目立たないのが目立つ男
〜縁の下の力持ち〜


第10話


約1年前…
あれは、曇ってた日だったな…

「…捨て猫か…?」

木原は珍しく一人で帰っていた。
その途中に、小さな仔猫がダンボールの中から顔を出していた。

彼はしゃがみ込んで、優しく猫を撫でてた。

「悪いな…俺の母さん、猫アレルギーだから…。」

彼は再び立ち上がった。

「(誰かいい奴に拾われろよ…)」

そう思った彼は、その場を立ち去り、近くのコンビニで立ち読みをしていた。


ザァ―――――――――……


「雨…?」

木原は読んでいた本を途中で置いた。
そして、傘もささずに仔猫の元に走って向かっていった。

「(…誰か拾っていてくれれば良いんだが……。)」

彼の体はびしょ濡れだった…
だけど、さっきの仔猫のいたダンボールの元に来たとき、誰かがいた。

「誰かいる…。」

一人の女性だった…木原より少し背が高く、髪を二つに結っていた。

「大丈夫…?すぐに家に行って、ミルク飲ませてあげるね。」

その女性はタオルで仔猫を包んだ。


ドキン…


――俺は自分を信じられなかった。

         初めて恋をした。

          彼女が抱えている猫に与えた優しさという

            「暖かさ」が、俺をも包み込んだ気がした。





「――原…?木原!!どうした!?」

「えっ?」

――俺は夢を見ていたのか…?

「どうしたんだよ?早く声掛けろって!!」
「声がでかいってーの…」

彼女は声が聞こえたのか俺に微笑みかけた。



――夢じゃない。現実だ。


――俺は勇気を出した。小さな体でも大きな勇気は出せる。



「…あなたが、好きです。」


――18年の人生で初めて出た言葉だった。






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「違うっ!あれはラジオ体操で…!」

オレンジの髪の毛の男は連行されていた。

「黙れっ!変質者めっ。御用だ!!」
「今時の警官が、そんな言葉使うかっ!!ってーか終わりかーーー!!?」
「黙れッ!」



「わぁーー!!もしかして、「目立たない男」って俺のことだったのかー!?」




〜完〜


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