8×8の勝負


【8×8の勝負】

こんにちは、前置きを任されることになったツヴァイ・セルトラックです。
この話はFvsNと言う一種のクロスオーバーをベースにした話になっています。
世界観や時間軸が違っている人たちが一つの世界で生きていると言うことですね。矛盾点などは作者なりになおしてあり、選手以外の人たちも出ていますがこれも一応話を面白くするためと言うことにしておいてください。
なお、これはパラレルワールドでありIfだと言うことも言っておきます。
最後にキャラを貸してくださった皆様、作者に変わって感謝を……
別の話を借りに書くことになってもこの前置きはかわら……

「長いんだよ。お前」

隊長……いきなり阿修羅を振りかざさないでください。この手の奴は最初に説明を入れておかないと駄目なんですよ。
では、よろしければお楽しみください。ツヴァイ・セルトラックでした。

「……言っておくがお前の出番はここで終わりらしいぞ」

……終わり、なんですか……



「何をしているの?」

ドアを開けることもなく入ってきた少年は、コンピューターの画面を見入っている少女に声をかけた。
窓から入ったわけでもない。ブラインドがかかっているし、それに飛び降りれば余裕で死ぬような場所にこの部屋はあった。
入ってきたのは黒のウィンドブレーカーを着た黒髪に金色と赤色の眼をした少年だ。
部屋には電気が点けられているが薄暗い。

「ドアぐらい開けて入ってください」

「驚かせようと想ったんだけど、誰もいないし」

「出かけていますから」

完結に答えたのは亜麻色の髪を三つ編みにした紫色の瞳をしている少女だ。少年が画面を覗き込む。

「……チェス?」

頷くとマウスを操作して画面上の駒を動かした。彼女、アイン・ファルトがチェスが得意なことぐらいゼクス・エスメンスは解っていた。全員でチェスをした場合、彼女が一番強いのだ。……チェスが出来る人間が少ないというのも現状だが。

「私が管理しているんですけどね」

「へぇ、君がそんなことをするなんて以外だな」

本当に意外そうにゼクスは画面上を見た。アインがパソコンが得意なことぐらい知っているのだが、まさかオンラインゲームの管理人をしているとは想わなかった。オンラインのゲームらしく様々な種類があった。
アインが言うには前の管理人が続けられなくなり管理を募集していたのでやってみることにしたらしい。

「色々と経験するのも悪くない気がしたので」

「変わったね。前だったら知識だけなら沢山持っていたのに」

「……嫌みですね」

話しながらもマウスを操作して、白い駒を動かしていく。やがて、チェックメイトと言うことになりアインが勝った。

「ごめんごめん。ところでさ……何の勝負を見ていたの?」

「なかなか面白い勝負をして居るんですよ。どちらも勝ったことはありませんが」

「何それ?勝ち負けとかがないの?」

「用があるとかで途中で止まることが多いんですよ」

ゼクスが画面を覗き込むと、白と黒のせめぎ合いが行われていた。チェスなんてたしなみ程度にしかしていないゼクスだが良い勝負をしていると言うことが解る。

「どっちかと相手をしたことはあるの」

「黒とは勝負をしたことがありますが、ステイルメイトに」

「ステイルメイト……引き分けだね……」

アインと良い勝負をするなんて言うのは滅多にいない。ステイルメイトとはキングがどうしても動けなくなってしまったときの事を言う。その時のことを考えたのが悔しそうにしていた。あそこでこう動かしていればなどと脳内でシミュレーション
しているのだろう。

「……今度はドローですか」

「僕にはこんな勝負出来そうにない。そうそう、ジーベンから預かってきたよ」

三回同じ局面が現れたので、この勝負はドローとなった。引き分けだ。ゼクスはウィンドブレーカーをあさると紙袋を取りだした。紙袋でそれを受け取ったアインの表情が機嫌の良いものになった。

「手に入れてくれたのですか」

「僕と同じ名前のバンドだったよね。好きなの?」

「………まあ、そう言うことです」

無言で取り出すと、それはライブビデオとCDアルバムだった。最近変わってきた同僚をゼクスは楽しそうに見ている。
良い変化だ。アインは大事そう机の足下に置くと、勝負を申し込んでいた。


「……暦(カレンダー)とニルヴァーナって知ってるか?」

「知ってる……フュンフはカレントとニューイングランドって間違えてた」

「どういうボケ解答をして居るんだよ……」

呆れながら同じビル内でお茶を飲んでいたのは、薄い水色の髪の毛と瞳をして黒猫を肩に停めている少女と日本人らしい黒髪黒目の青を基調にした服を着ていた青年だ。最初は一文字しか違っていないのだが後者なんて最初の文字しかあっていない。

「……私たちの敵…になるんだよね…ジーベン」

「そうなるな」

ジーベンと呼ばれた青年はティーカップで日本茶を飲んでいた。政府武力組織『ホーリーナイツ』暗躍するテロリストや
暗躍している者たちを排除するために作られた政府公認の武力組織だ。フィーア・ウィルリラは熱そうに
レモンティーを飲んでいる。『ホーリーナイツ』各番隊に別れていてフィーアとジーベンは同じ番隊に所属していた。
難儀そうに日本茶を飲んでいた。

「暦はテロ組織、なんだよね?」

「「エルサレム核攻撃未遂事件」と「アメリカ大統領白昼暗殺事件」と言えば解るか?」

「………解るよ……」

「政府を抹消しようとしている辺り、完全に敵だな」

政府の武力である『ホーリーナイツ』と世界の政府を消滅させるべく、日夜テロ活動を行っている暦とは陽と陰の如く敵対する。どちらも互いを消滅させるべく、犠牲を払っていた。現にこの前のテロ活動により他の番隊が半壊したとも聞いている。
思想が何であろうともテロ活動はテロ活動だというのがジーベンの持論だ。

「ニルヴァーナは……確か、人類を消そうとして居るんだよね」

「前にそこの部下を尋問して聞いたらそう言ってたからな」

「詳しいデーターは知らないけれど」

「闘うときになったら闘うだろう……」

ニルヴァーナ……涅槃とも呼べるこの組織は人類に終焉をもたらせるために作られた組織らしい。
もう少し詳しいデーターも調べようとすれば調べられるのだが、今は休んでいるときだ。何処か楽しそうにジーベンは言う。

「組織通しの敵対もあるんだよね」

「あるだろう。組織だからと言って思想が同じワケじゃない」

「ニルヴァーナと暦……みたいに?」

「もしかしたら世界の何処かで勝負をしているのかもな」

高層ビルの景色を見ながら、ジーベンは日本茶を最後まで飲み干した。


 


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