それが何か
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| 「あ゛――――・・・・・」 いつもより老け顔でいつもより青白い顔の畑守を見て、 パイロットは気が気でならなかった。 「・・・・あ・・あんた・・・大丈夫か?」 「ああ゛―――――・・・・・・・」 誰がどう見ても大丈夫じゃなかった。 「なんでこんな物にのっちまったんだ・・・・・・」 畑守は、自分がとんでもなく乗り物酔いに弱いと言う事実を忘れていた。 緋龍の顔を見て、野沢はすぐに自分の顔を、いつものしょぼい政治家に戻した。 「緋龍くんか・・・・なんのようかね?」 野沢の心にあった少なからずの警戒心がムクムクと大きくなった。 この男は危険である。第六感がそう告げていた。 「昨日、警備部の部長さんに呼ばれて、ここに来る事を命じられたッス。」 野沢も承知の事だった。 もはや、捜査部から警備部への管轄になっているこの事件で、 唯一の捜査部からの使者が緋龍と畑守だった。 「その時に、なんと内閣調査室の方がいたッス。 驚いたッスよー・・・・」 「調査室!?」 内閣調査室。 内閣と首相の直属の諜報機関であるその組織は、 公安委員会とつながりを持った、すさまじい情報力を持つ機関だ。 そして野沢が最も恐れていた名だ。 「その人の話だと、なんでもこの機に乗じて自衛隊とかのOB連中とか、 幕僚たちが、自衛隊の増強をしていると言う話しじゃないッスか!」 野沢は、じりじりと後ろに下がった。 「さらに、それにいろいろ汚職が絡んじゃったりして、」 自信はあった。奇襲なのだ、オマケに相手は単なる一刑事。 「あの怪物も隠匿して、そのまま自分達の物にしちゃおうという計画もあったりして、」 一発だ。飛びついて殴って逃げる。それで今度こそかたがつくはずだった。 「いやあ、これはもうすごい凶悪犯罪ッスね!」 「がああああっ!!」 形容しがたい叫び声をあげつつ、野沢は緋龍に突進した。 だが、すぐさま、自分の眉間に影を感じた。 手錠だった。 「ぐああっ!!」 眉間に力いっぱい手錠のカドが直撃して、野沢はどてっと倒れた。 「現逮ッス。」 のた打ち回る野沢の手首に、戒めがしっかりとかけられた。 「最後に何かいうことはあるッスか?」 上から見下す形で、緋龍はぴしゃりと言った。 あえぎながらも、野沢は力強くこたえた。 「わ・・私が本当にこの国を想っていたのだ・・ 被害者には気の毒かと思うが、見ろ!米軍、RJH、ガイア! みんながこの国を狙っている!」 緋龍は、野沢を無理やり立たせた。 「この国はいつか必ず終戦直後の姿に戻る、私はそれを防ごうとしたのだ!」 自衛官たちに取り押さえられ、野沢は緋龍と畑守が乗ってきたパトカーに入れられた。 緋龍は、しれっと答えた。 「そんなこと、誰にも分かるはずが無いッス。」 呻く畑守に、パイロットは露骨に嫌な顔を見せた。 「ぢぐじょう・・・・は・・はきそうだ・・・・・・」 「頼むよ、ここじゃ吐かないでくれよお。」 半ば必死だった。 だが、それを嘲笑うかのように、ヘリコプターがグラりと揺れた。 ひざを丸める畑守。怖がるパイロット。 再びぐらりと揺れる。 「あわわわ・・な、なんで揺れるんだ!?」 パイロットの空しい叫びにこたえるかのように、再びヘリコプターに巨大な揺れがして、 かすかな唸り声が聞こえ始めた。 |
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