トルーパー

2 なにがジョーンに起こったか


さて、と。
前回どうもめったくそに書かれた自分。
プロト・ガルベットだが・・どうにもこうにも、
最近オレは悩んでいる。
暦のどこかズレた連中にももう慣れた。度重なるへヴィーな事態にも、
ただ、二月には当分慣れそうもないが。
しかし、なんか足りない。なんだろう、なんだろうと、
考え続けて、最近ようやっと気付いた。
「温もりだよ!」
「「「「「は?」」」」
その場にいたあろうことかひまわり共に振り向かれた。
「オレの人生、なんか足りないなっと思っていた!
 分かった、温もりだよ!」
「いや、もうちょい具体的に。」
「そうそう。」
「分かりにくいしー。」
オレはその時、じつに快晴な気分だった。
「異性だよ!い・せ・い!分かるか。ここはほんっとにいないんだよ!」
「タイプが?」
「そうそう。」
ようは、彼女がほしいという、この年代の男性ならば、
必ずしもある欲求不満であった。だが、しかし、オレの場合少し、
違う。
「だって、ここまともな女いないんだもんよお・・」
ロボオタク、魔女っ娘、電波系、なんか怪しい眼鏡、蟲と話す子、
雪女、エトセトラ。
「どうだ!こんなかに、まともなのはいるか?」
全員、即答。
「「「「いない。」」」」
と、いうより、暦のメンバー全員がまともではないのだが・・
「あああ、こんな思いはひまわりにはわかるまい・・」
「ひまわり?心外だな。」
群れの中の一人が、すっくと背伸びしてオレに言った。
「サンファーガだよ。サ・ン・フ・ァ・−ガ。
 これでも一応、ファーガシリーズの一つなんだぜえ。」
「・・・・ほう。」
「ま、レイの弟ってとこかな?君のような雑用とは、
 格が違うのだよ、格が。」
「・・・・・・・・ほほう。」
オレはひょいっとマッチに火をつけた。
「ロボットって燃えるのかな?」
「わあああ!すいません!すいません!でしゃばりましたあ!」

とにかく。
ひまわり共にはやっぱり分からんようだが、俺は侘びしい。
そうだ、考えてみるとオレも二十四。もう、嫁さんのアテぐらいないと、
「やばいよなあ。」
なんで、こんなんなっちゃったんだ?
ええと・・たしか・・

「ぐがああああああ!」

「な、なんだね!今の悲鳴は!」
「はい!ジョーン君のいびきです!」
「な・・」
あんころは、オレは学生だった。
ケンブリッジで、悠々とやってた。
ただ、授業態度の悪さで、先公に怒られることもしばしばあった。
「ジョーン・ガルベット!君は退学だ!」
「わかりましたあ。」
「・・・・・・・あっさりしてるな。」
「それが取り柄ですんで。」
そうだよ、こんなことがあったんだよ。
あのころからオレはやる気ゼロだったからな。
んで、路頭に迷って・・・親父は軍隊、お袋は天国だし。
薬とか色に手を出さなかったのが不思議なぐらいだ。
んで、ある晩に・・
「君。」
「・・・・・・・・・」
「君だ。」
「あ、オレ?」
「そう、君。」
当時、十九歳。あの頃オレは若かった。今も若いが。
「新しい世界で生きていく気はないか?」
「・・・そこは、」
「ん?」
「オレみたいな阿呆でも、飯を食っていける世界か?」
「・・・・・・・・がんばれば。」
「がんばるのは、好きじゃない。」
「そうか。」
「けど、やる。暇だし。」
「・・・・・・・・あっそ。」
なんで、そんなあっさり決めちまったんだオレッ!
もうちょっと考えたらよかったのにと今なら思う。
「あ、真紀様だ。」
「ほんとだー。」
「どこいってたんすかー?」
あ、やべ。
「・・・ど、どうも。」
一応、挨拶。
昔は不気味だったけど、今はそうでもない、やっぱ慣れだな。
「熱心ですね。モップがけ。」
「ま、一応ですが。」
「ところで。」
オレは一瞬、九月の眼が光ったと思った。
「ロボオタクとは誰の事ですか・・・?」
「ぎ・・・!」
ひ、ひまわり共!
いねえええええ!逃げやがった!
「のわ・・!」
瞬間、オレはジャーマンくらった。
オレの意中の人が現れるのは、当分さきっぽい。


 


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