父の肖像


「委員会があ?オレを見張ってる?」
「そうそう。」
「誰だかはしらないけどさ。」
「念のためだって。」
夜行列車の中で、プロトは花束に扮したひまわり共と会話していた。
「幹部の、それも一番すごい戦闘員クラスの人間が見張ってるんだ。」
「なんでオレなんか・・」
「だって、お前やる気0じゃん。」
「いや、それは関係ないだろ。」
「どっちにしろ、どっかで月が見張ってるんだってさ。」
まあ、ありがたいことだね。と、少なからずプロトは思った。
月がいれば、百人力だ。
「ところでさあ・・」
「ん?」
ひまわりの一人(いや、一体か?)が言った。
「お前の素顔って、微妙な。」
「ほっとけ。」

本当は、プロトには、もっと休暇中の予定があったのである。
ところが、彼は里帰りという(一応)仕事を、
怠っていたため、特別休暇を利用してこんなことをする羽目になった。
いやはやだ。
とにかく、プロトとひまわり共を乗せて、暗闇の中を、
夜行列車は進む。
「・・・・・ところで、お前らはどうしてここにいるんだ?」
「気にしない、気にしない。」

列車から降りて、駅を出て、ひまわりの花束を持ったプロトは、
早速、家・・・ではなく、父親の勤める軍事基地に向かった。
「軍事基地?家は?」
「ああ、あの人はめったなことじゃ家には帰らんからな。
 きっと職場にいるだろう。仕事の虫なのさ。」
「「「「ふーん。」」」
道中、プロトは必死でまず父親にどう話を切り出そうか悩んでいた。
なんせ、五年ぶりなのだ。
自分の境遇とか、そういうのをまったく考えていなかった。
「・・・・困った。」
「ほんとに。」
なぜか、ひまわりが反応した。
「なんで、お前が困るんだ。」
「だって、軍事基地に歩いてしゃべるひまわりが出たとあったら、
 大騒ぎじゃないか。どうしようか。」
「考えてなかったな。」
「どうしようか。」
「っく・・・・」
こいつらは・・・・・・・・

「少佐!ガルベット少佐!」
訓練室へ下士官が飛び込んだ。
瞬間、数十発の銃声が響いて、彼から数メートルほど離れた所にある、
プレートが無数の穴を開けてはじけとんだ。
「なにかね、ウィリアム君。」
当の発砲したご本人は、特に何も感じておらず、
あんだけの銃声でよくもまあ聞き取れた部下の言葉に、
冷静に対応していた。ちなみに、手にはサブマシンガン。
「お・・・お・・お・・」
今ので、実戦経験もない下士官はかなりビビってしまったご様子。
「お?」
「ご子息がお見えになりました・・」
「!?」
老兵、バーナード・ガルベット少佐の顔色が、一瞬に赤くなった。
「つきましては・・・・・」
部下の言葉も聴かず、少佐はいつもの部屋、応接室に向かった。
いつも冷静な彼が、珍しく興奮していたので、
下士官は首をかしげるばかりだった。

「国連の平和維持軍の方ですか。どうぞ、お入りください。」
重厚なフェンスの扉が駆動音と土煙をたてて開き、
プロトはその中に足を踏み入れた。
もう、後戻りはできなくなってしまった。
しかし、もう一つ思った。・・・・・ひまわり共、ごめん。

「おぼえてろよ・・・・!」
と、呟く数体のひまわりたちは、土に半分うずめられて、
完全に普通のひまわりと化していた。
「おぼえてろよ・・・・・・・・・・・・!!!」


 


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