エバは行く
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| 「死ねやァーッ!」 大きくふりかぶって放たれるバンハイのパンチ。 ラムはその手首をつかみ取った。 「!?」 「ハイヤーッ!」 「ふべ!」 バンハイの頬が、足の甲で払われる。 「そら!そら!そら!そら!そら!」 足ビンタの応酬。 「こいつは、オマケだ!」 離すついでに足刀蹴り。あとずさりし、尻餅をつくバンハイ。 ラムがすかさずかけより、その体を踏み台にして飛び越える。 「!?」 飛び越えざまにバンハイの後頭部に踵蹴りを見舞った。 「〜〜〜!?」 バンハイの視界を星が舞った。 「のんきに休んでんじゃ‥‥‥ねぇよッ!」 尻餅をついていたバンハイの後頭部にミドルキックが炸裂した。 前へつんのめるバンハイ。 「ハハハーッ!」 両手を挙げアピールするラム。 「ヒューッ最高だぜラムーッ!」 「そのまま片付けちまえーッ!」 観客席の取り巻きの男たちが歓声奇声をあげて応えた。 「バンハイさぁーん!?」 チュンの声に、バンハイはよろけつつも立とうとした。 「だ、大丈夫‥‥よン‥‥‥パンチさえ‥‥‥当たれば‥‥‥」 「当たれば、だと?てめぇに見せ場なんざ、ねぇんだよ」 ラムが顎を蹴り上げた。そしてジャンプ。空中で一回転した。 「こいつで終わりだァ!"コーラル・トップ"(喧嘩独楽)!!」 バンハイの顔面に回転踵落とし蹴りが炸裂した。 立て続けに頭に攻撃をくらい、意識朦朧のバンハイ。キャンバスへと崩れ落ちた。 その頭をラムが踏みにじる。 「誰をボコのめすだって?自分がそうなってちゃあ世話ないわなァ?」 「ダウン!ワーン!ツー!スリー!‥‥‥」 ダウンカウントを取り始めるシルバー山田。 「‥‥‥シーックス!セブーン!エーイト!‥‥‥」 ラムがバンハイの首をつかみ、引きずり起こした。 「な、何の‥‥つもりだ‥‥‥!?」 「これで「ダウン」でなくなったなァ?"ラットバイツ"ラムの見せ場はここからだぜ?」 その頭を抱え込み首相撲に取って、ボディに連続膝蹴りを見舞う。 「そら!そら!そら!そら!"参りました"って言ってみろ!?」 「ぐっ!てっ!てめぇっ‥‥‥!」 さんざ蹴った後バンハイの体をコーナーへと蹴り飛ばす。 コーナーポストに強く打ち付けられたバンハイ。かろうじてポストにしがみつく。 観客席からマッジオが叫んだ。 「レフェリー!もう勝負はついてるだろ!試合をストップしろぉ!」 「‥‥‥。」 シルバー山田は沈黙を保ったままだった。 (チャンスは1回だけだ‥‥‥!) バンハイは静かに呼吸を整えた。 後ろを見ると、ラムが追撃を仕掛けんとダッシュしてくるところだった。 殴りかかってきた刹那、バンハイは右拳を握り締めた。 バンハイは最後の一撃に賭けた。 「バンハイ・スマァァーッシュ!!!」 全身全霊を込めて放たれたそれは、虚しく空を切った。 「!?」 ジャンプでかわしていたラム。 「惜しかったなァ?コーラル‥‥‥」 必殺の回転蹴りの体勢に入る。 「トォーップ!!!」 脳天に踵が落とされる。決定的な一撃。 ("現実"って、キビシイよなぁ‥‥‥) 膝から腰、腰から胸の力が抜け、その場で一気に崩れ落ちる。 バンハイは完全に白目を向いていた。 「根性だけじゃあどうにもなんねぇよ。もっちっと仕置きしとくかァ?」 「そこまで!レフェリーストップだ!」 やっとシルバー山田が試合を止めた。 「ウィナー、"ラットバイツ"ラム!」 「なんだ、もう終わりかよ‥‥‥もっと楽しみたかったんだがなァ。 それにしても、シルバー・ヤマダさんだったっけ?」 「‥‥‥なんだ?」 「噂には聞いてたけど、思ったほど厳しくはないみたいだねェ。 最初の不意打ちも見逃してくれたし。結構好き勝手させてもらえたし、 理解あるレフェリーで、よかったよ」 「‥‥‥ワシはリングに上がって戦う者の意思を何よりも尊重する。 正々堂々と戦う意思ある限り、戦わせる。それだけだ。しかしラム‥‥‥」 「なにかな?」 「最初の不意打ち、あれはよくない。あんな事をせずともお前は勝てたはずだ」 「ハハハそのとおり、よくわかってるじゃない? どうせ勝つ試合なんだから手っ取り早く済ませた方がいいでしョ?」 「‥‥‥。」 依然余裕の笑みでリングを降りるラム。 「さ〜て、決勝の相手は確かキレイなオネェさんだったな。 今まで我慢してきたぶん、最後の試合で楽しむとするか‥‥‥」 その顔は冷酷な悪意に満ちていた。 医務室のベッドに横になっているバンハイ。頭が包帯でグルグル巻きにされている。 「ぅ‥‥ぅ‥‥‥‥」 喋ることもままならないものの、悔し涙にむせび泣いていた。 「すまねぇっすバンハイさん、俺にもっと的確なアドバイスができていたら‥‥ 俺‥‥‥悔しいっす!」 チュンも横でうなだれていた。。 見舞いに来たエバたちも、その痛々しい様子に言葉を失くしていた。 イリアがバンハイのそばに寄った。 「バンハイおじさん‥‥その‥‥‥‥‥‥惜しかったね‥‥‥」 痛い。 あからさまな慰めがかえってバンハイには痛かった。悔し涙が5割り増しになった。 「完膚なきまでのボロ負けだったっすよォ!チクショォォ!」 チュンもあまりの痛さに吼えた。 ため息をつくエバ。 「‥‥‥なんか注文ないかい?」 「え?」 虚をつかれるチュン。 「だからさ、試合の。なんかリクエストない?ラムとか言ったっけ? あいつ、お望み通りに料理してやるよ」 「いや、急にそんな事言われても‥‥‥」 「ぅ‥‥ぁ‥‥‥」 「バンハイさん!?」 バンハイがかすれる様な声で言った。 「‥‥‥ギッタギタ、の‥‥‥ボッコボコ‥‥‥‥‥‥フィニッシュは‥‥‥ エキゾーストミサイル‥‥‥!」 「了解」 エバは医務室から出て行った。 |
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