エバは行く
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| 「エバ、棄権するんだ」 格闘大会もいよいよ決勝。 エバ・ガーフィールドと"ラットバイツ"ラム。圧倒的強さで勝ち進んできた両者の 対決に会場はおおいに盛り上がっていた。 リング上ではすでにラムが青いサングラスとカンフーズボンのいでたちで立っている。 これからリングに上がろうとしていたエバ。その表情は何も背負ったふうもない。 そんな彼女にアルバンスは心配して言った。 「悪い事は言わない。棄権しろ。 相手は現役の格闘のプロだ。素人の俺にだってわかる。 アジア中の道場を荒らし回ってたような奴だぞ!? ‥‥‥あんな奴と戦ったらどうなるか‥‥‥!」 「あんた意外と心配性だったんだね」 「あのバンハイも子供扱いした奴だぞ!? 確かに君もバンハイに勝ってはいるがそれは2年くらい昔の話だ!」 「ああ、大丈夫だって、なんとかなるよ」 あくまで楽観的なエバにアルバンスは苛立った。 「エバ!俺は真面目に言ってるんだ! 君は子供の頃から負け知らずだったんだろうが世の中上には上がいるんだ! ラムはとんでもなく強い! エバ、どうしてもリングに上がるというなら‥‥‥」 「なにさ?」 「この俺を倒してから行け!」 エバの前にアルバンスが両腕を広げ、立ちはだかった。 その腕を取り、後ろ手に捻りあげるエバ。 「痛デデデデデギブギブギブギブ!マジでマジで!シャレならんて!! ねじきれるッ!ねじきれるッ!」 あっさりタップしたアルバンス。 「ねぇアル」 「ハァ、ハァ‥‥‥な、なんだ?」 「今、あたしの事"負け知らず"って言ったけど‥‥‥マードック隊長の事、覚えてる?」 「ああ‥‥‥確か背の高い、エバがいた傭兵部隊の隊長で‥‥‥」 「あの人と何度も実戦訓練した事あるけどね、要するになんでもアリのケンカ。 ‥‥‥一度も勝った事なかったのよ、あたし」 「え?」 「この額の傷もあの人につけられたの。うぬぼれてるとかそんなんじゃなくて 本当に勝てると思うからあいつと戦うのよ。心配しなくていいよ」 「お、おい!」 エバは颯爽とリングへと上がった。 リング上でにらみ合うエバとラム。 相変わらず余裕の笑みを浮かべているラムに対し、エバは無表情。 ラムが185cmのエバを見上げる。 「へえ、デカいオネエさんだねぇ」 「‥‥‥。」 「その顔がこれからどう歪んでいくのか楽しみだなァ? す〜ぐ女の子らしい悲鳴をあげさせてやるぜ‥‥‥」 趣味の悪い笑みを浮かべて言った。 「ラムだっけ?サングラス、したままでいいのかい?」 「ハッ、準決勝のハゲダルマも同じ事言ってたぜ。いいんだよ。したままで。 "雲泥の差"ってやつを教えてやるよ、オネエさんよォ?」 両者の間に立つシルバー山田。 「KOかギブアップ、またはダウンして10カウントで負けが確定する。 眼球と金的への攻撃は認めない。ではレディー‥‥‥ファイッ!」 ラムの顔面に拳がめり込む。サングラスが砕け散った。 |
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