〜炎の城〜

22 「エピローグ」


長崎重臣(34才・独身)は目を覚ました。

窓の外を見やる。とっくに日は沈んでいた。
薄い月明かりがさしこむ中、見た時計は8時を指していた。
「もうこんな時間か‥‥‥ちと寝すぎたな」
今日はまる一日、寝ていた事になる。
「一応、キルマーんとこにでも顔出しておくか。
 報告しとかなきゃいけない事もあるしな‥‥‥」
起き上がって顔を洗い、電気カミソリで簡単にヒゲを剃った後、ジャケットをはおる。
「おっと、こいつを忘れちゃいけねえ!」
昨日入手したばかりの資料を入れた封筒を脇に抱えた。
郊外のマンションから車でヘブンズヒルへと向かった。

特に渋滞もなく、車はヘブンズヒルのショッピングエリアへとさしかかった。
きらびやかなネオン。歩道にはまだ人通りも多かった。
「腹減ったな‥‥‥」
途中、ファーストフードのドライブスルーへと寄る。
「へえ、今は野菜サラダも売ってるのか‥‥‥」
ハンバーガーとアイスコーヒー、そして野菜サラダを買った。
道沿いに車を止め、食事をとる。
「まずはサラダ食うか」
プラスチックの容器を開け、付属のドレッシングを注いだ後フタをしめ、
軽くシェイクする。
ほどよく混ざったところをフォークですくって食べた。
紫の菜が多くて少し苦かった。

車はヘブンズヒルの中枢、ゴライアス・ガーデンへとたどりついた。
専用の駐車場に車を預けた後、目の前のセントラルタワーを見上げる。
数々のネオンと、ライトで照らされるハイテクビルはまさに「電脳要塞」の
様相を呈していた。
「それにしても、『暦』か‥‥‥」

昨晩、長崎の元に資料と共に一通の連絡が来た。
テロ組織『暦』の幹部がガイア共和国に潜入してくるという報告だった。

長崎は一枚の写真を見た。
街中を歩く、1人の男の姿。
かなり遠くから撮影されたものらしく、かなり解像度は低かったが、
ターバンにダークスーツ姿、眼帯と顎ヒゲを生やした人相は判別できた。
「何が目的かは知らんが‥‥‥この俺の目の黒いうちは奴らに
 好き勝手はさせねえぜ‥‥‥!」
ICPOの敏腕捜査官・長崎重臣。サングラスの奥の目が光る。
「まずはキルマーに相談してみるか。あいつなら何かいい対策を打つだろ」
ガーディアンズの影のメンバーでもある彼は、セントラルタワーへと
入っていった‥‥‥

その後、彼はガーディアンズのメンバー達から壮絶な袋叩きに会う事になる。
が、それはまた別のお話。
 
                     
                     『炎の城』・完


 


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