時を駆ける青年
第十話〜夕飯〜
作者 クラッシュさん
| 龍一と花憐が魚を獲り終えて、帰ってきていた時にはすでに日が沈んでいた。 花憐「ふぅ、ご苦労様です。」 龍一「いえ、これぐらいはしないと…」 市川「おぉ。帰ったか?」 龍一「あ、市川さん。裕二君は大丈夫ですか?」 市川「さあな。寝てるのか気絶してるのかが、さっぱりわからん。」 花憐「大丈夫でしょうか?」 龍一「大丈夫ですよ。裕二君はあれで結構、丈夫なんですよ。」 市川「ああ、それより飯にしようぜ!飯!」 花憐「あ、はい、すぐに用意します。」 龍一「俺も手伝います!市川さん、待っててください!」 市川「……待て、俺も手伝ってやるよ。」 市川は何故か焦っている。一人は寂しいらしい。それはついさっきまでも一人だったから十分わかっていた。裕二が一刻も早く目覚めて欲しいと思っているのは彼なのかもしれない。 龍一「何言ってるんですか、俺達に任せてください!」 花憐「はい、お任せください。」 市川「どうせ…俺なんて仲間外れですよぉだ…」 花憐「何か悪いこと言いましたか?」 龍一「大丈夫です、タフですから。」 龍一の言いぐさに市川は完全にすねていた。しかし、龍一も花憐も市川がすねているのに気づいていなかった。二人ともとにかく鈍いようだ。市川の事に見向きもせずに夕飯の支度にかかった…と言っても魚の鱗を落としたり、内蔵を取ったり、口に串を通したりするだけである。まあ、魚にとってはたまったものではないが、生きるために犠牲は必要だろう。 龍一「結構大変なんですね。内蔵取るのって…」 花憐「ええ、結構大変ですよ。」 龍一「ん、切れないぞ?よっと!あ、痛っ!」 花憐「へ!?大丈夫ですか?」 龍一「大丈夫です。傷は全然浅いですから。」 花憐「大変ですよぉ!血が!血が!」 裕二「うぅ…騒がしいなぁ。なんなんだぁ?」 花憐「今すぐ血を止めないと!」 龍一「だ、大丈夫ですって!唾つけておけば治りますって!」 裕二「あの…さ、龍一?」 花憐「唾ですか!?ちょっと待っていてください!」 龍一「えっ!!?」 裕二「ッ!?」 花憐は慌てて龍一の手を取り指を舐め始めた。龍一は何をすれば良いのかわからなかった。花憐は「ハッ」と我に帰った。 花憐「その、ごめんなさい。だ、大丈夫ですか?」 龍一「あ〜、いや、その、おかげさまで…」 裕二「龍一…おまえ…そうかそうか、うん、わかったよ。」 花憐「え?」 龍一「あ、裕二君!起きたんだね!?大丈夫?」 裕二「待て、龍一。その娘に何をしたか、詳しく聞きたいなぁ。」 龍一「え?いや、見てたの?」 裕二「あったりめーだ。」 花憐「すみません。私、血を見ると慌ててしまって…」 龍一「あ、いえ、本当、大丈夫でしたか?普通の慌てようじゃなかった見たいですけど。」 裕二「…おまえら出来てるのか?出来てるんだな!?」 龍一「な、何で怒ってるの!?裕二君!?」 裕二「おまえだけは「恋人」を作らないって約束したじゃないか!!」 龍一「そんな約束してないよぉ!!」 花憐「あの…」 裕二「はい?(ぉ、でも、結構可愛い。好みのタイプ。)」 花憐「別にあの、「恋人」なんて関係じゃないんですよ?」 裕二「そうだろうね。龍一だもんな。君みたいな可愛い娘落とせるはずがない。」 龍一「うっ…言い返せないのが悔しい……。」 市川「なあ、飯まだか?」 実は一部始終見ていたのはこの男。市川であるが、シカトされて、かなりむかついている。 花憐「あ、今から作ります。龍一さん、休んでいてください。」 龍一「はい…。」 龍一は裕二に睨まれながら、おそるおそる返事をした。 そして…夕食中。 花憐「あの、皆さんは何処から来たのですか?」 裕二「未来さ。」 花憐「未来?」 龍一「ちょっと裕二君!そんなこと言っていいの?」 市川「遠い遠い未来だよ。」 龍一「市川さんまで…」 市川「良いじゃねぇか、別に影響はしねぇよ。多分。」 龍一「まあ、そうですけど…」 裕二「花憐ちゃん?花憐ちゃん?好きな人とかいるぅ?」 花憐「いませんけど?」 裕二「本当かい?龍一!いないってさ!」 市川「(裕二って、女への絡み方が室伏みてぇだな。)」 龍一「裕二君!失礼だよ!しかも何で俺に回すの!?」 裕二「固いこと言うなって!龍一、俺があの娘落としちゃってもいいか?」 龍一「む!?だ、ダメだよ!」 裕二「怒るなよ。冗談だって!本気だけど。なんで怒るんだよ?」 龍一「え?怒った訳じゃないんだよ!うん!」 市川「龍一…哀れだな。」 龍一「もぉ、そんなんじゃないんですから。本当に。」 花憐「…???」 龍一も参っているようだ。しかし、こんな会話をしているのに花憐は全く気づいていないようだ。一体、どうなっていくのやら… 続く |