トリプル・ディザスター

・・エンディング・・


それから一時間前の事。
宇宙服を着込んだ特殊部隊員に追われて、葎とプロトは森の中を、
縦横無尽に逃げ回った。
あがる火柱、轟く銃声。
プロトの着ている装甲スーツは防弾性だからマダいいが、
葎の方はさすがに限界。
三人の宇宙服の猛追撃に、とうとう森の端っこに追い詰められた。
南無三・・・・!
「ぎゃあああああああああ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・?
悲鳴を上げたのは、二人ではなく、宇宙服たちだった。
三人の特殊部隊員は、葎が獲物をとる為に掘っておいた、
深い深い落とし穴に落ちたのだ。
「・・・・・」
「これは、」
「チャンスだな。」
念のため上から投石したが、どうも落ちた時点で気を失っていたようで、
悠々と宇宙服を奪うことができた。
二人は、宇宙服の中身を引っさげて、海岸に向かったのである。
だが、一人は落とし穴の中に取り残されているが。
「・・・・というわけなんでしゅ・・ぐ・・ぎ。」
息も絶え絶えに本当の宇宙服の中身は言った。
マルシュの顔がゆでだこの様に見る見るうちに真っ赤になった。
大統領に報告までしたのに・・・!
「貴方が、あのテロリスト二人を逃がした事になりますね。」
ロットが脈絡もなくマルシュに耳打ちした。
「結局、貴方が最後のディザスターになったわけだ。」
マルシュの顔からあらゆる液体が噴出し、白髭を震わせ、
眼は血走り、完全に鼻をへし折られた天狗と化した。
「やつらを今すぐに殺せエエ!」

「いやあ、こうまでうまくいくと何が何だか。」
プロトが思わずぼやいた。
「そうですね、でも、ま、これでようやく。」
モーターボートの中で、二人は息のあらん限りに叫んだ。
「帰れるんだ!」
プロトはジャミングを切っていた。突然、モーターボートに、
小型ミサイルが直撃した。
ボートはへし折れ、ガソリンが噴出し、二人は暗い海へと、
ふっとばされた。
「撃沈しました!」
「よおし!今度こそ状況終了だ!」
執念のマルシュが叫んだ。
「帰還するぞ!進路を本国に取れ!」
ロットは、ハンバーガーをほおばりながらそれを見ていた。
こんだけの損害を出して倒したのは、
テロリスト(ほんとは違うけど)を二人のみ。
どちらにしろ、責任の追及は免れないだろう。
「ま、僕の知った事じゃないか。」
そろそろ、秘書から「また勝手に外に出たな!」と、怒りの電話が、
かかってくるはずである。その前に、暦に請求しちまおう。
ロットは携帯を取り出した。

「う・・・がは・・」
プロトが気付いたとき、目に見えたのは、海に浮かぶ一面の・・
ひまわり。だった。
「どわあああああああああ!」
違う、ひまわり人間!
「おおっす。」
「久しぶりー。」
「どうあ、調子は。」
「そうじゃなくて、何しに来た貴様ら!」
ひまわり人間に抱きかかえられながら、プロトは叫んだ。
葎は、いまだに気絶中。あの爆発で二人ともかすり傷なし!
やっぱり丈夫らしい。
「いや、ドクターがね。遅いから迎えに行けって。」
「そしたらドンパチやっててよー。」
「そうそう。」
「いくら防水加工だからってきつかったよ、海上に一日は。」
「・・・・・」
釈然としない物はある。あるが。
「ま、いっか。
 とりあえず、この人はB国のbサンビーチに降ろしてやってくれ。」
「「「「「アイアイサー」」」」」
たっくさんのやる気のない返事を受けて、朝日の中を、
ひまわり人間いかだは行進していった。
「ところで、実験用の生き物は?」
「あ゛・・・・」
完全に忘れていた。

葎が気付いたとき、そこはあの砂浜であった。
なにやら変な感じがしたが、とりあえず、落し物置き場に行った。
あれを探しに。
すぐ見つかった。
葎は、とりあえずほっとして、そいつを背中にしょった。
ふと、ポケットをあさると、あの茸があった。
「・・・・夢じゃなかったのか。狂ってもいなかったのか。」
無性に、もう一回、プロトと酒が呑みたくなった。
ナップザックが震えた。
「はいはい。」
葎は、笑い茸を放り込んでやった。笑い声は聞こえなかったが、
必死にこらえている気配がした。
思わず、くすりと笑った。
それから、町に戻って、また人ごみの中に紛れていった。
彼の行方は知れない。


 


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