外伝 F・O・W
〜忘れ得ぬ光〜


プロローグ

作者 かみぃゆ


閃光――

次の瞬間。

扉は閉ざされた―。







最初に目覚めたのは、薄暗い廃墟だった。

まず最初に考えた事、それは

ここはどこか?

次に、

何故ここに居るのか?

そして、最後に疑問に思ったこと。


自分は誰なのか――――!?










外伝 F・O・W 〜忘れ得ぬ光〜 

              プロローグ 




あれからどれだけ放浪しているのか。
そんなことは大きな問題ではなかった。

ただ、そこに提示された疑問は、同じだった。
『自分は誰なのか?そして、この世界はなんなのか?何故、ここまで破壊されているのか?』
しかし、時間と共に破壊された街々は、残された人々の手によって逞しく復活していった。
自分も同じく、そんな人々の手助けをした(自分のすべきことが解らなかった為もあるが)。
最初は歓迎してくれていた人々だったが、次第に私の事をおかしな目で見るようになった。
そして、それは確信になってしまった。


「何故、この少女は歳をとらないのか―?」


街の人々は次第に私を避けるようになった。
なにか醜い物でも見るかのような眼で私を避けた。

そして、私は街を出た。

私に”時”という概念がきちんとあったなら、一体どのくらいの月日が経ったのだろう。
私が街に居たときに生まれた子が、出るときには私と同じくらいの外見になっていた。・・・少なくとも15年以上は経っているということだろう。

そういえば・・・、少し前に突如現れたあの巨大な”黒い扉”はどこへいったのだろう・・・?

好奇心も手伝い、扉に向かったのだが、結局辿り着く前に無くなってしまった。

いくつもの街や村を渡ってきた。
その度に好奇の目で見られ、また旅に出た。

その繰り返し。…繰り返し。

自分の正体の手掛りも大して見つからない。

歳を取らない自分の正体が解らない。

ただ、漠然とある記憶・・・いや、これは記憶というのだろうか?

これは、これは・・・否、「この男」は。

思い出せない。

…もしかしたら、”思い出したくない”のかも知れない。

閃光―。そして、崩壊。

閃光―。そして、崩壊。

閃光―。そして、…頭痛。


私は、新しい町に着く。
―また、繰り返すのか。

「ようこそ!my.cityへ!!」

背後から不意に声を掛けられた。
とびっきり陽気な声だった。

私は振り向かなかった―。

(どうせまた私を特別な眼で見るのだろう?)

「お、この後姿は、もしかしてかわい娘ちゃん!?」

随分、調子のいい男だ。

「じゃー、ちょいと歓迎ついでに俺の芸、見てもらおうかなっと、」

『ボゥ!!』

私の視界になにかが横切った。

・・・マント?

そして、上空から男が降り立った。重力に従ってマントが男より遅れて地面に吸い寄せられる。

「秘伝・ジェットドライブ!・・・ふふふ、もっと頑張れば”第4成田”まで飛べるかも・・・」

突然の出来事に眼を丸くした私に彼はこう言った。

「すごいっしょ?訳わかんねーけど生まれつき使えるんよ、このスーパーな力!」

掌から蒼い炎のような物を出す青年。

「居候にはあんまり他人に見せんなって言われてるんだけど・・・、でもま。ようこそ!第3成田へ!」

「あ、あぁ・・・。よろしく・・・」

「なんだよ辛気臭ぇなぁ!俺の名前は正義のヒーロー、陣!君は?」

「私?私は・・・」


私は自分の名を聞かれると必ず、頭の中でこの音がする・・・。

チリーン・・・

そして私は決まってこう名乗るのだ。




「私は・・・ベル。よ」








続く


 

第1話に続く
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