スーパーロボット大戦赤
スノーマウンテン
第7話
ノリスは、モニターの画面で周囲を見つつ、グフ・カスタムのシステムをチェックしていた。
左手を中心に『機能障害』を示す、赤い警告メッセージが流れる。
(左手がすでに凍り付いている……早く吹雪を止めなければ、こちらが先に行動不能になる)
グフ・カスタムを前進させるにあたり、左手の盾を傘代わりに進んでいたのだ。
如何に寒冷仕様のグフとはいえ、この激しい吹雪に分が悪かったのだろう。
細かい指や肘間接部へ雪を容易に進入させ、凍りつかせた。
グフ・カスタムは確実に蝕まれていた。
「あの……大丈夫なのか?」
ふと、光が心配そうに身体を乗り出していた。
ノリスは、無意識に自分が渋面であったのに気づき、苦笑する。
誰しも不安なのに、自分の行動でこんな少女まで心配させてどうする。
光に顔を見せると、ノリスは笑って見せた。
「大丈夫。心配をするな」
そう一言だけ伝えると、再びモニターに顔を戻す。
『心配をするな』
我ながらなんと無責任な言葉か。
少女を励ますためとはいえ、根拠のない言葉を吐く自分自身に失笑が禁じえなかった。
いやむしろ……少女を励ますということを建前に、己自身を奮い立たせるため、あえて言ったのではないだろうか。
そんな気分にさえなった。
「見て!」
と、光が突然、メインモニターを指差す。
「吹雪が……止んでいく……?」
ノリスは思わず、呟いた。
モニターには、荒れ狂っていた吹雪が、嘘のように収まっていく光景が映し出されていた。
他のロボットに乗り込んでいたメンバーも、それを見ていたののだろう。
スラグガンナーでは、フィオが入り口を開け、眩しげに空を見上げた。
「わぁ、太陽が見えますぅ」
深遠に落ちたプルジャンブルーの天壌が、雪山をドームとなって包み込んでいた。
深青の海から、白い太陽は輝きながら這い上がり、ドームを眩しく照らし出している。
ゲイナーも、キングゲイナーからその光景を見つめていた。
今まで吹雪が幻のように儚く消え、太陽の眩しさがゾクリとさせる。
目を細めながら、誰に言うとも無く呟いた。
「まさか……あまりに吹雪が激しすぎて『太陽が輝いている』ことさえ分からなかったのか……?」
事実、そうであったのだ。
それだけに事が、異様であることに改めて思い知らされた。
「でも、なんで吹雪を止めたんだビー?」
グフ・カスタムの背中を押す手を少し休め、ツインビーは空に顔を向ける。
腑に落ちない、という顔……いや、口をしていた。
それに対して、ツインビーの中のライトは、嬉々として答える。
「やっぱりアレじゃないか? 『壊れて吹雪が止んだ』とか」
「もしくは……」
通信で聞いていたのだろう、フィオが口を挟んだ。
「『吹雪を起す必要が無くなった』でしょうかぁ?」
「さもなくば」
答えようとしたのはノリスだった。
だが、彼の考えを聞くには少し間を要した。
というのも、彼が返答する瞬間、グフ・カスタムを中心に『木の獣』が雪の中から姿を現したからだ。
姿そのものは木製車輪が付いた『木の置物』だ。
だが、口から火を吐き、そのサイズはツインビーよりも大きい巨大なものであった。
その謎の木の獣が、大量に出現したのだ。
一瞬でノリスたちは囲まれた。
「さもなくば、『迎え撃つために』、だ」
ノリスは、先ほど言いかけた思考を吐き出した。
そして、言葉を一つ、付け加える。
「散開しろ!」
瞬間。
ノリスたちは一斉に行動を開始した。
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