トルーパー

ラスト MP


六月は、ここ暦本部には滅多にいない。忙しいから。
だが、今日はいつもよりは少し暇であったので、久々に、
中の勤務についていた。
しかし、いくらかは暇といえども、暦の中でやる仕事は高が知れている。
速攻で終わらせて次の任務へつこうと第三棟へ向かっていたときだった。
突然、大騒ぎが聞こえてきたのだ。
「なんだ?」
と思い立ち騒ぎの場所を見てみると・・・
一つのテーブルを囲った四人組みが騒いでいた。それとギャラリーの
ひまわり人間軍団。
テーブルにいた一人である、雑用係のサイボーグが叫んでいた。
「ローン!メンタンピンツモトラ!」
ひまわり人間たちが騒ぎ立てた。
「ああ!ちっくしょお!いかさまだー!絶対いかさまだー!」
「そーだ!そーだ!」
大麻雀大会が行われていた。
誇り高い六月の脳みそで何か砕けた音がした。
いや、たまの休暇にひまわり共と雑用で集まってレクリーえションを
するのはけっして悪い事ではない。
・・・・ないのだが・・・・・・・・おいおい。
「何故、九月がいる?」
もっともな疑問だった。
九月こと真紀嬢が麻雀のルールを知っていたのか、
教わったのかは知らないが、なんにせよ無表情で牌をとる姿に、
少なからず凄みが感じられた。
「まったく、
 仕事もマトモにできぬようなやつがなにをしているんだか。」
と、プロトを見て呟いた六月は、
巻き込まれてはたまらないので、足早に第三棟へと向かった。
いい判断だ。

「さあて、・・・・・・・続けますか。」
今のところ、プロトについで二位という成績の九月嬢が言った。
「はいはい、牌をじゃらしてーっと。これがラストだからねー。」
ひまわりによって、
テーブルの上で麻雀牌がじゃらじゃら音を立てて混ぜられる。
麻雀とはここから牌を取ったり、誰かが捨てたのをもらったりして、
役をそろえていくというゲームである。
皆、適当に牌を取った。
「よし、いくぞー。貴重なオレの休暇なんだから、無駄にしたくない。
 ちゃっちゃっちゃっといこう。」
プロトが少しやる気のありそうな声で言った。
さらに順番通りに牌を取っていく。
これで強い役がそろった人がいると、点棒というものを、
役の一定量、強い役を出した人に弱い役の人が渡さなければならない。
最後に点棒が一番多かった人が勝ちである。
周囲のひまわり共が固唾を呑んで見守る中、牌が少なくなっていく。
「あら、一発ツモじゃなった。」
「リーチです。」
などとの会話が聞こえてくるが、この時は静かな物だ。
うるさくなるのはこれから。
「ローン!チーイードラドラー。」
まず、ひまわりから。
続けて、もう一人のひまわり。
「ポン。」
今回はプロトは運がないらしい。
「・・・うーむ、こいこいこい。にしても、すごいメンツだよなあ。
 ロボットに、天才少女か・・」
「それとサイボーグ。別に文句はないでしょーが。」
「まあ、そうだけどな。」
などといいつつ、プロトはけっこう今の状態を楽しんでいる。
変なやつらでもいいじゃないか。テロ組織でもいいじゃないか。
秘密結社だろうが、なんだろうが、楽しい事はできるんだし、
それに、
「国士無双。」
牌がテーブルからなくなったとき、九月嬢が静かに言った。
(国士無双はとてつもなく強い役。うろ覚えだけど、
 多分、一番つよかった・・・・・・はず。)
点棒がすべて九月の所へと向かった。
「さて、今のでケリがつきました。約束どおり。」
九月に、牛丼のタダ券が皆から手渡された。
・・・・・・・どうやら、博打だったらしい。
「ども。」

・・・それに、オレみたいなアホでも十分生きていけてるしな。
と、プロトはあの時思った。
けど、誰かに気付かれたら恥ずかしいので、無表情だった。
今日の休暇が終われば、明日からまた雑用三昧の日々である。
それでも、プロト・ガルベットはトルーパーとして、生きていくだろう。
いままでも、これからも、生きていけるだろう。
「だって裏切ったら消されるしな。」
いや、そんな身もふたも・・・・・・



トルーパー END


 


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