それが何か
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| 誰が想像できた?この豪炎と土煙、そして大混乱を。 誰が想像できた?・・・誰にもできはしなかった。当事者たちすらも。 この、燃え盛る鋼鉄の中でうごめく、恐怖を、 誰が想像できた? 畑守が強烈な嘔吐感とともに目覚めたとき、自分がどこにいるのか分からなかった。 なにやら足元が熱く、体はきつい。 思い切って渾身の力を込めて立ち上がってみると、背中から焼け爛れた鉄板が落ちた。 どうやら、炎上したヘリコプターのコックピット内で下敷きになっていたらしい。 隣で同じように卒倒していた自衛官を引きずり出し、真正面を見た。 噴水が見えた。 左を見た。遠くに五重塔が見えた。 右を見た。 美術館とかが立ち並んでいた。 後ろを見た。 何かデカイ物がはいずりまわって移動した後があった。 冷や汗がたれた。 『上野公園に墜落したヘリコプターの内部で暴れていたとされるテロリストは、 現在、散らばって園内に潜伏中とのことで、先ほど機動隊が園内を封鎖しました。 まもなく、陸上自衛隊がこちらに向かうもようです。』 『現在、上野駅は運休を見合わせており、職員や乗車客の早急な避難が行われています。 『陸上自衛隊の第一師団一個小隊が、こちらに向かっており・・・・』 「畜生・・・!!」 景気よく畑守は毒づいた。 こんなことなら常日頃、鉄砲かミサイルの一発や二発携帯しておくべきだった。 「畜生・・畜生・・・・!!」 丸腰でどうしろと言うんだ。 「おい・・・いったいどうなってるんだ 「だまれっ!!」 いまだに状況が呑み込めていないパイロットを、鍛え抜かれた叱声で黙らし、 畑守はさらに考えた。 「あのバケモノとどうやりあう・・・・・・」 『内閣はこの件について・・・・』 『宮内庁では天皇、皇后ならびに皇太子ご夫妻の緊急避難も視野にいれ・・ 『公安委員会が・・・ 『陸自の・・・・ 『先ほど、上野公園に向かって、年齢不詳の男性が機動隊の制止を振り切り、侵入したとの・・・・ 無数の電波が飛び交うこの都市。 あと三時間で日も暮れる。 事件関係者にとってもっとも長い夕暮れ時が端を開けた。 |
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