『光に浮かぶ翼』

第1夜「PEACE OF TIME〜平和の時」


平和っていいな と、最近まで感じたことはなかった。

イギリスという国に春がやってきた。
緑が繁り、花が芽を吹く、新しい季節。
そのどこかの木の上で、枝という枝に体を預けていた
小柄な少女が一人いた。
「平和っていいなぁ…」
葉と葉の間から太陽を見つめ、幸せそうに呟く。
名前はリリス。夢魔(サキュバス)、モリガンの魔力から
生まれいでたちいさな夢魔(サキュバス)である。
生まれた時こそ魔力は小さかったが、人間界の人間との
触れ合い、ダークストーカーとの闘いでその秘めたる力は
開眼し、ついにはこの世界を『救済』しようとした
冥王ジェダを倒すまでに至ったのだ。

あれから、約半年の月日が流れた。
平和は彼女の望み。
争いは彼女の嫌いなこと。
今の状態は、また彼女の望んでたこと。
「空が綺麗だなぁ…」
葉の隙間から青空に手をかざす。
流れ流れる雲以外、綺麗なことは変わらない。
それがわかると手を戻す。
「…あたしが生きてる間、この青空、この雲、この葉、
木、茂み…」
リリスは上から下に景色をなぞるように見渡した。

たしかに、
空はどこまでも青く、雲は止まることを知らず、
木や葉や茂みは自然を色採り、呼吸して生命を助けて…
助けあって…
「あたしが生きてる間じゃない。たとえ死ぬ時がきても、
その後にこの景色が続いてくれたら…」
そう呟く彼女の表情は寂しさがあった。
「ずっと続いてくれたらいいのに…」
リリスの微かな希望。
大切な場所(トコロ)を、大切にしたい。


それもいつまで続くのか。
            ☆
「う〜…お腹すいたよぉ…」
さっきの(といっても4時間位前)感じはどこへやら。
リリスはぐぅぐぅと鳴るお腹をおさえて街へ出かける。
ちなみに、金はどうやって稼いでいるのか不明だが、
悪いことは絶対にしてないらしい。

「はいよ。たい焼き2袋にメロン」
空腹でも頑張ってなんとか街について、店のおやじから
たい焼き2袋とメロンを買う。
ちなみに(普段から)人間の私服のうえ、頭と背中の羽根も
隠しているので正体はバレていない。
買い物に満足して、リリスは店を立ち去る。

歩きながら買ったたい焼きを頬張るリリス。
「はぐっ…う〜ん、やっぱりたい焼きは焼きたてが
いいな〜」
と、彼女の視線の先に何かが。
(…光?)
遠いところに光。


平和っていいな と、最近まで感じたことはなかった。
この言葉の意味が、濃さを増していく。




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