エバは行く


「おいエバ!お前何考えてんだ!?」
「ここんとこナマっててさぁ、おもいきり体動かしたかったんだよね」
屈伸するエバ。
「おいやめとけ!バンハイはスーパーヘビー級なんだぞ!」
「ムフリ☆」
バンハイも颯爽とリングに上がった。
構える両者。
「ルールは?」
「ムフ、安心しろ。俺は女には手は出さない主義なんだ。この俺の顔に一撃でも
 攻撃を当てられればミセスの勝ち。3分間避け切れれば俺の勝ちだ!」
「わかった」
「準備はオーケー?それじゃ、レディー‥‥‥ゴー!!」

顔面にエバの拳がめり込む。ぷー、と鼻血を吹いて倒れるバンハイ。

「〜〜〜〜!?」
呆気にとられる一同。
「ねーイリアのいったとおりでしょお?」
イリアだけが喜んでいた。
拍子抜けしたエバ。
「え、あ、もう‥‥‥終わり?あっけないねえ」
「ま、待ってくれ‥‥‥」
顔を抑えながら立ち上がるバンハイ。
「い、今のは全然本気じゃなかったんだ!友達の奥さんだったからつい手加減
 しちまってたんだ!考えてみりゃ失礼な話だったよな!な?
 も、もう一回やろうじゃないか!?」
「ん、いいよ」
再び構える両者。
「ムフ☆今度は本気で避けさせてもらうからな!それではレディー‥‥‥ゴー!」

アッパーカットでのけぞりダウンするバンハイ。

「わーいママつよーい!」
「ふぅ、状況、終了!」
「ま、ま‥‥‥まてやコラー!」
再び立ち上がるバンハイ。スキンヘッドに汗がにじむ。
「い、今のは素人に対して用の本気だったんだッ!今度はちゃんと
 プロに対して用の本気でいくから!も、もう一回プリーズ!」
「あ、ああ‥‥‥かまわないよ」
みたび構える両者。
「ム、ムフ、奇跡は三度は続かないぜ?レディー‥‥‥ゴ!」

横殴りの拳。きりもみ吹っ飛びしちゃうバンハイ。。

「わーいママめちゃイケー!」
キャッキャと喜ぶイリア。
「ま、待って‥‥くだサイ‥‥‥ッ!」
鼻血まみれでヨロヨロと立ち上がるバンハイ。もう必死です。
「あ、あの奥サン‥‥‥」
「今度はなに?」
「あの‥‥‥やっぱりこっちも手出してよろしいでしょうかッ?」
呆れるマッジオ。
「うわぁカッコ悪う‥‥」
「うっさーい!このままじゃあ俺の夏が終わらねえんだよォ!」
「いや今は冬だし」
肩をすくめるエバ。
「いいよ、なんでも。最初からそうすればよかったのにさ」
「サ、サンキューありがと奥サン‥‥‥!」
四たび構える両者。
拳を振りかぶるバンハイ。
「ムフフ、そしてその甘さが命取りよォ!死ね!バンハイスマァーシュ!!!」

バンハイの視界一杯にエバの『両足の裏』が広がる。

エバ会心のドロップキック(通称:エキゾーストミサイル)が火を噴いた。
鍛え抜かれた185cmの体躯が放つ豪砲。
バンハイの巨体がリング外へ吹っ飛ぶ。
窓ガラスを割ってジムの外まで吹っ飛び、外においてあった
誰かさんの青い軽自動車の上に落下した。
ボンネットがひしゃげる。
マッジオの顔もひしゃげる。
「あぁあ俺のブルーパンサー号ッッツ!!?」
「わーいママブラボー!」
粉雪舞う、ある冬の日の出来事であった。



後日。
バンハイは試合を見事1ラウンドKO勝利で飾った。
その様子は地元ラバンダの新聞のスポーツ欄にも載った。

『ラバンダの雄・鮮烈な勝利!
 "俺には越えたい壁がある。俺には目指す、強敵(とも)がいるんだ‥‥!"
  強敵とは何者か!? ヒーロー・バンハイの志は高い!』


 


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