トルーパー


皆さん、紳士淑女の皆さん。
トルーパーという言葉の意味をご存知だろうか。
まあ、いろいろあるが、たいがいは機動兵員という意味であろう。
だが、彼の場合はちょっと違う。
プロト・ガルベット。数年前に暦で改造された一応サイボーグ。
彼の形式名称は、一応、カレンダートルーパーである。
もともと量産を目指していたせいもある。
だが、今の彼の立場を、彼の一日から考察したい。

朝、五時半起床。
彼の朝一番の仕事は、まだ起きていない一般の日や、
ひまわり人間たちの起動である。
無論、重要なポストについている方々は、たいがいが徹夜だ。
だから、彼の仕事は、月にはあまり関係ない。
七時。
清掃である。と、いっても本人にあまりやる気がなく、手伝う奴も
ひまわりぐらいなので、まともにはやっていない。
八時。
朝食をとる。暦の中で定期的に食事が取れるのは、彼程度である。
九時。
ここから一気に忙しくなる。月から依頼される雑務、
掃除、洗濯、ラジオ放送のセッティング、自慢話を聞く、愚痴を聞く、
などなどなど、である。
また、この時間帯には、月に届け物をする場合もある。
「ぎちょー。書類です。」
「うむ。」
などという会話も珍しくない。
「ところで、君。」
「はあ。」
「この前の私の論文をどう思う。」
「・・・・・・・はあ。」
そのまま長時間に渡ってウンチクされる事も珍しくない。
いや、議長の対面を重んじて、演説と言おう。
ちなみに、これをきき始めると逃げる事はできない。
なぜなら、完全正義の執行人が、いつのまにか後ろにいるからである。
だから、涙を呑んで数時間の演説を直立不動で聞かなければならない。
(もっとも、用事があるときは彼女も議長も納得してくれるが。
 だが、嘘をつくともっとひどい目にあう)
そのほかには、九月の部屋に行ったとき。
「いきますよ。」
「まじですか?」
試作品の巨大ロボットと格闘をやらされることもある。
格闘ではなく、いじめといったほうがいい。
こういうときは、都合よく、ひまわり共はいない。
三月はまだ平気である。
「頼まれた生き物ここにおきますよ。」
「・・・・・・・・」
研究に熱中しすぎていて分からないからである。
だから、きっとドクターは、ひとりでにほしい物が増えていて、
驚いているはずだ。
「それにしても、モルフォ蝶なんて何に使うんだ?」
四月は、自慢話を聞かされる程度だから、全然OK。
たまに、哀愁の父娘喧嘩に遭遇する事もある。
芋虫が飛んでくることもある。が、巨大ロボよりましだ。
六月、七月、十月は、滅多にいない。あちこち飛び回っている。
十一月は・・・別の意味でいない。興行が忙しいらしい。
十二月もいないが、たまに会う。
会うたびにため息をついていて、すこしきついのだが、
そんなへヴィーな体験は、ここにきてしょっちゅうである。
というわけで、もう慣れた。
だが、最大の難関がある。
二月、である。
部屋に書類を届けに行く日にゃもう、拷問だ。
怖すぎる。ちなみに、やっぱりひまわり共はいない。
また、彼は一人歩きが大好きなので、たまに鉢合わせになる。
背筋が凍る。(やっぱり消えるひまわり)
んで、このように、月との熾烈なやりとりをこなし、午後三時。
昼食は滅多に食えない。が、おやつは食べる。
四時。
さて、午後の雑務である。デスクワークからお掃除、機械の調整、
偽造パスポート作りや、爆弾作りや、銃火器の整備など、
売るほど仕事はある。
七時。
夕飯にありつける。この頃、ひまわり人間が戻ってくる。
八時。
自由に行動できる。最近は、ひまわりや一般の日と、
遊んでいる。行動的にはほとんど中坊である。
九時。
宿直で見回り。十二時まで続く。
一時。
就寝。だが、急な仕事ができたときはもっと遅くまでおきている。
だが、必ず朝の五時半におきる。

以上が、トルーパーの仕事である。
ほとんど、用務員か、便利屋か、仕事人か、ひっくるめて言えば、
パシリである。
彼が、何故、暦に入ったのかは知らない。
が、これだけは言える。
仕事をほとんど中途半端でかたずけるな!やる気を出せ!


 


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