KOFXXオリジナル小説
一月の蒼い月

01

作者 蓮華


【The blue moon in January】

一月の空気は冷たかった。今年は暖冬と言われているが、寒いことには代わりはない。
彼女は路地裏から身体を起こした。肌寒い。捨てられていた毛布で身体をくるんでいたものの、完全に
寒さを防ぎ切れると言うわけではなかった。夜になれば凍死するような寒さが襲い、ホームレスが凍死した
何てニュースが流れる。彼女もそうなりそうだったが、そうはならなかった。

「……もう少しで夜だ……」

路地裏には余り日の光がささない。今は冬なので、空が曇ることが多い。それが幸いだった。
夜になると分かったのは、辺りが薄暗くなってきていたからで、冬だから夜が来るのが速いからだった。
こんな身体になってしまってからは太陽の光は天敵になった。そのことを想い出し、また泣きそうになる。
あれから、何日だっただろう。
不安がまたこみ上げてきて、また泣いてしまった。何度泣いたのか忘れてしまうぐらいに泣いた。

「速く帰らないと、行っちゃうよね」

「そうだね。急ごう」

声がした。
こんな路地裏に誰か来たのだろうか。ここに人が来ることはなかった。ゴミ捨て場のような場所だからだ。
ダンボールの山の中に身を隠す。人には会いたくはない。逢ってしまえば、大変なことになる。
路地裏に現れたのは十四才ぐらいの少女だ。金髪をしているところから見て外国人だろう。
ワインレッドを貴重にした白いボアの着いている防寒具を着て、肩から白いウサギのぬいぐるみをつるしている。
金髪は腰まで有り、瞳はマリンブルーをしていた。手にはコンビニの袋を持っている。
羨ましかった。彼女が無くしてしまった日常を少女は持っていたのだから。
想わず身を乗り出してしまったので、ダンボールの山が崩れる。

「誰?」

少女が振り向くと、ダンボールの山の中から彼女が出てきた。灰色のような茶色の髪の毛に白いリボンを付けて
腰まで伸ばしている。制服を着ているようだったが、ホコリと茶色っぽい染みが付いていた。
茶色っぽい染みの正体は少女……コーラル・アクアマリンにはすぐに理解できた。

「こんな寒い時期に学生のホームレス?」

喋ったのはコーラルではない。コーラルがつるしているウサギのぬいぐるみだった。もこもこで
手には爪にはマニキュアを塗った本物の爪が着いている。

「そうじゃないと想うけど、こんな所にいると風邪引いちゃうし、運ぼう」

「運ぶって……」

「怒られるかも知れないけれど、このままにはしておけないし」

コーラルが言うと、辺りを確認し、そして眼を閉じた。


夕刊を読んでいるが、この街では最近、行方不明者が多発しているらしい。妙な町を選んでしまったと
青年は思った。町にあるホテルの一室、大きさとしては中くらいだ。ここに滞在して、四日目になろうとしている。
組織が壊滅してからと言うもの、こうやってあちこちを彷徨っていた。資金に関しては組織にいた時に
稼いでおいたし、なくなっても稼ぐアテはある。

「どこもかしこも物騒なことだ」

新聞を読み終わると、テーブルの上に放り投げた。青年は黒髪に異様な光を放つ金色の眼をしていた。
時計を見る。連れが買い物に出てから一時間近くが経過していた。
そろそろ帰ってくるだろうと待っていた。どちらかというと買いに行かせたコンビニの食事の方が
目当てかも知れない。
ノックの音がして、青年はドアの方へと行き、覗き穴から姿を確認した。金髪にマリンブルーの瞳をした少女
コーラルがそこに居た。

「帰りました。暁様」

「買ってきたか?」

「僕らの帰りよりも食事が大事かい。君は、それより少し見て欲しい物がある」

「見て欲しいものだと?」

「物と言うより、人だけど」

暁と呼ばれた青年は隣のコーラルの部屋へと行く。部屋の作りは暁が居る部屋と同じだった。
ただ、ベットには少女が寝ていた。暁は少女を見ると、脈を計り、顔色を確かめ、やがて………。

「何処で拾ってきた?」

「向こうのダンボールの山から」

向こう、と言う表現は大分曖昧だったのだが、彼はそれ以上は聞かずに俺の鞄と新聞を取ってこい、とだけ言った。
コーラルがそれに従い、鞄を取りに暁の部屋へと向かう。鞄とはたまたま紅茶の懸賞で当てた白いトランクのことだ。
それとテーブルの上に放り投げられている新聞も手に取り、部屋に戻る。

「自分で取りに行きなよ」

「面倒だ」

白兎が言うが、暁はそれを一言で終わらせる。トランクの中から、薬ケースに入った錠剤と手の平サイズの機械を出した。
ポケットに余裕で収まりそうな一見すると携帯ゲームに見える白い機械を少女の頬に押し当てる。

「それは……」

コーラルが機械の名称を言おうとした時、暁がそれを投げた。コーラルが掴み、液晶画面に映し出された検索結果を見る。
検索結果を見て、コーラルが間違ってはいないかともう一度見直すが間違ってはいなかった。
手の平サイズの機械は押し当てるだけで何日もかかる検査を一瞬で終わらせる識別機だ。その識別機が
出した結果―――――――――少女の身体は、遺伝子は人間の物ではなかったのだ。
人間でないことぐらいはコーラルも、そして白兎にも解るが……液晶画面の結果は何を表しているのか。

「どういうことだい?」

この部屋でただ一人、自体を理解している金色の目を持つ青年は言った。

「コイツは、吸血鬼だ」


 

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