『光に浮かぶ翼』
第8夜「Go to〜記憶、そして行く場所」
傷ついても、カラダが痛くても、
もしここからカラダが消えても。
心があれば、闘えるよ。
☆
リリスの足は空を裂き、ザルゴスを真っ直ぐ裂く。
リリスの手は青を突き、ザルゴスの体を突く。
「…見事!」
ザルゴスも、さっきの何も抵抗のないときと違い、
少し体が動いた。
少しではあるが、奴は一歩後だけではあるが後ずさった。
「……ボクの…全てをぶつけてみせる!」
ボクの力を…
ボクの信じる心を……
この手からの…
光の魂を!!
左手から放たれる、一つの細長く、金色に光る強い光。
ソウルフラッシュ。
☆
「…ん…あれ?」
気がつくと、リリスはあの場所にいた。
あの寝ていた木の上に、もとあった服を着て
寝転がっていた。
受けたはずの傷もどこにもない。
「……夢……だったのかな…」
あの不吉な気配を感じて。
巨大なフォボスという人形と闘って…
そして…
あの存在が怖い感じの男のヒト…名前は…
あれは夢。
苦しみは泡となった。
……ううん
「……この傷…」
右手から腕にかけてついていた、大きい、
縦に筋が入った傷があった。
その真新しい傷をふと右手を顔の上に挙げて見る。
「………そうだ……ボク……」
抜け落ちていたあの記憶が、よみがえる。
ボクは……
★
「…私に動を与えたこと、誉めてやるぞ」
あのソウルフラッシュも、ザルゴスには通じなかった。
強く、暖かな光を持ったあれは、
……受け止められ、握り潰された。
「…………」
リリスはそのソウルフラッシュで完全に力を使い果たし、
力を発した場に倒れこむ。
もうなにをする力も残っていない。
「下種が」
一歩ずつリリスのもとに寄っていき、頭をグリグリと
踏みつけるザルゴス。
「…もう『痛い』とも言わなくなったとは…つまらぬな。
ならば、この場で黄泉に送ってやろう」
足で少女の頭を押さえたまま、笑う声とともに、
手を天にかざす。
「ふはははははは………」
笑いは止まらない。その時。
「むっ……」
ザルゴスの動きが止まった。
上を見て止まった。
壊れた岩棚の上を見て。
「……お前か……」
そこには人がいた。姿は遠すぎてはっきり見えない。
溜めていた力を止めて手を下ろすと、
ザルゴスはその人に向かって笑いが混じったように言う。
「何をしに来たかは解るぞ…いいだろう。この娘の命、
少し長引かせてやる。だがな…」
その次のセリフは冷たかった。
お前に私はどうにもできない…解ったら尻尾を巻いて
消え失せろ」
ザルゴスはそれだけ言うと、リリスから足をひき、
きびすを返してリリス、そしてあの人のもとを去った。
ボクは運ばれていた。
微かな記憶の中の雑踏で知ってる。
気がつくと、誰かの背中の上。
暖かい、ひろい、
でも、何かに似ていたあの背中。
でも気持ちがよかった。
それは、
ボクを優しく包んでくれる雲のようなベッドのような感じ
だったから。
「ザルゴス…そういえば…」
回想が終わって、リリスは考え付くことがあった。
些細なようで、とても気になる、
ほうっておけば自分が考えることだけで生きることを
終わりそうなほどに。
「ボクを運んでくれたあの人…なんか言ってたなぁ…」
『この子のケガもこれでなんとかできた……
……さて…日本に は に…行く… ろう …
……僕 … 』
リリスの記憶には、気になる部分という部分が欠けていた。
「…肝心なところが抜けてる気がするけど……
日本に何かあるんだね。きっと!」
そう思いつくや、彼女は颯爽と旅支度をし、
元のサキュバスの姿で木の真上に立って
飛ぶ準備を始める。
そして羽根が広がった。
「はっ!!」
風を切って空を飛んだ。
大地が小さくなっていく。
その左手には、着替えなどの生活用品がぎっしり入った
スポーツバッグを提げている。
そしてイギリスが見えなくなる直前、リリスは振り返り、
右手を振って元気な声をひと声。
「いってきまーす!!」
日本に会いたい人がいる。
ボクを助けてくれた人。
それを感じて、リリスは向かう。
島国、日本に。
FIN
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