氷の上に咲き誇る花


最終話〜走ろう!〜

作者 クラッシュさん


■あらすじ
室伏達は、不良との戦いに勝ったが、ホープをほっといて青島をかばった室伏はホープに叩かれてしまった。市川達との討論の末、室伏はホープを追いかける事となった。



室伏は燦々と輝く太陽の下を駆けていった。ホープは小さな川にかけられていた橋の上にいた。それを見ると、室伏の足が止まった。
「・・・」
彼は迷いがあったわけじゃない。しかし、叩かれた頬が急に痛くなった。耐久力だけが取り柄の室伏でも痛かったビンタ…、彼自身も驚きながら叩かれた頬に手をやった。
「痛ぇ…」
室伏が頬を撫でながら、ホープに寄っていくと。見慣れた不良グループがホープの方によって来ていた。さっきまで、闘っていた不良グループとは違う者達だが、室伏は走っていった。




「何よ!?あんた達!!」
「君さぁ、室伏の女だろ?」
「知ってるんだぜ?君とあの野郎があるいてた事。」
男達は嫌味ったらしくホープに話していた。
「どうだ?あんな、できの悪い男より俺の方がいい男だぜぇ?」
不良グループのリーダーらしい、男がホープにせまってきたが、当然ホープは…
「うるさいわね!!黙ってくれない?馬鹿は嫌いなの!」
などという風にホープは喧嘩腰で不良共と話していた。さっきまでの室伏に対する苛立ちのせいで、ホープは本気で怒っているが、ホープに闘う力など無かった。彼女は「草」を専門とする力を使うが彼女もまた室伏が「氷」を使うときのように「気」を使う。しかし、彼女の場合、室伏のように10年以上も特訓してきた訳ではないため、「気」を作り出すのに時間が掛かってしまう。そのため、室伏とのデートに必要ない「気」を作り出してはいなかった。

「この女、俺を馬鹿だとよ!君の彼氏はどうかなぁ?」

不良グループは笑っていた。

「馬鹿さ。正真正銘の大馬鹿さ。」

ホープは聞き慣れた声に、耳を澄ましたが、男達は声を聞いたとたん黙った。そして、室伏の顔に目立つ赤くなった手のひらのあとを見たあと、

「ん?よぅ!室伏さんよぉ。ナンパでもしてふられたかい?こんないい女いるのにナンパなんて嫌われちゃうぜ?」

男達はまた笑い始めた。

「・・・」

室伏は黙った。いつもの室伏ならここで拳が出るが、今の室伏は違った。
「おめーら、あほか?」
室伏にしては、小さな声だった。
「誰がだ?」
不良グループの中の一人が室伏の言葉を聞いて聞き返した。
「教えてやろうか?」
そう言う前に室伏の拳が、聞き返した男の腹にえぐり込んでいた。男が倒れるのを見ると室伏は、呟くように言った。
「あと4人、逃がさねぇーぞ。」
室伏は微笑んだ。楽しいわけではなかった。しかし、微笑んでしまった。
「調子に乗るんじゃねぇ!!!」
4人が一斉にかかってきた。
「よっ!っと」
4人の一斉攻撃をジャンプでよけて、ホープの方に跳んでいった。そして、室伏らしくもなくホープをかばうようにして、片手で抱き寄せた。
「ホープを人質にすりゃぁ、手を出せなかったのによ。まあ、人質にしなかった事は褒めてやる。正々堂々やりたいんだろ?」
ホープは顔を赤く染めていた。彼女は抱くのが慣れていても抱かれるのに慣れてはいないようだ。

「正々堂々?馬鹿め!テメエ相手に正々堂々やるかよ!」

また、そう言いながら男達は襲ってきた。
4人相手だが、しかし、室伏は負ける気がしなかった。

「言ってやろうか?テメエらみたいな雑魚、眼中にねぇ!!片手だけで十分勝てんだよ!!」

そう言うと室伏はホープを抱いたまま、男達を殴り飛ばしていた。
「…二人目!!!……三人目!!!…四人目!!!最後…?あっ!」
最後の男はさっきのリーダーらしき男だったが、室伏に恐れたのか逃げ出した。
「てめぇ逃げる気か!!?」
しかし、逃げ出した男の目の前に現れたのは例の3人組だった。
「う、うわぁ!!む、室伏軍団!?」
慌てて逃げた男は目の前に気づかなかったらしい。

プッツン!

何かが切れる音が…
「ヤロォ!!!誰が室伏軍団だぁ!!」
青島がキレて、男をを殴り始めた。
青島は名前で呼ばれることに期待していたらしく、無性に腹が立ったらしい…
「覚えとけぇ!!俺は、全国高校バレーNO1の男前の……」
長々説明しているが、すでに男は気絶している…
市川も木原も止めようともしない…
「邪魔な事したかな?」
木原は市川に意見を求めた。
「さあな…でも、関係ないんじゃないか?俺達なんて眼中にないさ。」
「それも、そっか…」
室伏はホープを離し、ホープの顔をおそるおそる見た。ホープは何も言わなかった。だが、室伏の叩かれて赤くなっていた頬に手を当てた。
「痛かったぜ?結構。」
ホープは微笑みながら言う。
「一体、誰にやられたの?」
「お前だよ。」
室伏も微笑んで答えた。ホープは室伏に抱きついた。そして、室伏の赤くなった頬にホープはそっと、キスをした。外国人としての、ごめんなさいの挨拶なのか、それとも……

木原「おい。」

市川「ねぇ。」

青島「ヲーイ。」

室伏は「はっ」と気が付いた。
「ち、ち、ち、ち、ち、ち、ち、ち、ちがう!!今のはぁ!!!ホ、ホープ!!逃げるぞぉ!!」
室伏はホープを抱えた。
「えっ!?どこへ!?」
ホープは驚いたようだが、また、微笑んだ。
「あいつらが追ってこない、あいつらに見えねぇ場所だよ!」
他の知らない人が聞けば、何とも怪しい言葉だが、本人にその気はない。

「室伏ぃ!!!何で逃げるんだぁ!!?待てぇ!!」

3人が追ってくる。

ホープは抱えながら、叫んだ。

「鬼さーんこちら!手の鳴るほうへ!」

室伏軍団の青春はこれから、また不良に襲われても大丈夫。

だって、、、、室伏軍団だから。




 完


 

第7話に戻る
図書館に戻る