スーパーロボット大戦
スノーマウンテン

第8話


「押し通す!」

 先頭を切ったのはノリスのグフ・カスタムであった。
 凍りついた左手から、引きちぎるようにヒートソードを抜き出すと、一直線に走り出す。
 目前に迫るからくり木獣の一体を、灼熱の刃で斬り倒す。

 からくり木獣は一撃で破壊された。

「脆いな」

 手ごたえがMSよりは軽い。
 索敵機か航空機を斬ったような印象だ。
 だが、それに反比例するかのように彼らの数は多い。

 ノリスが一体撃破したことで、数体のからくり木獣が一斉にグフカスタムに顔を向けた。
 いや、彼らは『木の置物』なのだ。車輪だけで回転させ、身体全体をグフに向かせたのである。

 同時発射で炎を吹き放つ。

 だが、からくり木獣が照準を定めた瞬間に、グフ・カスタムはジャンプ行動を行なっていたのだ。

 彼らが発射した炎はお互いを焼き尽くす。

 辛うじて一体だけが残る。

 と、グフ・カスタムは空中でブーストを吹かし、残ったからくり木獣に急接近する。

 着地しながらからくり木獣を切断した。

 そのまま、グフ・カスタムは、吹雪を放つスノーマンに向かって駆け出す。

「凄いな……。シンシアと同じぐらいに上手いかもしれない……」

 空中に飛び、からくり木獣を撃破していたゲイナーは、思わず感嘆の声をあげた。

 MSというのは大概、定められた動作しか行なわない。
 人の姿をしながら、行動は限りなく機械なのだ。

 だが、ノリスの操るグフは、まさに人間のように……いや、人間以上の動きを実現していた。

「オーバーマン、そいつらの相手を任せる!」

 ノリスからゲイナーに通信が入る。
 賞賛の表情から、怒ったような表情へとゲイナーの顔が変わる。

「任せるって……何でですか!?」
「レーダーを良く見てみろ」

 レーダーを良く見ろ。
 そう言われなくても、ゲイナー・サンガだって気づいていた。
 彼は通信対戦で連続200勝利を達成し、『キング』の称号を持っている。
 『キング』ゲイナー。
 そんな彼が気づかないはずがない。

 からくり木獣が、『倒した数だけ増える』ということに。

「だったら、全部倒せば良いでしょう!」
「補給が効かない我々に、無用な消耗戦は危険だ」
「……ッ!」

 勿論、からくり木獣が無限にいるわけではない。
 全部倒して、それから吹雪を発生させるロボット……スノーマンを倒せば良いかもしれない。
 ゲイナーの意見は間違えとは言えない。

 だが、からくり木獣を全て倒したことで弾薬もエネルギーも尽きてしまったら、それでは意味が無い。
 目的は敵の殲滅でなく、スノーマンを倒すことなのだから。

 さりとて、スノーマンを倒すため、からくり木獣を無視して進んでも、背後を取られては大きな不利になる。
 どんなに高性能な機体でも、袋叩きでは真価を発揮できない。
 適度に敵を倒しつつ、進む必要があるのだ。

「分かりました。その代わり……」

 キングゲイナーを旋回させると、チェーンソーガンで地上のからくり木獣たちを次々に撃ち抜いてく。

「その代わり、ちゃんと勝って下さいよ!」
「分かっている」



 グフ・カスタムが先方を走っている中で、出遅れたものもいる。
 フィオの乗るスラグガンナーである。

 メタルスラッグを代表するスラグシリーズは、小型ながら高性能な機動力と火力を誇る機体である。
 中には、ラクダにマシンガンを付けた『機体』キャメルスラッグというものあったりするが……それはさておき。

 スラグガンナーは、スラグシリーズの中でも初の人型形態である。
 そのためか、旧来のスラグシリーズに比べて動きが鈍いところがある。
 メタルスラッグ形態に変形する時、人型形態に変形する時、そして……『真後ろに振り向く時』である。

 吹雪の中を進んでいくときに、フィオのスラグガンナーはメタルスラッグ形態のまま、バック走行で走っていたのだ。
 そして、 突然の戦闘開始。
 フィオにとって災いとなった。

 体勢を直す時間のタイムラグ。
 その間に、グフは先に進み、残されたスラグガンナーにハイエナが集まるようからくり木獣が取り囲んだ。

「……困りましたですぅ」


「いやぁ、こいつら本当に木で出来てるぞ。すげぇなあ」

 高スピードで一気に突き進んでいたツインビーの中にて。
 からくり木獣をまったく相手にしていないため、一番先頭はツインビーではあったのだ。

「ライト。あの戦車みたいなロボットが囲まれているビー!」
「戦車みたいな……って、巨乳の姉ちゃんか!」

 ツインビーの一言で、ライトはIターンを行なった。
 最先端から最後尾まで一気に進む。

 スラグガンナーは囲まれたと見るや、即座にジャンプ行動を行なった。

 バルカンを掃射しつつ、キャノンを発射。

 正面の敵を破壊。

 空中ジャンプによってからくり木獣の上に飛び降りる。

 と、スラグガンナーはメタルスラッグ形態へと変形した。

 ガリガリ……という激しい不協和音が鳴り響き、からくり木獣を轢く倒す。

 そのまま空中に落下しつつ二足歩行へと戻ると、地面に着地する。

 刹那。

 真横のからくり木獣に向かって、スラグガンナーはパイルバンカーを叩き込んでいた!

 ズドン! という鈍い爆打音と共に砕け散るからくり木獣。

 だが、すぐに他のからくり木獣が囲い込む。

「ピコハンマーーー!!」

 突然、からくり木獣の一体が、ペシャンコにつぶれる。

「ツインビーの到着だビー!」

 ピコピコハンマーのような物体を持つツインビーが空中から舞い降りてきた。

「ありがとうございますぅ。助かりましたぁ」

 そう口で答えながらも、スラグガンナーの高連射バルカンは次々にからくり木獣を蹴散らしていく。
 思わずライトが口笛を吹く。

「へぇ、思ったよりやるじゃん!」
「ありがとうござますぅ」

 ツインビーもポコポコと敵を文字通り『ペッタンコ』に潰していく。
 中々、不思議な武器である。

「よーし……あんたは先に行け! ここは俺達任せろ!」
「……分かりましたぁ。お任せします」

 フィオは即決だった。
 フィオもノリスも長らく戦場で生き抜いてきた猛者。
 弾丸飛び交う戦場で、一分一秒を争う即座の判断を迫られることが多々ある。
 そのため、瞬時に何が正しいのか考える力を身に着けている。

 フィオもまた、どうするのか正しいのか、瞬間的に把握し決断を下したのだ。

 スラグガンナーはメタルスラッグ形態に変形すると、スノーマンの方向へと進める。

 それを見届けながら、ツインビーは周りの敵を次々に潰していった。

「ここはオイラたちが相手だビー!」


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