KOFXXシリーズ
漆番隊
柔らかな傷痕・前編

作者 蓮華


【柔らかな傷痕】

その場所を見たものは少なからず吐き気を覚えたという。例え、戦場をくぐり抜けた兵士であっても
感情がない者でもその場所を見てしまえば、気持ち悪さを感じてしまうぐらいに荒れ果ててしまっていた。
床全てを埋め尽くしていそうな、紅色。
本来の床の色が少ししか見えない床の上に散らばっているのは腕だった。足もあったし、胴体もあった。
紅と人間のパーツで飾られた部屋に呆然と立っていたのは、一人の青年だった。
自分の血で赤いのではなく、返り血によって服は染まっていた。身体も両手も紅かった。
彼は振り返った。その手には、ナイフが握られていた。


「拘束するのだって精一杯だったのよ?」

政府武力組織『ホーリーナイツ』本部内にある牢獄、『ホーリーナイツ』に所属する者に対しては殆ど使われることはなかった。
牢獄に入るのは隊員でも隊長でも何かしろの罰則を犯した者たちだったのだ。牢獄にもランクが着けられているのだが、
上位の牢獄が使われたのは久しぶりのことだ。それほどまでの牢獄を使わなければ拘束することも出来ない相手、
面会に来る者も皆無だと思われていたのだが、面会者が居た。

「それぐらいの使い手だってことですね」

少しずれた解答を面会者は言った。それも確かにそうだったのだが、そんな事を言えるのは滅多にいない。
看守をしている少女は意外な解答を聞いて引いていた。本来は面会などはさせないのだが、出された書類が本物
だったために彼女も面会を許可するしかなかった。牢屋内を歩いていたが、牢屋の中身は空っぽと言っても良かった。
カードキーを手に持ち、少女はある部屋で立ち止まった。カードキーを通して、ドアを開けた。
使い終わったカードキーをウェストポーチの中に入れた。そして別のカードキーをとりだした。

「使い手も何も……ね……表沙汰にはしなかったけれど」

「知っていますよ」

「とんでもないことだったから」

次のドアに来ると少女はまた作業をしていた。大分厳重に造られていた。『ホーリーナイツ』の人間は大抵が
異能者だったり、何かしろの使い手だったりしていた。言い換えればそうでなければ『ホーリーナイツ』何てやっていけないのだ。

「本当に厳重に造られていますね。この場所は」

「異能者でも使い手でも、拘束されれば出られないわ」

投げやりのような言葉を少女は言った。少しだけ嫌そうな、声をしていた。しばらく歩いて、一つの部屋にたどり着いた。
ウェストポーチから鍵を取り出すと差し込んだ。ドアノブに手をかけた。

「一人で良いの?」

「構いません。悪い人じゃないみたいですし」

「……解ったわ」

「案内をしてくれてありがとうございます」

「終わったら呼んで。ここにいるから」

少女はドアノブを開けた。面会者はその部屋の中へと入った。
部屋の中は真っ白と言っていいぐらいに殆ど何もなかった。新築された部屋のようだった。
壁の一部が何かの上薬がかかったかのように違った色をしていた。椅子に座って黙って座っていたのは
琥珀色の髪をした青年で両手には手錠と両足には足枷がはまっていた。気配を感じて顔を上げた。

「カルバラックさん、ですよね?」

カルバラックと呼ばれた青年は肯定も否定もしなかった。面会者は茶色い髪をしたカルバラックよりも少し背の高い
青年だった。眼を閉じているが笑っているような表情をしていた。

「あの女は……裁きは決定していないと言っていたが」

掠れるような小声で、声を出すのが面倒と言った風にカルバラックは言った。

「処分に関しては難しいところでしたから」

難しい、カルバラックの処分に関しては少し時間がかかっていた。

「決定したんだな」

「そうなりますね。貴方が行ったのは隊長殺しですか」

様々な規則がある『ホーリーナイツ』だが、隊長殺しは重罪として扱われていた。どんな理由があったとしても重罪になるのだ。
『ホーリーナイツ』が出来てからと言うもの数えるほどしか隊長殺しというのはやられてはいない。
カルバラックは黙っていた。ただ、面会者の話を聞いているだけとなっていた。

「十六番隊は半壊状態になってますね。隊長が死にましたし、重要な隊員たちも死んでいますから」

「……処分は?」

「今から言います」

十六番隊はある事件により半壊状態となってしまった。隊長がカルバラックにより殺され、重要な隊員達も死んでしまったのだ。
隊としては半壊状態になってしまい、動かせない状況である。面会者がとりだしたのはフルートだった。
そのフルートが剣になった。それをカルバラックの頭上へと持っていった。カルバラックにそれを避ける気ははなかった。

「死刑…か」

覚悟はしていた。殺されるぐらいのことをしたのだ。避ける気はなかった。剣が、振られた。


 

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