落し物は交番に
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| 思い出してみましょう。はい!皆様! よおおおおおく、思い出してみましょう、 脳みそこねくり回して思い出してみましょう。 最近、なんか落し物はしてませんか? はいはい!そこでちょっち躊躇ってるお嬢ちゃん! そう、お嬢ちゃん、君だねえ。 なに?落としてはいないけど拾った? ほほう、それは交番に、いや、然るべき所に届けたかな? ●第1話 拾う人あれば、落とす人あり 冗談じゃない。いや、ほんとに冗談じゃない。 秘密結社という中で、細々と雑用をこなして生きている彼は思った。 「海のど真ん中ですか・・・」 「そうだ。」 「軍用機ですか・・・」 「正確には輸送機だがな。その落し物を、拾ってくるのだ。」 「・・・・落し物!」 随分と簡潔な言葉でくくられている物である。 そもそも、だ、自分がとりにいく必要ってあるのだろうか? 「落し物と言うのは交番にとどける物でしょうが、 私たち暦などという組織が拾うものですか?」 「・・・交番・・か。」 やや、一本とっただろうか。いや、とれる筈がない。 この人、2月29日のほうが、自分よりもこういう事に関しては、 一枚も二枚も三枚も上手なのだ。 「交番に届けるよりは、我々が使ったほうが役に立つだろう。 あの落し物はそのためのものなのだ。」 「はあ。」 「さあ、行け。」 少なからず、気のこもった言葉に、この男、 プロト・ガルベットは従うしかなかった。 数日前。 某国の飛行機が大西洋のほぼ中心に墜落した。 原因は、エンジントラブル。これが航空公社の機ならば、 整備の怠慢の一言で済んだであろう。 しかし、この機は軍用輸送機であった。 さらに、積んであるのは、とある缶詰。そして、通称「デブ男。」 どちらも、とある場所にて処分される予定の物であった。 すでにその二つは・・・いや、とっくの昔にその二つは、 非人道的兵器の登録を受けていたのである。 さて、批難が某国に集中したのは言わずもがなだが、 もっと厄介な事に、その缶詰とデブ男は、海溝の奥深くへと、 消えていったのである。 けれども、某国の高官は、思った以上にとてつもなくタフであった。 不幸中の幸いと、二つは耐圧装甲コンテナに入れられており、 水圧でBON!なんて事はありえないこともあり、 誰の手にも届かない深海の奥底に、 この二つは結果オーライっと言う事で、そのまま放棄された。 けれども、某国は知らなかった。 それを、引き上げられる組織は、いくらでもあることを。 たとえ、国家と言う公の立場にあるものが動けないとしても、 うんにゃ、それならなおさら、それを狙って世界の、 「裏」 が、動き出すのである。 そして、暦は、その「裏」の筆頭である事は、 皆様も熟知している事だと思う。 だが、そこで疑問。 「その『缶詰』と、『デブ男』ってなんなのよ?」 と、一人のひまわりが、慣れた手つきで出張の準備をする、 プロトにたずねた。 プロトは、とてもとても深いため息をついた。 「缶詰は、密封された容器に入れなきゃマズイ物。 デブ男は、ファットマンだ。」 「・・・どういうこと?」 「うんうん。」 「わかりにくいしー。」 いつのまにやら、いや、いつものことだが、 プロトはひまわり人間の大群に囲まれていた。 「・・・・・・かたっぽは、ドブそーじで見つけちゃった奴の、 強化版、もうかたっぽは・・・」 やや、躊躇うプロトに、ひまわり共が早くしろとせがむ。 「・・・・ナガサキだ。」 |
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