父の肖像


プロトが月に見張られている理由は二つある。
一つ、裏切り、または軽率な言動がないかどうか。
二つ・・・・・本当はこちらがメインなのだが、
暦を裏切った技術班連中が、なんでかしらんが九月をライバル視して、
九月と三月で共同開発したプロトを襲う算段をしている。
という情報があったのだ。
悪い芽は早めに摘み取るのが暦の原則である。
あわよくば、でてきた奴らをかたずけて、親玉まで芋づる式に、
やってしまおう!というのが二つ目の目的である。

「んじゃ、オレはそろそろ行くから。」
「そうか、まあ、今度は連絡を入れてからこい。
 家はまだあるからな。母さんの野菜畑も残ってる。
 カレーでも作ってやろう。」
「楽しみにしとく、それじゃ・・・・」
爆発音が数回。
続いて窓ガラスに飛んでくる火の粉と砂利。
とどめは猛烈な衝撃波で吹き飛ぶ壁と窓ガラス。
「・・・・な、な、なんだ今のはあ!ウィリアム!テロだ!」
「いんや、親父。テロって言うレベルじゃあないぜ。」
「なに?」
プロト・・・もといジョーンが吹っ飛んだ壁の穴を指差した。
そこから、異形の機械が見えていた。
ずんぐりむっくりで、背中には砲塔をしょっている。
リアルロボット指向だろうがはっきりいって、悪趣味な歩行機械。
「ロ・・・・ロボット!」
こういうものを見慣れていないバーナードが、驚嘆の声を上げた。

「いやっはああ!アネサン、第一打成功ですぜ。」
「いいねえ、景気いいよ。次弾装填、仰角三十度+
 いつでもぶっ放せるようにしときな。」
「けど、アネサン。奴さんの居場所が分かりませんぜ。」
「っは!簡単じゃないかい、この基地丸ごとぶっつぶしゃいいんだよ!」
不気味な駆動音を立てて、
ウォークタンクはのしのしとアスファルトを粉砕しつつ歩いている。
「このオル・ガザメル型ウォークタンクがあれば、一個師団も敵じゃ、
 ないんだからね、強気でいきな!」


サイレンの音が基地内に響き渡った。
「敵襲!敵襲!」
「見たこともない歩行機械だ!注意しろ!」
機銃掃射や迫撃砲が唸るが、歩行兵器は傷一つない。
縦列を作って特殊部隊で包囲しても、軽々と突破された。
なんせ、機動力が違いすぎる。
戦車のキャタピラよりも多脚歩行のほうが旋回能力や移動スピードが、
圧倒的に上なのだ。
相手になるはずがない。
「ど・・どうなってやがるんだ畜生!」
「一時後退!こうたいー!」
きっつい。
そして、ジョーンの父、バーナードのおかれている立場も、
きっつい。
「くそう!接近する事もままならんか・・・・!」
プロトのおかれている立場もきっつい。
「・・・・かえるに帰れん。」
それぞれがきっつい状態でいた。
決着は果たしてつくのだろうか


 


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