エバは行く

〜エピローグ2〜


私の名前は河野鰊(こうの・にしん)。45歳。サラリィマンだ。

トレンチコートに帽子に丸眼鏡が似合うナイスガイだ。
これから飛行機が着陸したので降りる準備をしているところだ。
これから私の新たなるビジネスが始まるのだ。
世界を駆け巡るエリィトビジネスマンだからね。ガンバルよ、私は。
今回の飛行機の旅はなかなか快適だった。
なんといってもね、機内食がおいしかった。
エコノミーだったにもかかわらず、けっこういいのが出たんだよ。
ロブスタァて言うのかな?ザリガニの親分みたいなやつ。
一匹まるごと皿にのせてあって、クリームシチューみたいなのがかけてあってね、
どうやって食べたらいいのかって悩んじゃったよ。
だってあの装甲だよ。フォークとかじゃビクともしないし。
しかしそこはこの私、さりげなく周りの人がどう食べるのか偵察する事にしたんだ。
まずは隣のイカツいオネエサン。薄茶色のサングラスかけた、迷彩ズボンのオネエサンね。
まずは両のハサミをちぎって取ったんだ。なるほど。

でもその後すぐ頭からサクサク食っちゃった。ダメだこりゃ。

「食い方なんてどうでもいいだろ」とか言ってたよ。
まぁその通りなんだけど。別にここは高級レストランじゃないんだし。
でも私にはマネできないよ。そこまで強靭な歯もってないし。
で、他の人のも見た。だいたいの人が手でハサミや背の甲を外して食べてた。
どうやらロブスタァに関してはフォークとかでなくて手で食べてもいいみたいだ。
あとハムをのせたメロンもすごくおいしかった。ハムがね、すごくコクがあったんだよ。

あとはずっとスポーツ新聞を読んだり備え付けのヘッドホンで音楽を聴いたり
していた。横のオネエサンも至っておとなしかった。

というか寝入ってたよ。グッスリと。まるで今のうちに休むだけ休んどけとばかりに。

そしてそれは今も続いている。
他の客はちらほらと手荷物を持って降り始めている。
しかし彼女は相変わらずグッスリと寝入ってしまっている。
これは‥‥‥やはり起こした方がいいのかな?
しかし無理に眠りを妨げてまたパンチとか喰らわされたらイヤだしなぁ。
「アル‥‥‥イリ‥‥ア‥‥‥‥‥‥」
寝言?‥‥‥家族の名前だろうか?
さっきは気が立ってたとか言ってたけど、その寝顔はすごく穏やかだったんだ。
ふむ‥‥‥

きっと、とてもいい夢をみているのだろう。私はそっとしておく事にした。

私は搭乗口に向かった。彼女はきっと係員とかが起こしてくれるだろう。
さぁ、お仕事ガンバルとするか。愛する家族の為に、ね。


 


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