落し物は交番に

16(終)


元米国大統領F氏の裁判が極めて異例のスピードで閉廷した。
判決は、『懲役二千三百年』。
今回のF氏のテロリスト癒着容疑はガイア共和国が解明、
さらにもともとの発端は某国軍事輸送機の墜落と、
各国が入り混じってかなり混迷を極めたこの一連の事件だが、
これで一段落が着いたようだ。

イギリス海軍のハンターキラー原子力潜水艦『トラファルガー』が、
訓練中に自己をおこして沈没した。という報道が流れた。
乗組員は全員脱出して無事、ということも伝わった。
乗組員の適切な処置により放射能漏れの心配はないが、
原子力兵器のあり方は今後、国連などで取りざたされるのは必至だ。

西ユーラシア各国空海軍で、兵器類や船舶の紛失が相次いだ。
だが、とても微量だったので、あまり騒ぎにはならなかった。

闇蜘蛛はその後も堂々とゲリラ行為を続け、
毎日のように当局と追いかけっこしているらしい。


●第十六話  終わってしまった事


このようなニュースがその後毎日のように世界の情報網を駆け巡ったが、
そのことをプロトはまるっきし知らなかった。
彼にとってはこれもいつもの仕事であり、
べつだん気にするような事ではなかったのである。
けれど、一つだけ印象に残った事があった。

闇蜘蛛とその部下たちである。

あんなふうに、信頼しあってる部下や上司がいることを、羨ましく思った。
・・・いや、仲間がいることが羨ましかったのであろうか。
無論、人間のね。と、今の自分を見て思った。

「いや、だからあの落し物なんに使うん?」
「オレが知るか。」
「ひろってきたの自分のくせにー。」
「オレが知るか、仕事中だ。」
「モップがけのくせにー。」
「さらに思いっきりサボって漫画読んでるくせにー。」

「エースの・・ジョーと・・(略)」
「だからなんだよそれ。」


とにかく、すべては終わってしまった。
みんな然るべき場所に戻ってしまった。
プロトが議長にこの後、有給休暇を頼んだのは言うまでもない。


蹴られたけど。





落し物は交番に  END


 


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