父の肖像


ぼくのダディ。
ぼくのお父さんは、へいたいさんです。
へいたいさんで、えらくてつよいへいたいさんです。
ぼくも、いつかお父さんみたいなへいたいさんになりたいとおもいます。
けれど、へいたいさんがなにをする人なのか、ぼくはしりません。

「・・・・・・・・・・古い夢を見たもんだ。」
飛行機の中で、プロトは目覚めた。
今は防護スーツはトランクに詰めており、プロトはスーツ姿だ。
プロトの朝は早い。だが、夜がない月の皆様方よりはましである。
椅子についていた鏡をだして、自分の顔を見る。
ひどい面だ。
そして、あまり嬉しくない日だ。休暇なのに。
この前の後始末で手に入れた休暇なのに。

飛行機に乗って、プロトは英国へ向かっている。
休暇といってもこれはほとんど仕事だ。
暦で身寄りがある人間とかは、定期的にその身寄りに行って、
親類縁者を安心させなければならない。
音沙汰無しだと怪しまれてしまうからだ。
たいがいの連中は皆、嬉しそうに故郷に旅立っていく。
まあ、そういう連中は少ないが。
だが、プロトのムナクソは悪かった。
久々の故郷なのに、最低な気分、なにより、あの父に会うのがいやだ。
「兵隊さんか・・」

プロト・・・・いや、本名ジョーン・ガルベットの父親は、
軍人である。
それもただの軍人じゃない、名高いSASの少佐様だ。
もう、かなり年をくっているはずだが、実戦にはいつも出ている。
プロトは、その父親が嫌いだ。大嫌いだ。
二月のように苦手なのではない。嫌いなのだ。
突然、気の抜けたナレーションが聞こえてきた。
「アテンションプリーズ、アテンションプリーズ。
 当機はまもなく・・・・」
その声を、プロトは苦虫を百万匹ほど噛み潰した顔で聞いていた。
とうとう、きてしまった!

「はあ・・・国連の平和維持軍・・ですか?それで休暇に?」
「え、ええ。そうなんです。似合いませんが。」
でっちあげた無茶苦茶な経歴と、偽造パスポートを渡して、
難なくプロトは英国入りした。
空港のロビーに下りて、すぐさま気付いた。
・・・・・・いるな。いるぞ。あいつらだ。
ひょいひょいっとロビーを横切って、プロトは一つの花瓶の前に行った。
その花瓶には、数本のひまわりが入っていた。
「ばればれだって。」
「あ!気付いてた?」
「さっすが、トルーパー!」
「あったまいい!」
それは、無論、ひまわり人間たちだった。


 


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