それが何か

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済んだ。

怪物の巨体が更に巨大なシーツでくるまれていく。
それをさらに巨大な大型輸送ヘリコプターに積む。

今度こそ本当に全てが済んだ。
「タイタンへ、こちらキマイラ。
 これより離陸し、巨大異性物一号を搬送する。」

『了解キマイラ。警視庁からの刑事は乗っているか?』
「タイタンへ、同乗している。」
『了解キマイラ。それは最後確認のために同乗している。
 丁重に研究所へと搬送するべし。』

「了解、これより離陸する。送信終わり。」
受話器を置いて、パイロットは後ろを振り向いた。
同乗席にはちゃんと畑守がいた。さらに後ろの倉庫には一号が積載されている。
「あんた、もう一人連れがいただろう?」
レバーを掛けるとヘリコプターのローターが回りだした。
「その人はいいのか?」
空自の下っ端の割にはそういう事によく気がつくと、畑守は思う。
こういう奴は出世しない。
「ああ、いいのさ。」
プロペラが、空気を引き裂く音を立てて、本格的に回転し始めた。
周囲に風が巻き起こる。
「仕事があるからな、あいつの・・・」


「本当かっ!?」
藤倉の頓狂な叫び声が響いた。
『ええ、上野方面にて古牙らしき人物を目撃したとの多数の情報が寄せられています。』
「上野だなっ!!確かだなっ!!よしっ!!!」
受話器を叩きつけ、ネクタイを締めて、
遅刻しそうなサラリーマンのようになりつつ、藤倉は野沢に見返った。
「早速、私はそちらへ参ります!その後はすぐ出国せねばならないので!」
「お気をつけて、ご協力どうもありがとう。」
おざなりな返事に耳を傾けず、藤倉は来たときと同じように、
テントをばさりとまくって、外に出た。

野沢は溜息をついた。
これで国内での危機感が高まれば、自衛隊の増強がなされるのは眼に見えていた。
なにより、テロリストの襲来による自衛隊の治安出動と言うのが、
世論を確実に動かすはずだった。
自分の役目はこれで終わった、そして政治的な茶番に付き合わされた人々と、
あの怪物の役割も。
「これで・・・・・すべてかたがついた。」


「いや、実はついていなかったりするッス」


 


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