類なのだ」 【U2 / Staring at the sun】 誰もまだ妥協というものをしない/軍隊はまだ街にいる/鎧で覆われたスーツとネクタイ/パパはどうしてもさよならと言わない/審判は笛を吹かない/神様はすばらしいけど/耳を傾けてくれるだろうか |
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