時を駆ける青年


第十一話〜見えぬ影〜

作者 クラッシュさん


裕二「ふぁ〜…、んー……眠ぃ。」

大あくびをした裕二が朝日の光と共に家から出てきた。
前回の話から夜が明けた。現在、時間で言うと午前6時半である。

市川「もう、朝日が顔出してるんだ。朝の稽古だ。」
龍一「うー…でもぉ…」

龍一と裕二はあまり寝ていないのか、目の下にクマができている。おそらく彼らは、この時代の良いところを探そうとしているのだろう。当然、過去に来たのだから何かして帰りたいのだろう。市川は「伝説の剣豪」と闘いたいあまりにここに来たが、当然、今は手がかりはあるわけがない。

市川「テメエら、そんなんで「伝説の剣豪」に勝てると思ってんのか!?」
龍一「一戦を交えるのは市川さんだけでしょうが!!」
裕二「全くッスよ!」
市川「おまえらなー。サボり癖ついてんじゃないか?治してやる!こっちにこい!!」
龍一「えっ、市川さ…」

市川は二人の襟を掴んで広いところまで引きずると、あたりは雷雲に包まれ激しい光と音と共に悲鳴が上がった。

ゴロロロロ……ピッシャァーーーン!!!ドゴオオオォォォン!!

龍一&裕二「うわあああぁぁぁぁぁ!!!」
市川「ん〜!!痺れるねぇ!!朝の電撃は!」
龍一「あ…あう…し、しびれれ…たたぁ……」
裕二「は、はへぇ〜…」

こんなに激しい電撃を喰らってしゃべれる生身の人間はそういない、龍一や裕二は慣れてるのだろう。市川は一人興奮していると、ちょっとやりすぎたことに今さら気が付いた。市川の周辺の土は真っ黒になったり、大きな穴になったりしている。

市川「あー、いっけねぇー。やりすぎたかな。」

市川がそう言うと、龍一と裕二が立ち上がった。

龍一「すごいですね、相変わらず。」
市川「……。」

龍一がそういったあと、市川は無言になった。

裕二「市川さん?腹の調子でも崩したんッスカ?」
市川「しゃがめ!龍一!」
龍一「…えっ!!」

龍一が一歩下がった後、O.4秒ほど後に八方手裏剣が飛んできた。幸い、龍一は
頬に切り傷をしただけですんだ。しかし、伏せて居なかったら心臓に刺さっていたかもしれない。龍一は伏せた体を持ち上げるように立ち上がった。

裕二「ひ、ひえぇぇ!!龍一!大丈夫か!?」
龍一「あ、ああ!」
市川「誰だっ!?出てこい!!」

市川の叫びの後、あたりは静かになった、何も無かったかのように…
聞こえるのは風で動く木と葉が擦り合う音だけ……

市川「…後ろか?」
龍一「多分、後ろの木の上に、気配が……」
裕二「??ど、どこ?」

市川は耳を澄ましているが、「サァー…」と言う葉の音しか聞こえない。見えない「影」は、この音を利用して木から木へ動いているようだ。

龍一「そろそろ…やりませんか?」
市川「そうだな。」
裕二「ヘッ?何を?」

裕二の質問にも答えず、二人はエネルギーを溜め始めた。

市川「…うおおおおぉぉぉーーー!!!」
龍一「…はああぁぁぁぁぁーーー!!!」

市川「地雷電!!」
龍一「直伝!気投波!!」

ピッシャーーーーーン!!!!ゴオオオオォォォ!!!
ドゴオオオォォォン!!

二人の攻撃は一つの木に向かって放たれた。激しい衝撃によって地面が揺れた。
その揺れで、裕二は見事にひっくり返った。攻撃した木は跡形もなく、消えていた。

龍一「よ、よけた!!?」
市川「バカな!!あの一瞬で避けただとっ!?」
龍一「くっ…どこだ…!?どこに行ったんだ!?」
市川「…もう、居ねぇよ。」
裕二「そんなぁ、二人とも嘘いってるんだろ!?あんなの避けられるわけ無いって!!俺達が勝ったんだよ!!」

龍一は頬の傷口を撫でながら、吹き飛ばした木を見ていた。


続く


 

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