波間にて


最近この近くに、変わった定食屋が来た。
飛行艇に乗った移動式の定食屋だ。

近頃、牛丼などで無く別の味がほしがっていた日などの暦の下級部隊員で、
けっこーにぎわっているらしい。

んで、その話を聞いていてもたってもいられなかった連中がいる。


「オゴリだ――――!!!」
「やった―――!!!トルーパーのオゴリだ―――!!!」

「待たんか貴様らあっ!!!!」

ひまわり軍団である。
「なんだそのオレのおごりってのは!」

「いーじゃんか、いーじゃんか。定食屋だよー」
「美味しい物もいっぱいあるよー。」

それに答えるはプロトだ。
現在、弾薬庫で爆弾の整理中。

「黙れえっ!!!
 自慢じゃないがオレは薄給で貧乏なのっ!!
 お前らに食わせてやる無駄金なんぞあるわきゃねーだろーがっ!!!」

ただでさえ、最近プロトは仕事サボってたり麻雀しすぎていたりで、
収入が減らされていた。
働くのは嫌だがここは一番、がんばり時、節約時だった。

・・・・・それなのに・・・・

「肥料を食えっ!!肥料をっ!!
 どっから喰うんだ定食なんかっ―――!!!!」

「細かい事は気にするな――!!」

「気にするわあっ―――!!」

とにもかくにも、プロトは首を縦に振らない。
さすがにちょっと考え込むひまわり軍団。

「とにかくっ!!オレはいそがしーんだ。自分らで行けッ。」

「わかったよ・・・」

珍しくもしゅんとするひまわり軍団。
くるりと背を向けその場からぞろぞろと去ろうとする。

安堵の溜息を力いっぱいプロトは吐いた。
だが、その溜息をするのはちょーっと早かった。

「そろそろ冷えてきたねー。」
「そうだねー。

 熱燗、鍋物、牡蠣フライ
 
 が、美味しくなってくる時期だねー。」

突然の背後からの不意打ちに思わずプロトは磨き途中の手溜弾を取り落とした。
いやいやいやっ、仕事仕事仕事・・・
あんなひまわり共のぼやきは気にせず・・・

「その飛行艇の定食屋さんには、お酒もあるんだってねー。」

「そーそー、あったかーいソバもあるっていうよー。」

さらなる追撃に、プロトは生唾を飲み込む。
うう・・ソバ・・嗚呼・・ジャパンの蕎麦・・・・・・いやいやいやっ。


「ねー、家庭的であったかーい味でねー。」

ここぞとばかりにひまわり軍団、拡声器片手に大声で、


「きっと美味しいんだろうねー、予約すれば、

 宴会

 も、できるってゆーしー!!」

「ぐっ・・・・・・・・・・」

追い討ちだった。



数百m先の港に、ふるめかしい大きな飛行艇が泊まっていた。
もうとっぷりと日も暮れて、空には星がきらきら瞬き、道路には、

ひまわり軍団を満載したプロトのキャンピングカーが走っていた。

「あーあ、誘惑に弱い自分に乾杯。」
ハンドルを握り締め、プロトはぼやいた。
その後ろでは、
「オゴリだー!!」
「わ―――――――。」
と、ひまわり人間軍団が早すぎる大騒ぎをしていた。
いつのまに自分のオゴリになってしまったのかは不明だが、
もう、あとには退けない。

「あー・・畜生・・9月嬢のツケ、には・・できねーよなあ・・」
・・・・・・いや・・・・・・それ以前に、

プロトにもだいたい予測はついていた。
このパターン、話のつながり方、それより、なにより、この面子!

「いるんでしょ・・9月嬢。」
「当たりです。」

ひまわりの群れの中から、長月真紀嬢がにゅっと顔を出した。


 


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